第5話 街へ入る

「ふぅ。ようやく見えてきた。あれが目指していた街だな?」


「そうだ。方向もあっているしあれだろう」


「もう漕ぐの疲れたぁー」


俺達3人は長い道のりをこえ、ようやく目的地の街へと辿り着いたのであった。おめでとう!


自転車を漕ぐのは小学生以来で、自分の足で動かすというのはやはり大変だ。改めてバイクや車のありがたさを知った。


ちなみに、自転車に乗っている最中にペダルが取れるという悲劇が起きた。この異能力は実は欠陥が多いのでは?……さて、入るか。


「おお!ここが俺達の目指していた街!名前はあるのか?………看板があった!ん~と、名古屋・F……。日本の県庁所在地じゃないか!Fはなんだ?よく見るとファンタジーってある…」


「この世界がファンタジーな感じだからとりあえずF付けといたって感じか。なんかよく見たら街の奥に城が見えないか?」


「あれは……名古屋城だね。しかもファンタジー感のあるやつ……普通の名古屋城と構造は同じに見えるけど」


おい!このゲームの開発者!何故日本をモチーフにした!ファンタジーならせめて外国だろ!日本を使うなら「和」を意識しろ!


そんなことを嘆いても仕方なく、とりあえず街の様子の確認のために市役所へと向かうのであった。


「俺の覚えてる限り、これはビルこそないが地形が名古屋を縮小したものだ。任せたまえ。俺の親戚が名古屋に住んでいて、俺もよく探索したよ。頭の中に地図はある」


「いや、ここにこの街の地図あるからお前の地図はいらねぇや」


市役所を出て地図を貰ってきた。まずはこの名古屋・Fの探索だ。








〖〗

「ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!金がねぇから何も買えねぇぇぇぇ!カツアゲか!?カツアゲか!?」


俺は発狂した。せっかく辿り着いたのにも関わらず何もすることがない。こんな虚しいことが今まであっただろうか?いや、あまり無い。


あったとすれば物を買いに行く際に金を持って行くが、いざレジに並んでお会計であと2円足りなかったということぐらいだ。もう家に戻るのも面倒だったから結局買うのを止めた。俺が発狂していると、


「落ち着け!金はなんとかして稼ぐ!あとカツアゲっていってもプレイヤーぐらいしか対象に出来んぞ!その辺にいるゲームキャラが反応出来るのか?」


「そうだよ!…でも見た感じ街の人はAIみたい。AIならその辺も対応できるだろうけどポリスメン呼ばれるかもしれないよ。落ち着いて、ほら」


なんか2人にあやされた。だが俺はなんとか平常心を取り戻すことができた。この世界にもポリスメンがいるのか…?


「はあ、そうだな。てかカツアゲ対象のプレイヤー君が見当たらないんだが…」


本当にそれっぽいやつらが見当たらない。大抵のやつが最初の街から一番近くにあるだろうこの名古屋・Fにくると思ったが。


まあ、まだ森の中にいるか別のやつと戦っているとかそんなあたりか。それか俺達が一番乗りか。今考えた。どちらにせよプレイヤーが来るというのは変わりない。警戒はしておくべきだ。


「そんなことはしなくてもいい。これがあるだろ?」


慎士が腰にあるケースを指でつつく。そういうことか。


「このノートで物を具現化して売りさばく。ただのゲームのNPCなら偽物だから売れなかっただろう。だが、相手はAI!システムに干渉しない、この世界ではただの人!騙せるはずだ!」


結局最初に考えたやり方か……。森ではそこまでの屑にはならんとか言っていたくせにもうなりやがった!手のひら返しがすげぇよ!


慎士がノートとペンを出し、早速字を書き始める。


「こんなところか…どうだ?」


目の前にいくつかの果実が落ちてくる。それを俺は反射的に、


「おっと!おい、その空中に現れるの便利なやつと不便なやつが分かれてるだろ!その辺なんとかしろよ?」


「そのうち制御出来るんじゃない?アニメの主人公ってどんどん成長するだろ。ならこのカードが急に強化!てのもあるかもな」


「強化期待~」


もしこの異能力が進化的なのしたらどうだろうか?友結の治療系の異能力なら回復量上昇!とかで分かるけど慎士の空気を操るってのが分かんねぇぜ…。操る範囲ってのがあるだろさすがに…。


俺はどうなのよ。今のところは拳や足など限定的な部分にしか炎を纏えないが最後にはメラ○ラの実食ったのと同じくらいいけるか?


「んじゃ。こいつら売りさばいてくるわ」


慎士が俺に手渡たされた果実を持って店を経営しているばあさんのとこに行く。


(なんか話してるな…。……。ばあさんが果実を食べて……慎士が土下座している…。何があったんだよ…)


慎士が俺達の元へと戻ってくる。


「見てたけど何かあった?しかも果実を持ったまま帰ってきて」


慎士が事情を説明するようだ。


「俺は普通にこれ買い取ってもらえませんか?と聞いたんだ。そこでばあさんは食えなきゃ商品にならない!と言って試食をしてきた。んで俺は察した。案の定ばあさんは不味いとかいいやがってさらにこんなもの食べ物じゃねぇ!って言われた。あー泣きそ(棒)」


まあ、しょうがないね。急に持ってこられてもねぇ。大体は毒味をするだろう。くっ!あの異能力が強化されるなら食べ物の味をなんとかしてくれ!俺は懇願した。


「どうするの?結局お金がないから宿も無理だし、考えれば急に家に泊めてっていっても困ると思うの。また野宿なの?」


「それもこいつでなんとかする」


慎士がドヤ顔で[幻想の書]のカードを見せてくる。なんだよ!チート能力か!?やっぱりそのカードは俺が欲しかった…!


「とりあえず街に限りなく近い位置の森に行こう。街で異能力を使うのは少し駄目な気がする」


そうだよな。急に炎を纏ったり酸素がなくなったりしたらヤバいもんな。俺達は異能力を使うために1度街を出るのであった。


てか正直ここまで友結の異能力使ってなかったし、なんかアニメでいうヒロイン枠だと思うのに半分空気になっちまってる……。次回は活躍できるといいな…。











  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る