第2話 開戦
教会を出て、辺りを見渡す。普通に街だな。俺より先に教会を出たやつらもいるな。
他のやつはどんな異能力をもらったんだ?気になる。覗きたいが、絶対逃げられる。何せ俺だからな。不良とはゲームでも関わらない。それが1番だ。……。
自分で言っていて悲しいな。しばらく教会の前で立っていると、慎士と友結が出てきた。
「おい、龍。俺と友結君で考えたんだが、手を組まないか?」
「あ?」
つい悪い返事をしてしまった…。しょうがないね。んで、手を組む?敵同士だろ?
「敵同士なのは十分分かっている。だが、プレイヤーの人数を見てみろ」
慎士に言われて腕時計を見てみる。
(9000人…。確かにこれは多いな。徐々に減るとしても1人で相手するのはキツそうだ)
「だからこそ人数が減るまでは俺達で協力して生き残るんだ!お前が他人との協力が嫌なのは分かる!だが生き残りたいのはお前もだろう!頼む!」
うむ。
「お願い!一緒に頑張ろう!」
友結もか。さて、どうするか。俺は確かに協力は苦手だ。
だが、逆に考えるんだ。これは自分を変えるチャンスだと。なら答えは1つ。
「しょうがねぇな。てめぇらの願い、聞きいれたぜ」
キメ顔で言ってやった。なんか爽快だ。そんなことより、俺は少し疑問になったことを聞いてみる。
「他のやつらはどうした?」
少し苦そうな顔をして慎士。
「断られてしまったよ。仲間なんかあてにできないってね。だからこそ、龍が受け入れてくれて嬉しかったんだ」
「ふん。他のやつらはこのゲームをやる意味を分かってねぇみてぇだな」
「そうね。先生は団結力も見るって言ってた。例え個人戦になったとしてもまずは仲間と協力して生き残るのが大切だと思う」
その通りだ。おそらく、俺達のようにチームを組んだやつはいるだろう。そいつらが最終的には壁になるかもしれない。まあ、全員シめるんだがな。
「さて、こんなところにいても時間の無駄だ。まずは食料などの調達からだ。この無敵時間を有効活用するんだ!」
「賛成だ」
「賛成ね」
全員が納得した。この世界では自給自足が大切だ。腹は減らないなど甘くはない。
「食料っつってもどこ行くんだよ。地図もねぇから分かんねぇだろ」
マジで俺らは1文無し。あるのはカードのみ。地図すらないため自分で道を覚えるしかない。
「うーん、この街に市役所みたいなのはないのかな?市役所なら地図くらいありそうだけど…」
「確かに市役所ならありそうだ。探してみるか」
「できるだけ早めにね」
よっしゃ!探しに行くか!と俺が決意して数分後。
すぐ見つかった。扉を開けて中へと入る。やはり他のやつもいたな。ただの脳筋プレイじゃなく、しっかり考えてるやつは注意だ。俺も勉強出来ないし、頭回んないけどね。
「これが地図だね。持っていけるみたいだから3人分持っていこう!」
「おっ、そうだな。各自1つずつだ。ほら!龍の分!」
投げ渡される。物は丁寧に扱いたまえ。俺はよく壊すがな。
「ありがとよ」
地図は手に入った。次にどこへ向かうかだな。これはみんなで相談する。
1度市役所を出て、路地裏へと入る。他人に聞かれずらいからだ。
「この世界の広さは大体日本の半分ってとこか…。これは後半になると沼になるな」
「結局、誰か1人までやるなら耐久勝負になっちゃうね」
「まあ、最後は1つ1つ街を潰していくのがベストだろう」
俺がこう、ただ立っているだけで話が進む。やべぇ、地図の読み方わかんねえから話についていけねぇ。
「では、まずは東にある隣の街まで向かうとしよう。そこで再び状況を把握しよう。食料はまあ、木にでもなってんじゃない?」
「いいよ。それで」
「ああ。それでいこうや」
何にも分からないがとりあえず返事をする。この世界だとつまるのが1番良くないと思った。
〖〗
隣の街へ歩き始めて結構時間がたった。陽も沈み始めている。でも、まだ街は見えて来ない。ひたすら森の中を進む。
「クソが!遠すぎんだろ!体力を測る以前にこんなんいけんのか!?」
「もう18時だ。それでもまだ街は見えない。今夜は野宿だろう。フフッ、実は野宿はした事がなくてね。楽しみなのだよ!」
「やだよー。男の子はいいかもしれないけど女の子にはキツいんだからね!」
「しょうがねぇだろ。明日まで我慢しろや」
友結は頬を膨らませて拗ねた感じになったが、すぐに戻った。さらに1時間ほど歩いて、
「もう暗いし、迷子になる可能性がある。今日はここまでだな」
「おい、道中木についてた果実だ。食え」
「ありがとう」
「すまないね」
洗ってないけど腹壊さないかな?少し不安だぜ………。しばらく様子を見てみたが、あたった様子はない。余計な心配だったか。
焚き火をして夜を過ごす。モンスターが出るような世界ではないと知っているが、森の中だ。蛇や熊がでてもおかしくないだろう。警戒はしておこう。
「なあ、2人のカードはどんなものだったか見たか?」
慎士が聞いてくる。
「いや、まだだな。あらかたどんな力かは予想がつくが」
「わたしは見たよー。傷を癒す感じかな」
「カードはその人に適した異能力を与えると言っていたね。それは友結君がみんなを守るという心の現れかな」
「照れるじゃない」
友結は少し赤くなった。
「この間に俺は見たぜ。まだ何の異能力かは言わねぇがな」
できるだけ力は見せたくない。ギリギリまで教えることはない。
「そうか。俺もあまり知られたくはないな。戦いまでは隠しておく」
慎士もか。
「えー、ずるいよぉ。わたしだけ損した気分」
友結にフォローを入れる慎士。
「いや、その異能力は知れてよかった。怪我をしても安心出来るからね。この世界でも
俺だって他校のやつとの
「さて、友結君は寝てくれ。俺と龍で見ているから」
「ごめんね。じゃあ、おやすみ」
友結は10分程で眠りに落ちた。いい寝顔じゃないか。
「どうだい?龍。3人でする旅?というものは。不満はあるかい?」
慎士が聞いてくる。俺は、
「いや、不満なんてのはねぇよ。お前ら2人がいたからこそここまで丸くなってきたからな。いてくれるだけでありがてぇさ」
「過去の龍がパイナップルだとすると、今はオレンジ?分からんな。まぁ、俺なんか中学生のころは何もしてやれなかっただろ?でも友結はそのころからお前の面倒見てくれたんだ。いつか恩を返してやれ」
そうだな。俺のせいで友結の時間を奪ってしまったのは確かだしな。
「その時になったらな」
俺達は適当な会話をしながら過ごした。
特に変なことはなかった。
〖〗
「………い 、……きろ………」
なんか聞こえる……。
「………ラーメン………」
「おーい、起きろー。………起きろー!!!!」
「はっ!!……。俺、寝てた?」
「うん。それもぐっすりと。ラーメン………じゃないよ!もう!」
マジかよ。慎士に申し訳ねぇ。
「それはすまなかったな。ん?慎士は?」
友結に尋ねる。
「慎士はもう起きてるよ。その辺りを見回りしてる」
はえ~。やること早いな。俺達が待っていると、数分後に慎士が戻ってきた。
「何か収穫はあった?」
「果実があった。次は水で洗って食べよう」
そりゃそうだな。昨晩はあたらなかったから良かったけど、最悪、食中毒で死にました。ってなってた可能性がある。それはさすがにシャレにならんよな。
「他はどうだ?」
少し考えた慎士。
「俺達の向かおうとしている街に他のプレイヤーも向かっている。この目でしっかりと見た。俺が見たのは1人のやつだったが、他にも誰かいるかもしれない」
「つまり……」
「戦闘になる可能性はかなり高いと言えるだろう」
「あと1時間くらいでガチのサバイバルゲームがスタートのようだぜ」
慎士は何かを考えている。そして、
「この無敵時間の間にプレイヤーを見つける。そして、無敵時間終了と共に即叩く。つまり不意打ちだ。我ながら汚いとは思うが、安全第一だ。どうだ?」
慎士…。お主もなかなかの悪よのう。まあ、俺のカード的にもその方が都合がよいからな。
「俺は異論はない。稲見はどうだ?」
「う~ん。少し酷いかなとは思ったけど、命懸けだから不意を付かれた方が悪い!意見に賛成!」
「では、今からプレイヤーを見つける!いこう!」
〖〗
30分程歩いたら案の定いた。1人のようだ。
「あいつは!」
慎士が反応する。
「あいつを知ってんのか?」
「ああ、やつは1年4組の書記の鈴木!書記のくせに字が汚いと評判のやつだ!」
なんだよそいつ。もうちょい頑張ってくれ。
ちなみに俺達は1年3組だ。俺にいたってはクラスのメンツの名前を半分も覚えていない。
「やつをターゲットとする。いいな?」
「「了解」」
その後、
「あと30秒で無敵時間は終了。みんな、準備しろ」
そこで
「いや、準備は俺だけで十分だ」
ついしゃしゃり出てしまった。これもかつての悪い癖だな。でも実際はタイマンの方が俺の異能力はよい。
「それほどの自信があるのだな。なら行ってこい!俺達は見守っている!」
「負けないでよ……」
ふん。負けてたまるか。図書券は欲しいんだ。んで転売する。
(よし、時間だ)
俺はカードに触れ、
(能力発動!)
拳、足が炎に包まれる。
(これが俺の異能力[
俺は鈴木に向かって駆け出す。鈴木は何か腕を動かしているが、気づいてはいない。
(覚悟しろや!歯ぁ食いしばれ!)
こうして戦いは始まった。
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