第16話 面接 男子編

俺達4人は名古屋・Fの入口にいた。これから待ち受ける面接。面接なんてものは高校入試の時にやったきりだ。あの時はそこまで緊張しなかった。なんなら他校のやつとの喧嘩の方が緊張したぐらいだ。そのためスラスラと言葉を出すことが出来た。今回もそれと同じ。ただ相手が学校か社会という違いだ。


「さて、ここで一旦別れる。大体夕方の18時頃にまたここで集合だ。ではご武運を」


「ええ。そちらもね」


「お互い頑張ろうね~」


女子2人は去っていった。2人は結局カフェで働く予定らしい。慎士がカフェのバイト記事しか持ってこなかったのが悪いんだがな。


俺と慎士は女子2人が向かう方向と逆の方へと歩きだす。俺らもバイトをするつもりだ。俺達は力仕事を主にしようと考えていた。歩いて数分後。バイトの面接会場へと着く。俺達が選んだバイトは、


「ここが〔ハッピーホーム〕。バイト予定地だ。さあ、引き締めていこうか」


「おう」


俺は掛け声をあげた。〔ハッピーホーム〕は建築関係の仕事をしていて、主に現場に出て実際に家を建てたりするのだ。


男なら力仕事と思っていたがそれもかなりの物を選んでしまった。仕方ない。給料がそこそこよかったからな。



俺達は中へと入っていった。明るくて所々に木材の匂いがする。さすが建築関係だな。

すれ違った人(AI)にもしっかり挨拶はする。あまり面接とは関係ないにしても雰囲気の良さは醸し出しておくべきだ。

普段の学校ではああん?とかいう舐め腐った返事やおいゴラァとかいう声をかけてしまうが今日だけは注意する。


奥へと進むと面接会場はこちらという看板があった。


そして面接会場の隣りには待合室がある。

呼ばれるまではそこで休むことにする。他にも面接を受けようとしているやつはいた。AIでもバイトするんだなと少し驚いた。

その後待って数分後くらいたったころに


「面接番号9番。外の長椅子で待っていなさい」


慎士だ。慎士は立ち上がったと同時にこちらにウィンクしてくる。まあ、頑張ってくれや。慎士が呼ばれた後にも何人かが呼ばれ、


「面接番号15番。外の長椅子で待っていなさい」


来たかとうとう俺の順番が!待ち時間すげぇ暇で寝そうだった。だが受験と同じで寝ることは禁忌きんき!必死に我慢してなんとか耐えきった。


(さて、行くか。受験の時と同じようにリラックスしていけ!俺!)







〖〗

前の番号のやつが出てきた。次は自分の番だ。


「はい、次」


ドアの奥から聞こえてくる声。呼ばれた。俺は椅子から立ち上がってドアの前へと立つ。


コンッコンッコンッ。


ドアを叩く。ちなみに2回で叩くとトイレを連想させるためやめておいた方がいい。


「失礼します」


入室。部屋の中では見た目50歳くらいのオッサンが椅子に座っている。試験官だろう。いかにも大工とかやってますって顔だ。


「では、そこの椅子に腰かけてくれ」


俺は言葉通りに座る。この空気、久しぶりだ。俺が座ったと同時に試験官のオッサンが口を開いた。


「では、まず名前と年齢を教えてくれ」


「はい、荒井 龍。16歳です」


質問に答えるときは「はい」をつけるのが良いと聞く。しっかりと言おう。質問に答えると、オッサンが紙に何か記入している。


「じゃあ、次に何故うちのバイトを希望したのかね?」


「はい、僕の祖父が建築関係に勤めておりました。話をよく聞かせてもらった事もあり、興味があったので希望させていただきました」


実は祖父が建築関係に勤めていたのは嘘だがな。祖父も生前はバリバリのヤンキーだったらしい。あったことないけどまずまともな仕事をしていたとは両親から聞いていない。


「OK。うちが力仕事をするのは分かっているね?」


「はい。建築関係なのでその辺りは把握しております」


「兄ちゃんは結構いい筋肉持ってるな。うちとしてはありがたい。どうやってそんな風につけたんだ?なんか普通に筋トレしてちゃそんな感じにはならないと思うんだが………。もしかして拳で語りあったとか?」


「はい。拳で語りあったことはあります」


おお…。


とオッサンが驚いている。これは本当のことだからな。だがそれだけではやんちゃやってたってことで少し面接が危うくなるだろう。そこで俺は言葉を付け足す。


「僕は最近まで空手やボクシングなど格闘技はほとんど習っていて、筋肉にはそこそこ自信があります」


これも嘘だ。オッサンの言う通り喧嘩で鍛えた身体だ。そのおかげでかなり筋力が付き、腕相撲なら大抵のやつは瞬殺出来る。褒められることじゃないが。


「ん?もう辞めちまったのか。じゃあ、次の質問だ。兄ちゃんの持っているその力。格闘技をやめた今、何に使う?」


力とは異能力の方ではなくこの筋肉の方だろう。俺は正直に言った。これには嘘をつきたくない。己の本心だ。


「誰かを守り、笑顔にする…ですかね。少し変かもしれませんが」


これが今の俺の出来ること。誰かを困らせた分誰かを助ける。今でも迷惑はかけているがな。


「ハッハッハ!格好いいじゃねぇか!俺は好きだぜ?そういうの。頑張ってくれ。きっと出来るさ」


「はい。頑張ります」


オッサンいいやつだな……。本当に頑張っていこうと思う。


その後は普通の質問だった。噛むこともなく問題は特には無かったはずだ。


「よし、これで面接は終わりだ。明日の朝にこの会場の入口に合否結果出すからな。じゃあ、気をつけて帰ってくれ」


「ありがとうございました。…………………失礼しました」


最後まで礼儀正しくだ。会場を出るまでが面接ってな。会場を出ると慎士が待っていた。


「おつかれ。どうだった?」


「ああ、多分問題ねぇ。そっちは?」


「ふふっ、僕を誰だと思っているんだ。これでもクラス委員長だ。喋れなくてどうする」


「大丈夫そうだな。………さて、いい時間だ。そろそろ向こう側も終わってるだろうし行くか」


「そうだな。はあ、せっかく山場を超えたなら美味い物でも食べたかったなぁ」


「それはバイト出来るようになってからだ」


俺達は女子の待つ名古屋・Fの入口へと向かうのであった。


着くともう2人はいた。手を振っている。こちらも振り返してやった。ああ、明日の結果発表が楽しみだぜ。















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