第2話
「詞が亡くなった。」
突然の知らせだった。高校の同級生から電話でそれだけを告げられた。
高校を卒業し俺達は別々の道へと進んだ。詞は大学へ、俺は二部のプロクラブに拾われた。プロにはなったが、回りとのレベルの違いに戸惑う日々だ。技術はもとより体力が違う。単純に弾かれて何もできなかった。
自分の無力さに打ちのめされている最中、詞の悲報を聞いた。現実に抗う気力は尽き果てた。
クラブに休暇を貰う。ただ無気力に部屋で過ごした。
「プロを止めるか。」
入団以降、何度も思っていたことを口に出してみた。
俺の才能なんてこの程度だったのだ。今週中に荷物をまとめて実家に帰ろう。
今まで何度も思った考えも今は実感が持てる。地元の会社に就職するか、それともアルバイトで食いつなぐか。今はまだそこまで考えることはできない。ただ、このまま続けて行くイメージだけは浮かんで来なかった。
ブーブーとスマホが鳴る。同級生からメッセージが届いた。通夜は明後日になったようだ。
詞の通夜に出向いた。おばさんに挨拶をし線香をあげる。
「来てくれてありがとうね。」
おばさんはそういってまたうつむく。通夜は淡々と進んでいった。
「 詞は白血病だったんだよ。」
高校時代のチームメイトはそう教えてくれた。詞は大学入学と同時に白血病なった。
「葵にだけは知らせるな。」
そう詞は言っていたらしい。
「 寂しいことを言うなよな。」
俺はそう口に出すだけで精一杯だった。
通夜は終わり後は片付けだけだ。
「葵ちゃん。ちょっといい?」
詞のおばさんが話かけてきた。
「これ、詞からの手紙。読んであげて。」
封筒には汚い字で、葵へ、と書かれていた。
「ありがとうございます。帰って読みます。」
俺は手紙を受け取り帰途についた。
寮に帰り封筒を眺める。
相変わらず汚い字だな、と改めて思う。
封筒を開けて中の手紙を取り出した。そこには便箋が1枚入っており、『走れ』という一言だけが大きく書かれていた。
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