第9話 自称無能

初期化……ねぇ……。

「あっ、でっでも!使い方を忘れただけですので!思い出せる……かもです……。」

イオの機械とは思えぬ声がどんどん小さく、か細くなっていく。


「ごめん、無理いって。初期化の原因俺だしな……。」

「私が無能なだけです!謝らないでください!!」

さっきの自信満々な感じとは打って変わり、しょげているイオ。

コミュ症の俺にできたのは、不器用な言葉を投げかけることだけだった。


「魔法が使えるから有能とか、使えないから無能とか、俺はここの人じゃないし、よくわからないけど……。協力してくれるってだけで、かなりありがたいんだ。」

「え……?」

「それに、ほら、君と一緒に行動する理由ができたじゃん。俺は神を倒すための力をつけるためにここを旅しなきゃいけないと思ってる。もちろん、俺1人じゃ無理だから、君についてきてほしいんだ。そしたら、君も色々思い出すんじゃないかな……?」


これが俺の思い。

嘘偽りなし純度100%の言葉だよ。


そう言うと目の前の少女は青い目を涙でいっぱいにして答えた。

「喜んで……っ!」


じりじりと照りつける異世界の太陽が、

嬉しそうに泣く少女の涙を照らしていた。


「それではイオちゃん。俺達はまずなにをすべきだろうか?」

「衣、食、住の確保と思われます!」

「草原じゃ無理だな、街でも探そう。腹減ったろ?」


そういえば俺、こっちにきてからなにも口にしていない。


「お気遣い感謝です。しかし……私機械なので、食べなくても大丈夫です。賢司郎さんこそ、なんかげっそりしてますね?」

「ガリヒョロなのは元から。それにイオちゃんだって……動力源とか必要でしょ?ほら、無理矢理女の子連れ出すんだから、絶対ひもじい思いさせたくないし……。」


「うぅぅ、お優しい……!前のご主人様とは大違い……!」

「ちょ、神と比べんなって〜〜!」


ふざけてイオちゃんを膝でつついた。

しかし、さっきまで笑っていたイオに反応がない。


「えっ、急にエンプティー⁈大丈夫⁈」


真顔で固まるイオちゃん。何かボソボソと呟いているようだ。

「前の……ご主人?」

「え、前のご主人がどうしたんだよ?パワハラでもされてたのか⁈」


しばらくすると、イオちゃんはゆっくりこっちを振り返って言った。

「少し……思い出しました。」

















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