2話 なぜこうなった
俺は自分で『いじられキャラ』になったのではない。周りに流された。俺も別に嫌だとは思っていなかったから特に嫌だとは思わなかった。だが、明らかに“いじり”ではないだろうということをされ始めたのには、それなりの過去があり、そうなってしまった。
俺が小学校5年生のある日、クラスメイトの男子数人に好きな人を聞かれ、当時人というものを全然疑わなかった俺は、
『誰にも話さないこと』
を条件に、簡単に好きな人を教えてしまった。それが全ての根幹だ。
次の日学校に行くと、昨日教えたはずもない女子から、
「黒瀬くんって、芽衣ちゃんのこと好きだったんだね!」
「…え?誰からそれを…」
「やっぱり合ってるんだー!」
しかも、その女子と昨日教えた男子は特に仲も良くない。それで悟ってしまった。
「あいつら、クラス全員に漏らしやがった」
更には、俺の好きな人だった「天津 芽衣」は、クラスメイトなのだ。つまり必然的に本人の耳にも入っているということになる。
また、これが原因で若干の人間不信になったのはまた別の話である。
そこから、俺への“いじり”が強くなった。以前からあがり症でよく話す時に噛んでいて、そのこともバカにされ始め、好きな人の言いふらしも相まってしまった。
ここまで来ると、少し強めに「好きな人を口にするな」と言ったところで意味を成さなくなり、最終的に開き直り『怒る』ではなく、『笑いながら受け流す』となってしまった。
1度許してしまうと、エスカレートしていった。回数も増え、様々なことでいじられ、嫌なことと嫌でないことの区別がぐちゃぐちゃになり、以前までとは違う『いじられキャラ』が出来上がった。
ここで、「なぜこの段階でいじられるのが嫌と言わなかったのか」という疑問もあるだろう。
それは、先程も言ったように、俺は“いじり”をされることに関しては何も不満はなかったのだ。しかし、この頃からは確実に今までとは違った“いじり”があった。
でも、今更いじるのをやめてと言っても、説得力が無さすぎてダメだった。
だって、今までずっといじられてきた俺が自分自身で「もういじられるのは嫌だ」なんて
意味がないと言われてもおかしくない。
そんなことを考えているうちにどんどん引き返せなくなり、また“いじめ”と違ってストレスを感じにくかったので、そのまま基準があべこべな『いじられキャラ』の立場が定着しきってしまった。
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