貧乏脱却編

第12話 バイトをしよう

慎士が1つ提案を投げてきた。


「バイトしない?」


あまりにもまともすぎる意見に俺達は言葉を失った。正確には優梨以外。


「おい、お前ら。俺なんか変なこと言ったか?金が無いんだぞ!でなきゃ永遠に欠陥住宅で住み、食事は常に腹をくくり、苦しみ野垂れ死ぬだけだぞ!」


俺達が呆然としているなか、途中からのメンバーである優梨はことの重大さに気づいていない。


「え?欠陥住宅といっても住めてるし、食事もちゃんと出来てるじゃない。わたしはこの世界に来てまだ何も食べてないわよ?」


普通の人ならそう思うだろう。だが、


「いや、欠陥住宅のレベルじゃない。建てて1日で壊れる。食事も死を近くに感じるほどの味だ。正直食べない方がましなくらい。最悪、優梨も味わうかもな」


優梨の顔が少し青ざめた。少しは分かったか?俺達が充実しているというのが錯覚だということを。


「…え、遠慮したいわね……」


「優梨、分かった?これがわたし達なの。大変なチームに入ったね……」


「でもあなた達といるの楽しそうだしいいわよ」


良かった。少しは楽しむことを思い出したようだ。この雰囲気の影響かな?俺が関心していると、慎士が再び話す。


「今の現状的にバイトをしてコツコツ金貯めてまともな生活出来るようにしたほうが良いと思うんだ」


「まあ、その意見には賛成できる。んでやるとしてどこで働くんだ?俺、接客業とかは無理だぜ?」


「ちょっと顔がね………」


馬鹿にされた。しかしそれは真実!否定はできぬ。


「とりあえずここに1週間限定の求人募集がある。適当に選んでくれ。やらないは認めん。さあ、金を稼げぇ!」


「仕方ねぇなぁ。………何がある?」


「建築、伐採、カフェ、カフェ、カフェ、カフェ、………………」


「後半ほとんど喫茶店関係じゃない。ふざけてるの?」


「………はっ!慎士ぃ、俺は気づいたぜ…」


なんてやつだ、こいつ!あきらかに狙ってやがった!そう、慎士の目的は金だけじゃない。こいつが優梨が来た時のテンションといい、カフェ…。こいつの狙いは!


「龍は気づいたか…。俺の狙いは君たち女子組さ!バイトをやろうか考えた時から決めていた……。女子のメイド服を拝む。これこそ男のサガってやつよ」


慎士が両手を上に掲げ、満面の笑みを浮かべている。


「慎士がこんなやつだったなんて!」


「はあ。いや、あなた…そんな暇ないわよ」


「へ?」


慎士がキョトンとする。そして無慈悲に伝えられる優梨の言葉。


「あなたも働くのよ?やらないは認めん!って自分で言ってたじゃない。あなた1人で逃げようと思わないでよ?」


慎士の顔が絶望に染まった。こいつ、こうなることを考えてなかったのか?普通に考えてお前も働くだろうが……。だがその10秒後くらいに


――――――――ボキッ!


「ほぎゃああああああああああ!!!」


「馬鹿野郎!何やってんだ!おい、慎士ぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」


慎士が自分で自分の腕をへし折った。嘘だろ…さすがにこれはサイコパスじゃすまねぇぞ……。俺が驚愕していると慎士が何か言っていた。


「あー、腕が折れちまった!これじゃバイトは無理そうだ!お前達で頑張ってくれ。俺は観戦に回るからな(棒)」


「「「ふざけんな!!!!!!!」」」


俺達3人が慎士に向けて怒声をあびせるのは同時だった。










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