第34話 京都 1
「よっしゃぁぁぁ!!関西到着ぅ!」
「凄く遠かったな。うん。やべぇ、とりあえず早く便所行きてぇ」
そう呟くと、3人からは勝手に行けという目が向けられた。なら遠慮なく行かせてもらうとしようか。こちとら機関車内でずっと我慢してたんだよ。長時間別の駅に止まる時もあったのでそのタイミングで行けばよかったのだが、寝ていたために便所を逃した。
「へぇ、ここが関西なんだー。こちら側には全然詳しくないんだよね。案内は任せた!」
「残念ながら俺は関西へ来たことは無い。地図を持って街を1個1個回っていこうか」
「おそらく関西も中部と同じように縮小されているわよ。それでも関西にある県を全部巡れるとは思っていないけど」
「ああ、元より全部の県を回れるなんて思っちゃいないさ。あくまでこれは戦いだ。戦地を巡っていくのも大変だな………。それでも関西へ行く意味はあると思う」
「そうね。関西には日本三大都市圏の大阪もあるし、わりとプレイヤーも多いと思う。リアルの関西を再現しているかは知らないわ」
関東に行かなかったのはプレイヤーの人数がまだ多そうで危険だと判断したからだが、関西だって人口的には十分だと思う。どちらにせよ、中部という真ん中に居座っていてもゲームは進まないので選択は必要だっただろう。
俺達は駅を出て辺りを見渡す。
「おお、すげぇ………。ネットとかの画像でしか見たことがなかったがかなり再現されてるぜ?」
近くに建てられた看板を見てみると、今俺達がいる場所がリアルでは京都にあたる場所にいるということが分かった。確かにそうだ。
京都ならではの『和』が多く、俺達がいる場所からは寺や店が道端にあるのが見え、どれも古臭さが立ち上っている。人もそこそこ出歩いている。
看板に載っていた地図も確認する。今俺達がいるのは京都の隅辺り。清水寺などの立派な建築物があるのは中心部。出来れば県の中心部へ行き、この世界の京都自体の規模や性質を知りたい。
「俺達はひとまず京都の中心部を目指す方がいいだろうな。プレイヤーこそ多くいるだろうが、情報なども入ってくるだろう」
慎士が俺が考えていたこととほぼ同じことを言う。それに頷く友結と優梨。
「まぁ、いいんじゃねェか?例えどんなプレイヤーが来たとしてもぶっ倒してやるよ」
おおお、と小さな歓声が上がった。ありがとう。ありがとう、と頭の中で手を振る俺の姿が想像された。どこのスターだよ……。
「ふふふ、頼もしいボディーガードね」
「どちらかと言えば用心棒なんだろうな」
ボディーガードってのはもっとイケメンのいい感じの青年がやるもんだ。俺みたいなクソガキには務まらんよ。これには発言していた優梨も笑みを浮かべた。やはり俺は用心棒のような見た目らしい。………こんな感じのやり取りって前にもしなかったか?まあいいか。そんな俺も笑みを返す。
「とりあえず中心部に向かうか……。少し疲れるだろうけどなぁ」
足を重そうにして歩き出す慎士。はぁ、情けないなぁ。
「んなもん気合いでなんとかなるだろうが!嘆いている暇があったら進むんだよ!」
慎士の背中を叩き、喝を入れてやった。あ、もちろん本気ではないからな。本気で叩いたら多分ぶっ倒れる。
「へいへい」
ダラダラ歩いていた慎士を早まらせ、俺達も続く(2列にした)。現在地から中心部までは徒歩で大体30分くらいか?適当に会話でもして時間を潰そうと思う俺君。一応、近くに人力車とかいう過去の遺産があるが、有料なのでやめておいた。金は使わなくてもよいところでは消費を避けたい。少し興味はあるんだがな……。今度来た時は乗ってみたいな。まぁ、そんなものが今でもあるってのが京都ってところだな。珍しいものを見るだけでもなかなか面白い。
「さて、京都には一体何が待ち構えているんだろうな?」
前に思ったように、新たな出会いってのを楽しみにしてるぜ。俺は3人が気付かない程度に笑みが浮かんでいた。
ここから中心部に着くまでは何もなかったから1度話を切らせてもらうぜ。じゃあな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます