第7話 殺意と任務と異常事態と

暗闇の中、もがき続ける真桜。

考えるだけで頭痛が襲う。

依然真桜は怯えた表情でたたずんでいたが、徐々に体が透けていき、最後には消えてしまった。


「助けて欲しいの。」

この声が頭の中で繰り返されて離れない。


「どうなってる‥‥?どうなってるんだ⁈」


神が、一足先に死んで異世界にやってきた真桜を捕まえて監禁した。

それしか考えられない。

俺を煽るためだけに‥あいつをこんな目に。


そう思った途端、頭が急に冷静になっていくのがわかった。


強くなって、神殺して、取り戻すしかない。

ご丁寧に、この殺意を受けるべき人間がこちらに近づいてきた。


さっきまで怖がっていた、刺客の少女。


焦ったように周りをキョロキョロ見回している。

栗色のロングヘアーがその度に左右に大きく揺れた。


この茂みから不意打ちして、胸を一突き。

自分を殺せたんだ。わけのないことだ。


ガタガタと震える手に言い聞かせた。


なにも知らない少女がこちらにどんどん近づいてくる。

もちろんなんの罪もないのだろう。

仕方ない。

俺にも真桜にも罪はないんだもの。

神にしかないんだもの。


「お、おらぁーーー!!!」

「わわっ⁈なんですか急に⁈⁈」


俺の渾身の一撃は、少女になんの苦もなくかわされてしまった。


ま、まだだ!ここで死んだら意味がない!

かわされてもなお、俺はナイフを振り回して続けた。

「わっ!わっ!危ないじゃないですか!!」

少女はあわあわとしながらもしっかりと避ける。


「ちょ、当たったら危ないでしょうご主人様ぁー!」

「え。」


両者動きがピタッと止まる。

「お、お前さん、今ご主人様って‥‥?」

あまりの衝撃に口籠もってしまった。


「ん〜とですね。さっきのやつで回路がショートしてしまいまして‥設定が初期化されてですね‥」

「待て待て待て待て。ショートだの設定だの‥‥君何者なの?」


少女はハッとしたようにこちらに向き直ると、

ビシッと気をつけ、小さな手で敬礼して見せた。


「はいっ!神聖ヴァイヤ公国所属、絡繰少女神のお人形部隊、E_502_Oと申しますっ!」

「んで、そのE_‥‥なんとかちゃんの主人がどうして俺になるわけぇ⁈⁈」


真桜以外の女子とまともに喋ったことないんだが。

「ですから、設定の初期化によって最後に記憶に残っている貴方様がご主人と言うことに‥‥」

「ようわからんが神への忠誠心どこにいっちゃったの〜⁈」




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