第24話 慎士君は拝みたい

「龍。お疲れ様」


「ああ」


バイトが終わり、道中めんどくさいことに巻き込まれはしたがなんとか慎士と合流することができた。このことは慎士に話しておくべきだろう。俺が声をかけようとした時、気づいてしまった。彼の制服から血が滲んでいることを。


「おい!その血、大丈夫かそれ。何かあったのか!?」


「それはお互い様だろう。龍の方もその血はなんなんだ」


それから今日起きた出来事をお互いに話した。バイトの終わりに襲われたこと。襲撃者の異能力。話しが終わると慎士が難しそうな顔をする。


「お互い姿が見えないってのが難点だな…。龍の方にいたっては完全な透明人間と言えるだろう。そのせいで相手がどんなやつなのか分からないんだ。本当にめんどくさいやつを相手にしてしまったよ」


「さて、これからは見えない恐怖とも戦っていかなきゃなんねぇんだよなぁ。できればそんなものは早く消してやりたい」


「いや、もしかしたら意外と早くそれはなくなるかもしれないぞ」


「どういうことだよ」


理解できない俺が聞く。


「襲撃者達はバイト後に襲ってきたんだ。俺達がバイトを終わる時間を知ったうえで待ち伏せという可能性は捨てられない。ただ、偶然見つけて襲ってきたというのもありえるけどな。どちらにせよ近いうちにまた来るだろうね。彼らからすればあまりバラされたくない異能力だろうし」


襲撃者の異能力は初見殺しだと思っている。姿が見えない異能力。突然降ってくる雨とツララ。だが知っていれば対処は割となんとかなる気はする。


「一応、そいつらの対処方法ぐらいは考えておくよ」


「頼んだぜ。俺はそういうのは苦手だ」


1度襲撃者の話題はなくす。そして慎士が新たな話題を口に出すのだった。


「女子2人のバイト先を見に行かない?」


真面目な話から一気に変わった瞬間であった。襲われたばかりなのにこんなメンタルを持つとはなかなかの男だな。




〖〗

「ただいまより女子を魔の手から守ろうの作成を開始する。さっさと準備せよ」


何を言っているんだコイツは。俺が軽く慎士の目を見つめてみる。うん。マジの目だった。


「おい、何なんだコイツはという顔をしているな。大丈夫だ。これは正当な任務である」


「いや、それただお前が見たいだけじゃねぇのかよ」


「おっと、それは禁句である。この任務は良からぬやからから彼女らを守るために行うのだ。決してやましい事など考えてはおらん」


慎士の目がブレまくっている。図星じゃねぇか。まあ、そんなことを言っても仕方ないわけなのでとりあえずどんなものかは聞いておくことにする。


「は~ん。んで、その作戦の概要を教えてもらおうか」


「ただ、遠くから双眼鏡でも使って彼女らを見ているだけでいい。変なやつが来たら狙撃してやる(bb弾)。OK?」


「お、OK」


慎士の気迫に押され、軽く承諾してしまった。でも彼女らの職場がどんなところかは気になるところである。分かっていることは喫茶店(メイド)であることと店長がフリーダムな人ということだけだ。


「では、行こうか。愛と平和を守るために」


俺は半分流される形で慎士に着いていくことにした。ストーカー被害で訴えられないことを願う。




〖〗

「ス○ーク。現在の状況はどうだ」


「いや、俺隣にいるんだが。それに大佐、俺はスネ○クじゃないし、通信っぽくしてるのなんか悲しいぞ」


「リ○ッドぉぉぉぉぉぉ!!!」


てか、ただお前はそれが言いたかっただけだろ。俺はソ○ッド・スネークでもリキ○ド・スネークでもないからな。


ただいま慎士の作戦(笑)を実行中である。俺達はそれぞれ慎士産の双眼鏡を持ち、喫茶店近くの誰か様の家の屋根に這う感じで監視中である。こんなところ誰かに見られたら学生生活ジ・エンドぜよ。周りにも気をおいておく必要がある。


女子2人は店のメイド服に身を包み、制服で見えなかった領域まで見ることができた。はみ出した肩に少し背徳感的な物を感じる。今はお昼休憩らしく、空いた席で2人とも食事をしていた。……あ?飯出てくるとか最高かよ。でもバイト先の違いだ。そこはしょうがない。


「ふふふ、素晴らしいな。これで多分2日は断食してもいける」


「じゃあ、お前の飯抜きな。俺が食うわ」


「ものの例えだからな。………本当に食わないよな!?」


ここであえて黙ることによって不安を募らせることができる。まあ、食ったりはしないけど楽しいからな。反応みるの。


「素晴らしいのは本当だからな」


俺もそれは感じている。俺が言うのもなんか変だが2人は周りからすれば可愛いという部類に入るだろう。そんな2人が普段は見られないメイド服だ。そこらへんの男ならイチコロよイチコロ。多分ね。そこらへんに薄いのがこの俺、荒井 龍だ。


「特に優梨君がいい味を出しているな。黒髪ロングにそのスイカ(隠語)。決めつけはその黒ニーソックスだろう。あれはヤバい。友結君は少し違うな。悪くはない。ただ、彼女はどちらかというとマネージャーの方が似合う気がする」


慎士が色々と分析を始めた。もういいや。こいつが楽しむことができれば。ちょくちょくメタル○アごっこをしながら2人のバイトが終わるまで待つのだった。みんなもメ○ルギアやろうな!………誰に言ってんだよ俺。


――――――――――――――――――

「何か視線をさっきから感じるわ……」


「なんか怖いね……」


「2人とも~。今日は飯食べたらいいよ終わりで。また明日来てね~」


――――――――――――――――――

〖〗

バイト1日目の夜となった。飯(果実)を食べながら今日のことを4人で話しあう。真っ先に出たことは襲撃者の存在だ。これには2人も驚き、心配してくれた。友結には彼女の異能力[天使の祝福エンジェルギフト]を使用してもらい、傷口を癒してもらう。


どうでもいいことだが今日初めて友結のカード名を教えてもらった。なんかカード名って厨二病っぽい名前多いな。俺の[灼熱の闘志バーニング]もかなり怪しい。何故か[幻想の書]だけはそのままっていうね。マジックブックって名付けてやるよ。これからそう呼ぶことはないだろうが。


「とりあえず気をつけてね?さすがに死んだら治せないと思うから」


「大丈夫だ。死にはせん。警戒は怠らないからさ」


「俺もなんとか死なないようにはするさ。最悪、逃げる手段はいくらでも見つけられる。生還第一で行こう」


「うん。あなた達なら大丈夫よ……」


することがなく果実を食べていた優梨がこちらを見て呟いた。お前、俺達を信じているんだな………。


「絶対死なないでしょ。2人ともしぶとそうだもの。蟻くらいの生命力はありそうね」


おい。それ人間じゃねぇ。俺がどんな高所から落ちようが腕がもげようが死なねぇとかそんな化け物だとでも思ってんのか?残念ながら蟻君ほど俺は強くないぞ。少し感じた感動を返せや。


「そうだな(棒)。とりあえず治療ありがとうな。助かったよ。では、あとはいつも通りでね。おやすみ」


慎士が今日の解散を伝えるのであった。






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