スクール・イン・ウォー
39ZOU
序章
第1話 開戦前
ここは公立 吉野ヶ丘高等学校。周りには海が広がり、窓から潮の匂いが漂うこともよくある。全校生徒は約650人で構成されており、部活動は盛んな方である。普段通りの生活を送り、飽きていた日々。生徒は非日常を求める。そんなある日、面白そうな話が転がり込んでくる。
「君達にはサバイバルゲームに参加してもらう」
これがそのストーリーのはじまりである。
〖〗
校舎の裏。響く怒声。そこでは2人の男子生徒が言い争いをしている。
「オラァ!110円よこせや!焼きそばパン買いてぇんだよ!」
「嫌だ!まず俺の今の所持金は72円だ!そもそも110円持ってない!」
「クソが!じゃあ、きりよく70円よこせや!これでポリ○キー買ってやる!」
「残念だが購買にポリ○キーは売り切れていた。諦めな」
「畜生!覚えてやがれ!」
カツアゲをしていた男は捨て台詞を吐き、走っていく。
「あいつあんなことしてるけどなんか地味なんだよなぁ。程度がしょぼいというか…」
カツアゲを受けていた男はため息を吐き、歩いて教室で戻るのであった。
「あー!畜生!どうして上手くいかねぇんだ!弁当は親が作ってくれねぇし!今日はカツアゲしない日って決めてのに!ついやってしまった!」
この1人で狂っているオールバックのやつが俺、
先コウどもには目をつけられている 。校内でのカツアゲ。授業妨害。他校の不良との
こうなってしまった理由は自覚している。両親がガチのヤクザなのだ。まあ、大体察しはつくだろう。そんな環境で育った俺は中学3年の前期まで荒れ狂っていた。でもその行いが正しいと信じていた。
だが、後期。受験というものがあるのを忘れていた。周りの空気は常にピリピリとしており、とても暴れられる雰囲気ではなかった。徐々に俺は落ち着いていき、自分がおかしいことを本当に自覚した。
実は心の中では家庭環境など関係なく俺は暴れることで他人に存在をアピールしたかっただけなのかもしれない。そう思った。
受験はした。受けさせてくれと頼んだらさせてくれた。いくらヤクザでも子が自立するのは嬉しいと思う。
後期は本気で勉強し、それこそ死ぬのかってくらい。時々暴れたくなることはあったが、我慢した。見事第1志望に受かり、入学した。だが、春休みになってからだ。受験の開放感からか、すごくはしゃぎたくなってしまった。
んで、かつての不良友達と遊んでしまって
「やっぱり楽しぃー↑!」
となって不良が再発してしまった。昔程荒れてはいないが、高1現在でもついやってしまうんだ☆ってな感じ。
同級生には距離を置かれているが、俺以上にヤバいやつがいるらしく、クスリに手を染め、停学処分を受けたとの事。
退学させろや。
なんだかんだいって俺は突っぱねているが、話しかけてくるやつは少人数いる。なんか中途半端なのだ。不良になりきっている思春期の少年って感じ。これが俺の説明だ。その後、俺は中庭のベンチに座った。
「やっべぇガチで腹減った。昨日から公園の水道水しか飲んでねぇ…。あのジジイ、入学させるだけさせてあとは自分で生きろ!てか?バイト禁止なんだよ!」
「ねぇ」
誰かが声をかけてきた。誰や。と、声がした方を見てみる。
「大丈夫?お腹減ってるんでしょ?これ食べなよ」
長く伸びた亜麻色の髪。体は細く、身長は龍の首までくらい。胸は……無いな。手に持ったサンドウィッチを俺に差し出している。
俺は返答する。
「あ?なんだ。
「昨日から見てたけど、何も食べてないんでしょ?これ食べなよ」
「大丈夫だ。腹なんか減ってねぇよ。それはお前のだろ?自分で食え」
彼女は目を見開いて、
「何我慢しちゃってるの!良くないよ!」
はぁ、相変わらずめんどくさいやつだな。
こいつの名前は稲見
幼なじみに当たるやつだ。昔から世話焼きというかなんというか、俺に構ってくるのだ。
中学生のころも授業を受けなかった俺にわざわざノートを持ってきてくれた。今でも多少荒れている俺を救済でもしてくれるのか知らんが、まあ、良い奴だ。俺は渋々サンドウィッチを受け取り、食べる。
「どう?」
「悪くないな」
「何その適当な感想…」
友結がこちらを見つめてくる。
「実際は美味いぞ」
「今さらね」
んだよ。言って欲しかったのかなんだよ。
「一応授業は出るんでしょ?遅れないでよ?」
友結が去り際にこっちを見て言ってくる。
「なんなら今から行くわ」
俺は教室へ戻ることにした。
〖〗
教室へ入るなり、男がこちらへ歩いてくる。そのまま喋りかけてくる。
「さっきの見させてもらったよ。甘いねぇ。これが青春ってやつか!俺も味わいたい!」
目を輝かせながら俺ともう席に座っている友結を見て言う。
こいつの名前は竹村
クラスの委員長でこいつも幼なじみというポジション。幼なじみはこの学校にこいつと友結しかいないからな。
まあ、まともに話せてもこいつらくらいか。今ではかつて程荒れていないため、それを理解した2人が話してくれる。雑な対応しかしていないが、内心は割と嬉しい感じ。
「んだよ。てめぇ見てやがったのか?言っとくが俺らはそういう関係じゃねぇ」
