第4話 街への道中

俺、荒井龍は森を歩いている。先程、鈴木とかいうやつと戦い、無事勝利。だが俺はかなり疲れた。街へ行って宿で休みたいところだが、俺達は金など持っていない。


そこで俺達は人様の家を借りて過ごそうと思った。細かいことだが、この世界のプレイヤー以外の人間はどうなんだろうな。AIかな?いや、かなり重要なことだな。まあ、その場で分かるだろう。


「おい、慎士。さっき手に入れたカードあるだろ?ちょいと使ってみてくれや。使い方によっちゃあかなりのヤバいのになるかもしれん」


俺は慎士に頼んだ。鈴木のカード[幻想の書]は使用者にノートとペンを具現化し、書いた文字の物を造り出す異能力を与える。造り出された物は字の丁寧さに比例していて、鈴木の字が汚いこともあり、あの場では勝てたともいえる。


クラスの委員長である慎士はよく話し合いで黒板で字を書いたり、クラスノートを書いていたりもしたな。ほとんど寝てる俺からは詳しくは分からんが、字がキレイなのは分かる。


「なら使ってみるか。さてと…」


次の瞬間には慎士の手にはノートとペンの2つがあった。慎士は何か字を書き始める。その字は――――――――。


「よし!書けた!」


「「剣…」」


剣が慎士の目の前に生み出される。浮いていた。鈴木も使っていたし、剣は具現化にはオーソドックスな物だろう。


「んで、異能力を解除」


慎士が解除を宣言してすぐにノートとペンは消えた。異能力の解除時はなんかよく分からないものを感じられる。糸が切れる感じだろうか。思うとあっ、消えたわ。ってな感じだ。


「また発動」


再び慎士の手にノートとペンが現れる。何で1度消した?俺が思っていると、


「ふむ。1度異能力を解除すれば解除前に書いた字は消えるようだな。途中かけのやつもだ。あとは具現化した剣も消えた。これはかなり重要だな」


その通りだ。消しゴムもないし、字が消えなかったら最後にはノートが字で埋めつくされてるんじゃないか?そんな悩みは無くなった。


てかあのまま爆弾放置してたけどなんかよかったわ。起爆しないにしても。消えてよかった。そんなことはよく、


「他にも書こうよ!面白いやつ!」


友結がはしゃぎながら言ってくる。もう遊びだなこれは………。


「ならこれはどうだ?」


慎士がスラスラと字を書く。林檎。焼き鳥。寿司………。食べ物ばっかりじゃねぇか!まぁ、お腹が減っていないということもないが。


「やったー!食べ物を生み出せるなんて最高だよー!早速食べるねー」


友結が口にどんどん含んでいくが……、


「うっっ!?吐きそう…………。はぁはぁ。なんなの!?不味すぎるよ!こんなの食べ物じゃない!」


友結が涙目で訴えてくる。食べなくてよかったぜ…。


「さすがにそんな簡単に美味い食べ物が食べれると思うか?生み出せるといっても所詮は異能力にすぎん。まあ、これで腹減ってるやつに売りつけるっていう使い方を今思いついたがな」


「ひでぇなそれ。だがやってみてぇわ。金を奪い取ってやるぜ………!」


「いつかな。……てかそこまでの屑になるかわ分からん。他にもまだこの異能力は使えるぞ!」


次はなんだ?……銃か。それは普通の拳銃。だが異能力があること以外には普通の俺達には十分すぎる物だ。ヤバいわ。ぶっ壊れかよ。


「剣同様、浮かせながらの発砲はできそうだ。試してみるかね。発砲音に気づかれないようサイレンサーを取り付けるか」


サイレンサーを具現化して拳銃に取り付ける。その役は俺がやった。ノートをわざわざ地面に置くのはめんどくさいし。


俺も付けるのめんどくさいわ!ちなみにサイレンサーのつけ方は昔ネットでそういうのにハマってた時に見まくってたから分かる。なにやってたんだよ俺……。


「ほれ!」


発砲。弾は木へと飛んでいき、命中。


「なかなかいい。普通にライフルとかも具現化できるんじゃないか?そう考えるとやはりこの異能力はヤバいぞ!可能性も無限大かもな!」


よかった。鈴木が異能力を完璧に把握する前に倒せて。もし鈴木が銃を具現化したらどうだろうか。近距離向けの俺なんか剣は捌けても銃弾までは見れない。本来はかなりの強敵だった。


「見てたけど本当にヤバいよ。それ。バレたら他のプレイヤーが狙ってくるよ?」


「まあ、なんとかなるだろう」


友結が復活。吐き気は収まったようだ。よかった。あと、慎士。お前なんとかなるじゃねぇ。しっかりしろ!


持っていたペンを捨て、慎士が銃をクルクルと回す。そうしたら指をかけるところが折れた。嘘だろ?普通ならそこ折れないんじゃ……。


「では、街へ向かおうか。歩くのは嫌だろう!これでどうだ!」


ああ、銃はもういいのね。俺達の前に現れたのは自転車2台。これで行くのか……。

ダセェ……。バイクにしろよ。


「龍がバイクに乗りたそうな顔をしているが仕方ない。銃はともかくバイク程の精密機器まで具現化できるか分からん。まず俺達はバイクの免許を持っていない。チャリこいで行こうぜ?あと、俺はノートとペン持ってるからどちらか2人乗りな。頼むわ」


くそ!楽しやがって!なんか友結が俺を見てくる。お前がやれみたいな顔だ。なんだよ。


「ああ、やればいいんだろ!やれば!」


「ありがとねー」


くっ、他人事みたいに言いやがって……。俺と慎士で自転車に乗る。なんか乗り物にのるのは久しぶりだぜ。実は昔バイクを乗り回すという時期もあってだな………。んなこたぁいい。行くか。


「全速前進だ!」


慎士がどこかの社長みたいなセリフを言い、俺は自転車を必死に漕ぐのだった。久しぶりすぎて辛いわ。こうして再び街への道を進み始めた。











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