3話 本気にされない

 中学2年生の秋頃のとある日、いつものように学校に行き、教室に入ると、颯と天津が話していた。すると、教室に入る俺を見てすぐ


「お、主役が来たぞー」


「え?なんのことだよ井坂」


「葵は天津が好きなんだよな?」


「え…男子が大声で叫んでたのは知ってるけど

本当なの?」


「ちょ…え…」


 なんと突然好きな人を、それもその好きな張本人がいる前で言い始めたのだ。それを見て回りの男子たちも「どうなんだよー」「ハッキリさせようぜ葵~」などと冷やかしに入ってしまい、そこで俺は少し声を荒らげて


「さすがにそれはないだろ。やめろよ!」


と怒り口調で言った。好きな人を言われることは慣れていたが、本人の前で言われたため、怒ってしまった。…のだが。


「え?何怒ってんだよー」


 と井坂が笑いながら言い始め、それに伴い周りも笑いだしたのだ。


(あれ?なんかネタにされてる…)


 なんと、怒ったことさえもネタとなってしまっているのだ。そこで俺は混乱した。よく世間では、『普段温厚な人が怒ると怖く見える』と聞く。恐らくそれは本当のことだ。


 ・普段から怒り口調の先生が怒る

 ・普段は優しい先生が怒る


 どちらが怖いと聞かれるとほとんどの人は後者と答えるだろう。それは多分『怒っている姿が想像できないから』だと思う。なのに

俺の怒りは全然効果がなかった。

いじられキャラは怒らないとでも思っているのか。それは分からない。でも怒っても意味が無いのだ。そこで俺は気づいた。



 “本気にされていない”と。







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