第6話「しまい」

幸せな日常は突如として打ち壊された。



僕はあの時、森に木の実を取りに行っていたんだ。

適当に倒した蜘蛛の肉を食べながら使えそうな木の実を取って、キンとギンが待っている場所、「巣」へと帰った。

でも、巣は酷く荒れていたんだ。


辺りには見たことも無い生き物が沢山いた。

でもその大体が蜘蛛と似た脚を持っていたから多分蜘蛛が進化した奴らなんだと思う。


でも、そんな奴らは大体が残骸になっていて、倒されていた。

そしてそれ等を倒したのは子供達だと、何故か思った。

根拠も何もないけれど、でも2人が倒したんだと僕には確信できたんだ。


しばらく辺りを探しても2人の姿は無かった。

何度も何度も2人の名前を呼んでも、返事は無かった。

不安が心を支配して、またあの時の不安がフラッシュバックした。


そう、まだ2人がずっと小さかったあの頃、アリシアに出会ったきっかけでもあり蜘蛛と初めて戦ったあの日。


あの時と同じだ。


「どこ?」

急ぎかけ出す、そして

その匂いは唐突に、強烈に漂ってきた。

風に運ばれてきたその匂いは、血。


風は、あの2人の血の匂いを運んできた。


そうか、2人は今


「ころす」





side「ギン」


ダメだった、守れなかった。

おかあさんにお願いされて巣の見張りをいつも通りしていたのに、油断なんかしていなかったのに。

蜘蛛じゃない、空を飛ぶのに蜘蛛より小さくてすばしっこく数が多いい変なのまで、見たことも無いのが出てきて押されてしまった。

数が多すぎるだけで、ぼくとキンは苦しい戦いをしいられた。


でも何とか2人で切り抜けて逃げれたはずだったのに、空から音がして。

アイツが、ぼくを襲おうとしたんだ。

巣で攻撃を受けすぎたせいで、動けなくて

それで、ぼくは、ぼくは?


あぁ、そうだ、キンが、キンが目の前に「移動」して、アイツが、キンに、キン、キン?


ぼくの腕の中には動かないキンがいた。

「あれ?

どうしたの?キン、眠るには早いよ、いっつもキンが言ってるじゃないか、寝るなら2人でって。

ねえ、へんじしてよ、キン、キン


キン?





お前か」

ぼくは、キンを刺したあの空飛ぶゴミを睨みつけた。


糸はもうとっくに壊れている。

ぼくにはもう武器は無かった。

でもそれがどうしたの?

あのゴミはぼくへとそのまるでしっぽのように付いている針を向けぼくへと突っ込んでくる。


でも、そのゴミはもう引き裂かれた。

ぼくが引き裂いた。

地面にゴミが散らばる。

ああ、どうせ何の道具にもならないカスが。

殺されてもなんの意味も無い、邪魔な残骸め。

「キィィ!」

するとまた1つゴミが突っ込んでくる。

ぼくはそのゴミを掴み、食らいついた。

バリボリと音が響き渡り、口の中に泥のような味が広がった。

「はぁ、まずいなぁ、とてもまずい、きみらなんのかちがあるの?」

まだ空にはゴミと同じ姿をしたゴミ共が空を埋め尽くすほど飛んでいた。

ブンブンブンと、耳障りな音をだしながら、ぼくを、ぼくとキンを見ていた。


「キン、すぐおわるからね、まっててね。



さて死ね、耳障りなゴミ共が」

ぼくの大切な、大切な姉妹が眠っているんだ。

キンを起こす事が許されているのはぼくかおかあさんだけなんだ。

そして

キンを殺していいのはぼくだけなんだ。

おかあさんでも、キンでも無い。

キンを殺すのは、ぼくなんだ。

そしてぼくを殺すのはキンだけなんだ。

だから邪魔をするな。

「はやく死ね、ゴミ共」

ぼくはまだ口の中に残っていた脚を地面に吐き捨てた。





side「キン」

ああ、幸せだ。


いつもぼくはギンに助けられていた。

物を作る時も、訓練する時も、蜘蛛と戦う時までも。

色んな所でギンに助けられていた。


助けられる度に不安になった。

ぼくは、ギンに迷惑ばかりかけてないか、ままに心配をかけたまま何じゃないかって。

ただギンのそばで笑ってるだけなんじゃないかって。


ギンはなんでも出来て、なんでも作り出してた。

でもぼくはというと上手く作れないしただギンが作った道具をただひたすらに作って、後ろ姿を追っているだけだった。


ぼくも、ギンを守りたかったんだ。

でも巣の時もぼくは、混乱していて上手く動けなくて、

それでギンはぼくを庇って、ケガをいつもより多くした。



ぼくは、その時改めて感じたんだ。


ぼくは役立たずだ。


ぼくは足でまといだ。


ぼくは、何も出来ないんだ。



でも、それでも最後は違った。

ぼくはギンのために死ねるんだ!

ぼくはギンの役に立てたんだ!

ぼくは、


ようやく最後に役に立てたんだ!

価値を見つけれたんだ!



なのに


なのになんでだろう?


何かが引っかかるんだ、最後に役に立てたのに。

キンに会えなくなるのは寂しいけど、でも役に立てたから



違う


嫌だ、会いたい。

ずっと一緒にいたい!

ずっと、傍にいたい!

ぼくは、ぼくは!ぼくらは!

ずっと一緒なんだ!


ぼくが死んだら!ギンは悲しむんだ!

そんなの、嫌だ!

ギンを悲しませたくない!

ギンを守りたい!

そうだ!ぼくが、ぼくが!


ギンを守るんだ!


ああもう!動け!

動くんだ!


ギンを、ギンを守れ!




「キン?」


聞きなれた声が聞こえた。

その声はすぐに何かを引き裂く音で隠れたけど、でもぼくは精一杯の大声で応えた。


「ギン!

ねえ、ちかわせて!」

「き、キン?」

「ギン、ぼくは!」

飛んできた奴らを受け止め、放り投げる。

そしてソレは別の奴らにぶつかり勢いよく吹っ飛び木にぶつかりまとまって潰れた。

「ぼくはギンを守る!

だから、ぼくは死なないしキンを死なせない!

だから!」

ギンは珍しく目を見開いた。

「ぼくと、その、こどもを」

「つくる」

「だ、だよね!」

「こんなかくにん、いらないよ。

でも

嬉しい」

そうギンは笑い、奴らへと目を向ける。

今は、片付けなければいけなかった。



うう、最後頭が真っ白になっちゃって変な事言っちゃった。

本当に、ぼくはダメだなぁ。


いつもああいうのを言うのはギンで、何だか照れちゃって言えなかったけど、でもこれからはちゃんと言おう。


これが、ギンをこれから守っていく1歩と信じて。

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異世界タビットの子作り記 邪神ちゃん @kureijyaras

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