第19話 働く俺達 0

「もう2人は帰ってきているかな?」


「どうだろうな。なんか2人に聞いた話によるとバイト先の店長さんはマイペースだから

なんか色々と適当らしい」


俺達は今帰宅途中だ。明日に備えて早く寝るのだ。


森の中へ入ってしばらく歩くと家が見えてきた。2人の声が聞こえる。そんな中慎士が話しかけてきた。


「なあ、龍よ。お前と優梨君の制服は何でてきているか知っているか?」


「そりゃあお前のノートで…………。ハッ!

慎士それだけはあかん!やめるんや!

止まれ!」


つい大阪弁が出てしまった。別に俺自身は大阪に住んでいたことはないけど。今から慎士がやろうとしていることは大罪になるだろう。


もう駄目だぁ。お終いだぁ(べ○ータ感)。


「ふふふ、俺はこの目で楽園を見届ける!」


慎士がバッグに入っているノートを取り出す。ノートは常に開いているようにするため石をノートの上に乗せている。

そして慎士はノートを

その瞬間、俺の制服は消えて上裸となってしまった。

いや、俺のことはどうでもいい。

優梨の方が危ない。家も消えてしまった。

もう手遅れか………。俺は諦めていた。

だが、


「なんで家が消えたの!?まさか慎士本当に実行したの!?」


友結が騒いでいる。その隣には優梨。


「嘘だ………どうして………」


優梨が地面に膝をついた慎士へと近づく。


「慎士。あなたなら絶対やると思っていたわ。残念だけど帰ってきた時点で最初の制服に着替えたの。………じゃあ、覚悟してね」


「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


それからしばらくは慎士の悲鳴がただ響くだけだった。





〖〗

「すいません。割と反省しました。もう多分しません。とは言い切れません」


こいつ反省の色が全く見られないな。多分でも駄目だ。そして言い切れよ。 慎士はあの後、夜飯よるめし抜きで許された。[幻想の書]を使って時々食べ物を具現化していたが毎回口へ運んでいる途中に顔が青ざめて捨てている。やはりトラウマでしかないだろう。


俺達の食事後に慎士に家を具現化してもらう。もちろん誤字がないか確認済みだ。うん。多分大丈夫と信じたい。


「んじゃあ、今日は解散な。明日からは各自でバイト行くんだぞ」


「はーい」


「分かってるわよ」


それぞれの家へ行く。女子の2人はおそらく川で清めに行っているだろう。ある程度したら自分達も行くことにする。今、俺の部屋には慎士がいる。


ぐう~。


やっぱり腹減ってるのね。


(はぁ、しょうがねぇな)


「おい、これ食えや」


俺が差し出したのは先程の果実。これは俺が食べる気分ではなかったために残しておいた物だ。


「いいのか?これはお前の分だろ?」


「あ?とりあえず腹減ってんなら食っとけ。明日からバイトなの忘れんな。腹減って働けませんは駄目だ」


「すまないね。……ありがとう」


慎士が食べ始める。見事な食いっぷりだ。


「もう食べ終わってしまったよ。……………はぁ、いくら俺の責任とはいえ飯抜きはキツいぜよ……」


「優梨は多分鬼かなんかだろ。本気で怒らせたらなんか死を見てしまう気がする」


「実際に殺されかけた龍の説得力は高いな」


「おうよ。………これからは気をつけろよ」


「ああ、出来るだけ頑張ろう」


「保険かけとくなよ」


その後は女子ペアが川から帰ってくるだろう時間まで2人で適当に遊んでいた。


慎士にヘルメットとピコピコハンマーを具現化してもらい、暇を潰す。


こっちの世界に来てからは反射神経がかなり上がった気がする。お互いに勝負がつかないレベルまで。叩いてかぶってジャンケンポンは意外と反射神経を確かめるいい遊びかもしれない。


「はあ、もういいか?なんか疲れた。そろそろ川行こうぜ?」


「ちょ、待てよ。試合は完璧に終わらせる。なんかモヤモヤするだろ」


「仕方ねぇなぁ。本気でやって終わらせようぜ」


「ああ、いいだろう。構えろ」


この龍の言う本気は自身の持つ力をフルで出すこと。それは異能力も対象になる。


「行くぞ……叩いてかぶってジャンケンポン!」


慎士はパー。俺はグー。慎士とはピコピコハンマーへと手を伸ばす。


ここだ!


([空気砲エアーバレル]!)


俺の手から発射された空気によりピコピコハンマーは慎士の手を通り抜ける。そのまま慎士はピコピコハンマーを取れず、俺が安全にヘルメットを取る。


はずだった。


慎士はあらかじめそこにピコピコハンマーが移動するのが分かっていたように手に取る。


慌ててヘルメットの確保に向かうが時既に遅し。慎士の持ったピコピコハンマーが俺の頭を叩いていた。その後ピコピコハンマーは持ち手が折れたが。


「残念だったな」


「ちくしょう!……俺の負けだ」


「空気を使おうとしていたようだが、俺の異能力を忘れるなよ」


「あっ、お前の本来の異能力を忘れていだぜ。なんか家とか普通に建ってるからもうあのノートが本来の異能力かなとか思っていたぜ」


慎士の解説によると慎士は空気を操ることのできる異能力を持っていて、それもあり空気中の動きに敏感らしい。


そのため、俺が[空気砲]を使う際に空気を扱うことがバレて空気を飛ばす方向が予測されてしまった。


「解説は以上だ。さて、決着もついたし行くか」


「くっ!……悔しいです!!」


「…………………………………………」


「…………………………………………」


「さて、行こうか」


「そうだな(棒)」


俺の渾身のギャグが何も無かったかのようにスルーされていく。頑張ったのに………。


俺達は身体を清めるために川へと向かうのであった。





〖〗

朝だ。そしてバイトが始まる日。

俺は腕時計で時間を確認する。


(6:00か……。飯食って準備したらいい時間に着くな。まずは慎士を起こすか)


俺はちゃんと目的さえ定めていればその時間には起きることが出来るというナイスな体質だ。そのため、大事な日に遅刻したことはほぼ無いと言っていい。


逆に慎士。こいつは目的が無ければいつまでも寝るタイプのやつだ。しっかりと起こさなければならない。こいつもバイト同じだからな。


「おーい、起きろー。今日バイトだぞー」


「はっ!起きねば。さっさと飯にしよう」


さっきまでぐっすりと寝ていたのにバイトの単語が出た瞬間に起きやがった!

さすがクラス委員長。時間を守るためにどんな状況でも起きる。やるじゃねぇか。


「ほら、果実だ」


「あ…………。早く別の物が食べたい……」


「川をよく見たら魚ぐらい泳いでねぇかなぁ。栄養が…………。今日の夜探すか」


「俺も探すよ。取らねば(使命感)。他のプレイヤーに食料不足とかで脱落したやついそうだな」


「有り得るぜ……。俺達は奇跡的に果実がなっている日々が続いているが、他の場所にあるとは限らないよな」


「ラッキー↑ってことなんだろう。ほら、食い終わったら行くぞ」


俺達は少ない食事後に慎士産の制服を着て、共に〔ハッピーポーム〕へ向かうのであった。

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