てかこいつ見てたんだよな?教室からは中庭は見えないし、見えても中庭への道くらい…。こいつ、盗聴していた?…まあいいや。
「またまたぁ。俺は君達の恋のデビルとなろう!くっ付けてみせる!」
「キューピッドじゃねぇのかよ。ぜってー嫌だね」
俺がしかめっ面をすると、慎士は手を振って席へ戻る。
(俺も席に戻るか)
こうして授業は始まり、俺は寝るのだった。
〖〗
次の日。学校へ着き、いつも通りのホームルームが始まる。だが最後に担任が、
「今から政府の依頼により、あるゲームを君達にしてもらう」
ザワザワ………。クラスがざわめく。担任が再び口を開き、
「君達にはサバイバルゲームをしてもらう。目的は全国の高校生の基礎体力、団結力、行動力を測るためだ。実はこの検査は数年に1回行われていて、今回が君達の代という訳だ」
再びクラスがざわめく。慎士が先生に質問をする。
「サバイバルって言われてもわかんないっすよ。それにこんな短時間でなんて出来るんすか?」
確かにそうだ。俺も意味が分からん。
「サバイバルは現実ではなく、VRMMO。つまり、仮想現実で行う。時間は安心しろ。向こうの時間の流れは遅く、ゲームが終わるころにはこちらでは3秒とたっていない。では、今から機材を配る。合図をしたらそれを頭に付けてくれ。ルール説明は向こうである。では、出席番号順にきてくれ」
全員に機材が届き、後はつけるだけだ。サバイバルかー。最近退屈な毎日だったからな。楽しみだぜ。
「では、今から開始する。全員、装着!」
みんなが機材をつけ始める。よっしゃ!俺もや!機材を付けた瞬間、意識は闇の底へと沈んでいった。
〖〗
お、お?意識が覚醒してきた。地に寝ていた俺は起き上がり、周りを見てみる。周りには同じくクラスの人間。ちゃんと友結と慎士はいた。どうやら見た感じここは教会のようだな。
「すっげぇ!!」
と声を上げるやつ。
「わっかんねぇ。何すんだよ…」
と戸惑っているやつ。そんな中、教会の祭壇に1人のはげた男がくる。男は話し始めた。
「私はこのゲームの説明役です。今から説明を致します。皆さんにはこのゲームで生き残りをかけて戦ってもらいます。残り1人になるまで。勿論このクラスだけでなく、他のクラス、いや、全国の選ばれた高校生がいるでしょう。腕時計がしてあるでしょう。そこには生き残っているプレイヤーの人数が表されています。さて、目的はこんなところですか。次に、この世界の設定を教えます。この世界ではそれぞれのプレイヤーが異能力をもつことが出来ます」
マジ?!と皆が騒ぐ。そりゃこんぐらいの年頃の奴らは異能力って響きだけで憧れるよな。俺もその1人!
「ゴホン!では続きをいいかな?異能力はこの教会を出る際に手に入ります。今あなた方の腰に小型のケースがあるでしょう。異能力はカードで表され、教会を出た瞬間にあなた方に適したカードがケースに生み出されます。さて、次にカードの説明をしようかね。カードを持っている限り異能力は使えます。また、カードは自分以外の者が触れることはできません。なので、落とした以外であれば基本的には無くなりません。ですが、ここからが重要です。カードには1度だけ使える[覚醒]というものがあります。それは異能力を一時的に超強化するというものです。[覚醒]をすれば、カードは失われ、2度とそのカードの異能力を使えなくなります。タイミングにはご注意を」
(ふーん。大体は把握した。カードによる異能力。そして1度しか使えない[覚醒]か…。面白そうじゃねぇか)
胸が高まってきた。
「カードは他のプレイヤーを倒すことでそのプレイヤーのカードを手に入れることが出来ます。また、横取りをしようとしても、プレイヤーを倒した時点で倒した側の物となるので、奪うことは出来ません。ここも覚えてください。生き残るためには多くの異能力があるに越したことはないでしょう。是非頑張ってください」
(他人を倒すことで能力が増える、か…。これは争いが増えるぜ……)
「何か質問はありませんか?」
はい!と手を挙げたものがいた。女子生徒だ。(名前は忘れた)
「食料や生活用品は自分で集めるのですか?」
「はい、勿論。これはあなた方の体力などを測るテストでもありますので、そこらのことはご自身で対応してください」
めんどくさい。ゲームだから腹は減らんと思っていたがそんな楽なもんでもなかったか…。
「他に質問は………………。無いようですね。では、この世界での24時間後には攻撃を受けるようになります。それまで準備するなり、逃げるなりしてください。優勝者には図書券1万円分です。では、ご武運を」
そう残して男は去っていった。さて、やるか。俺は教会の出口へと向かう。
列が出来たが、すぐに自分の番だ。一部のやつはまだ受け入れられてないだろうが。
俺は楽しみだ。こんなこと二度とないだろう。んじゃあ、行くかね。そうして俺は教会の出口をくぐるのだった。
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