第3話 初陣

(よっしゃぁ!気づいていねぇ!くたばれ!)


俺が拳を鈴木の無防備な後ろを殴りつけようとしたが、それは叶わなかった。パキンッと何かが割れる音。


「何しやがったてめぇ!」


「ふう。スタートしてすぐに盾を作って良かったよ。残念だったね」


「てめぇの異能力か!……何か持ってるな…。ペンとノート?それが鍵か」


異能力は持ち主の心情などが作用して決められる。鈴木という男からして、その異能力は…


「そうさ!これが僕の異能力![幻想げんそうの書]!限度はあるがノートに書いた文字を実際に物体として生み出せる!このようにね」


鈴木は何かを書き始める。ヤバいな。書き終える前に潰す!近づこうとするが、もう遅かった。すでに鈴木は書き終えていた。


「くらいたまえ。剣が10本だ。耐えきれるかな?」


こちらに向かって剣が本当に飛んでくる。よく見て避けろ。俺は目を凝らす。そこで俺は気づいてしまった。剣がぐちゃぐちゃなことに。


(弱そう……。というかもはや爪楊枝つまようじ…。あいつの字がきたねぇからうまく具現化できなかったのか!もしそうならうまく捌けばいけるな)


俺は避ける体勢から落とす構えをとる。


「オラァァァ!」


俺が全ての剣を連続の拳で落とす。こちらは炎を纏っている 。多少の血は出てくるが、あんなきたない剣なんかに負けはしない。そのまま俺は駆け出す。このレベルなら怖くねぇ!このまま押す!


「オラァ!どうした!!攻めねぇのか!?」


「くっ!!」


鈴木は盾を作っているだけで攻めず、防戦一方だ。その後もひたすら俺は攻める。ひたすら盾を割った。


そして、何度目か分からないころだ。ついに拳が盾を貫通して鈴木を吹き飛ばす。


「うわああああああああぁぁぁ!!」


地面に転がる鈴木。よろめきながらも立ち上がる。顔には火傷ができ、体のあちこちに傷が出来ている。


「さあ、終わりにしようぜ」


再び俺は駆け出す。だが、


「ふはははははハハハハハ!!計画通り!」


鈴木が突然笑い出した。それは何か勝ち誇ったような笑いだった。


「んだ?てめぇ。おかしくなっちまったのか?おい」


「僕は君の攻撃を防ぐ盾を作ると共にある物を少しずつ書き足していたのさ!それは…」


俺の前に巨大な黒い物体が現れる。その物体の上を見てみると、導火線があるじゃないか。しかも点火された。大きさは半径7メートルほどのものだ。


「巨大な爆弾か……」


「君の異能力は炎を使うね。下手に動けないんじゃないかな?あとは爆発を待つ。あと10秒くらいだね。逃げられないよ。だが僕は10秒もあればシェルターぐらい書ける。残念だったね」


(くっ!今からじゃ間に合わない!だが野郎はもう書き始めてる!どうすれば……)


俺は半分諦めていた。ここで終わりかと。だが、後ろから声がする。


「おい!止まるな!走れ!」


慎士だ。走れ!と。何か考えがあるのか?他には何もない!慎士に賭ける!


「うぉぉぉぉぉ!!」


俺は鈴木に向かって走った。爆弾に炎が引火しないように1度消す。


「バカめ!もう爆発する!もう無理だよ!」


3、2、1、0。だが爆弾は爆発しない。爆弾の横を通り抜け、再び炎を纏う。


「オラァァァァ!!」


爆弾は爆発しなかったことの衝撃で手を止めてしまった鈴木。


シェルターという5文字を書くのは簡単だ。だが、巨大な爆弾に耐えるほどにするには相当上手く字を書く必要がある。手を止めてしまったことによりシェルターを書き終えることはできず、


「ぐぁぁぁぁぁぁー!!」


無慈悲に顔を殴られ飛ばされた鈴木は顔が炎により燃えてしまっている。

見るからに苦しそうだ。実際の痛みを感じているのだろうか。俺はまだまともな攻撃を受けていないから分からない。だが俺は助けない。そういうゲームだからな。


「あああああぁぁぁ!!」


もう終わりだな。そう思った時、ボオッとさらに炎が燃え上がる。そのまま炎は鈴木全体を焼き、数秒後には鈴木は世界からは消えたいた。


鈴木が消えた場所にはカードが浮かんでおり、それは鈴木を倒した者の手に飛んでいく。俺は衝撃を受けた。


「おい!なんでお前が持ってんだ。慎士ぃ!」


「なに、最後に鈴木を倒したのは僕ということさ。炎が急に大きくなっただろう?それは僕の異能力さ。僕の異能力は空気を操る。だから鈴木の所に酸素を集めて炎を大きく出来たんだ。あと、爆弾も同じくあの部分の酸素を減らした。ってな感じだ。まあ、龍は字が下手だからな。この異能力は俺が上手く使ってやるさ」


くっ!仕方ねぇか。字が汚ねぇというのは本当だからな。空気を操る…か。化学に詳しくない俺でも分かる。敵に回すとヤバい異能力だな。


「まあ、助けてくれたのは感謝してやるぜ。サンキューな」


実際、慎士がいなきゃ終わっていたかもしてない。俺は安堵し、異能力を解除する。炎が瞬く間に消えていった。使うとこんな物か。


あまり、精神的に疲れたというのは無い。だが、怪我こそないが肉体的にはかなり疲れた。休みたい。


「2人とも凄いよ!わたしなんて見てただけだもん!」


「「それほどでもねぇ(ない)な」」


セリフが重なる。


「ふふっ、2人は息ピッタリだね。………。それで、これからどうするの?とりあえず街に向かう?」


疲れたなら野宿は嫌だな。なんか休まらん。街だろ街!宿に泊まるんだよ!と俺は心の底から思っていた。


「まあ、街に向かうのは優先事項だ。だが、金はない。龍がいかにも休みたい顔をしているが、残念だが宿は無理だろう。諦めな」


(マジかよ(絶望)。てかそうだわ。金ないじゃん。どうしようかな……)


俺は絶望しながら先を考えていると、


「街の人達の家に泊まるのはどうだ!?金は多分かからないし、土下座でもなんでもして頼もうぜ!」


慎士がなかなかゲスな発言をする。だが生きるために手段は選ばん!


「いいぜ。それで。休めりゃ誇りなどいらん」


「いいよ。野宿は嫌。虫が地面を這うのよ?ならわたしも誇りは捨てる!」


友結もか。いいのか!?お前だけは誇りは守ると思っていたのに………。まあいいわ。こうして3人の意見が固まる。俺達は街の方向を目指して再び足を動かすのだった。


(はあ、もう歩きたくねぇや)


俺はため息をはき、2人と歩く。





















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