【短編】インクと絵とキャンパスの良くある話

好きな色

僕の好きな色は黒以外だ

黒は嫌いだ全てを塗りつぶして全てを無駄にしてしまう

降り注ぐ水の音　どうやら外は雨のようだ　

学校の端　教室の隅　佇んだキャンパス

教室に響く水の音　筆は色を得る

声がぶつかり合う音　外で数十名が下校しているようだ

家の端 学校の隅 世界の円の外

教室に激しく響く水の音　

鳥の泣く音　夕焼けの空の横を走る

街の端　住宅の隅　家族の縁の外側

家に響き渡る怒声と肌がぶつかる音

降り注ぐ水の音　どうやら外は雨のようだ

学校の端　黄昏の刻　記憶の隅から顔を出す

優しい声懐かしい音　心は水を得る

物がぶつかる音　俺の靴が目の前にある

学校の端　世界の隅　心の奥底

ヒビの入る音　瞳は水を失う

セミの泣く音　赤い赤い空　横を走る

心の端　体の隅　意味のない色

水に浸かる音　赤く染まる

降り注ぐ水の音　どうやら外は雨のようだ

町の外れ　赤と青　いつもと違う道

鳴り響く高い音　僕の嫌いな悲鳴と同じ音

コツコツと響く音　どうやら外は雨のようだ

学校の端　教室の隅　佇んだキャンパス

また彼らが来る

また戻る時が来る

水が溢れる音　心が溢れる音

さぁ全て塗りつぶそうか、黒い色が広がる空

さぁ全て消し尽くそうか、黒い色が這う砂漠

泳げ泳げ黒い色よ

這えよ這えよウジのような黒よ

世界を塗りつぶしてしまおうか

僕の好きだった色

塗りつぶされていく色

塗りつぶした色

僕の好きな色は黒だ

黒は嫌なことを塗りつぶしてくれる