第11話 風は止んだ

「まあ、よろしく頼むぜ?」


俺は少女に握手の形で手を差し出す。


「ええ、こちらこそ。………で、あなたの名前をまだ知らないのだけど…」


そう言えば名乗っていなかったな。名前を知らない仲間とかあってはならないと思う。


「俺は荒井 龍。吉野ヶ岡高校の1年だ。そっちも言ってくれよな」


「ええ。わたしは風祭かざまつり 優梨ゆり池上根いけがみね高校1年よ。吉野ヶ岡高校は確か中部地方の愛知県の高校ね。池上根高校も中部地方の石川県にあるの。石川県に引っ越すまでは愛知県に住んでいて、第1志望が吉野ヶ岡だったの」


「ふん。なかなかの偶然だな。これもまた縁ってやつか。…てかタメかよ!1個上ぐらいだと思っていたんだが」


だってその双丘の大きさが同年の友結と全然違うもん。例えるならただのカップアイスと八ー○ンダッツくらいの差。いや、高校生はこれが普通か?ずっと女性と関わっていなかった俺には分からない。


「ならあなたは同年と思われる相手に対してタメ口や暴行をしていたのね…」


「うるっせえなぁ。仕方ねぇだろ?先に殺りに来たのはそっち。正当防衛だ」


「それはごめん。それで、荒井…?龍…?なんて呼べばいいの?」


そうだなぁ。慎士達には名前で呼ばれているし、


「龍で呼び捨てにしてくれ」


その方が馴染みやすい。彼女は分かった、と頷く。次はこっちだな。


「んじゃ、俺はお前をなんて呼べばいい?」


彼女はすぐに返答をした。


「なら名前でよろしく。正直に言うと、苗字は好きじゃないの」


おそらく、苗字で呼ばれることが嫌いではなく[風]の文字が入っているからだろう。彼女にとっての風は両親を殺した物だからだ。当然、風を好きになるなんて出来ないだろう。だがそれを龍は知らない。


「分かった。じゃあ、優梨。今からやることがある。俺の仲間との合流だ。顔合わせもしたいからな」


ふーん、と以外そうに優梨が俺を見てくる。んだよ。


「仲間がいるとはね…。あなた、周りから浮いてそうな雰囲気なのだけれど」


酷い!なんと辛辣な言葉!俺の心のガラスが少し割れた。だが持ち前の心の接着剤でガラスをくっつける。


「失礼なやつだな。まあ、浮いているのは確かだがそれでも俺を支えてくれるやつがいるんだよ。そいつらのおかげで今がある」


「いい人達ね。大切にしなさいよ」


ふん。言われなくても分かってらぁ。


「よし、行くか」


俺達は森を出て慎士と友結が待つ名古屋城へと向かうのであった。








〖〗

名古屋城の入口へと到着。当然慎士達はもういた。近づいていくと、2人がこちらへと向かってくる。


「どこにいっていたんだ?そんなボロボロな姿で来て。最初はトイレにでも行ったのかと思ったけど帰って来ないし。少し心配しただろ!」


少しかよ。そこは凄くにしてくれよ。大変だったんだからな………。


「すまん、ちょっとな。まあ、こうして生きてるから問題ねぇ」


慎士は安心したような顔をして脱力する。だが友結はまだ気にしていることがあるらしい。予想はつくが。


「誰?その子。プレイヤー、だよね?どうして一緒にいるの?」


やはりそうだろう。行方不明になった挙句、戻って来たと思えば知らない女の子を連れている。気にならないわけがないだろう。


「あ?ああ、こいつはプレイヤーだ。先程まで命を賭けて戦ってた仲だ。単刀直入に言うか。こいつを仲間にしてやりたい」


「なんでなの?お互い命を落とすかもしれない状況だったのにどうして?」


「あーとだな。単純に長く残りたいから。んでそれは俺達も同じこと。残ったら最後に殺りあうってことになってる。それまでは一緒にいる。仲間にするなら頼もしいと思うぜ?」


実力でいったら俺とほぼ同等。今後も戦いになった時にかなりの戦力となる。友結は、


「う~ん。まあ、いいと思うよ。あの龍が自ら頼んで来たんだもん。受け入れるよ。慎士もいい?」


あの龍とはなんだよ。俺だって人に頼むことはある。友結はOK。次に慎士。


「もちろん歓迎さ!最後になるまでは仲良く楽しくやろうじゃないか!ハッハッハ」


慎士もOK。何故か異様にテンションが高い。また後で理由を聞いてみるとしよう。

2人が了承したので俺は優梨に話す。


「問題ないみたいだ。んじゃ自己紹介でもしてくれや」


優梨が簡単な自己紹介をする。


「池上根高校1年の風祭 優梨よ。呼び捨てでいいわ。今後よろしくね」


「わたしは吉野ヶ岡高校1年の稲見 友結。呼び捨てでいいよ。よろしくね、優梨」


「同じく1年の竹村 慎士だ。俺も呼び捨てで構わない。よろしくな、優梨君」


顔合わせも出来たしそろそろ本来の話をしようか。何を話すのかは知らないが、慎士を見る。すると分かったように


「仲間が増えて嬉しいのは分かるがそろそろ話をしよう」


みんなで慎士の方を見る。


「計画によりここまでにこの街へ来たプレイヤーはあらかた掃除出来ただろう。余裕が出来きた。それで次のことなんだが……」


「なんだ?言えよ」


少し待ってから答えがくる。


「バイトしない?」


金を持たない俺達は正々堂々働くことを提案されたのだった。




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