アンジェリーナ
第51話 アンジェリーナの疑い
「最新のニュースです。
南太平洋浮島が突然崩壊した事件ですが、アメリカの調査により、未発見の浮遊都市や浮島と同様の新たな都市又は浮島があると言う可能性を示唆しました。
さらに南太平洋浮島を破壊したと思われる光線の角度や、浮遊都市が攻撃された光線角度、浮遊都市の攻撃角度から、アメリカ軍は海中からの攻撃により南太平洋浮島が破壊されたと断定しており、海中都市又は海底都市のようなものが海中にある可能性を訴えました。
一方、ヨーロッパ諸国と台湾はこれに猛反発、南太平洋浮島はアメリカ軍、中国軍、ロシア軍により破壊されたと言う説を支持。
すでにアナザーワールド委員会委員長のマグナ・フット氏が支配人スキルシリーズはコアが破壊された場合スキルを持った人は心不全により死亡することが公表されており、ヨーロッパ諸国はアメリカが人道的な配慮をしない非人道的な好戦国として非難。
しかし、説を発表したアナザーワールド委員会はアメリカの説を支持しています。
世界は今回の事件をきっかけに更なる
.
.
.
◇
「チャン、大変!!」
帰ってきた日本の我が家で俺は最高の平和を楽しんでいたら、慌ててアンジェリーナがリビングに入ってきた。
「チャン、これ見て。」
「なにこれ?」
「いいから早く!!」
アンジェリーナはそう言いながら少し大きめのタブレットを俺に手渡した。
多分ネットの記事なのだけど、英語だから読めない
だけどそのネット記事の中心にはあのエメリア艦長の写真が大きく載っている。
「なにこれ?エメリアがどうかしたの?」
「そっちはどうでもいいのよ。どうせ北太平洋浮島がアメリカに併合された話だから。」
え、それって結構ビックニュースじゃない?!
「こっちの端っこの記事をみて。」
そこに書いてあったのは、浮遊都市と北太平洋浮島の写真、そして英語でアンジェリーナの名前。記事の内容は英語だから全くわからない。
アンジェリーナは俺がなかなか理解できてないのをみて、俺が英語を読めないのを思い出したみたいだ
「私が北太平洋浮島に干渉したのがマスコミにバレたみたいで、私が北太平洋浮島スキルか浮遊都市スキルの所有者って疑われてるみたい。」
「えーーーー!!」
俺は思わず大声を上げてしまった。
こうして事件は再び起きた。
俺の家にジャック以外のギルドメンバー全員が集まった。
アンジェリーナが念のために家の中にカメラや盗聴器がないか入念に調べる。
「大丈夫よ、なにも仕掛けられてないわ。」
アンジェリーナの言葉に全員が一息をついた。
一番最初に口を開いたのは真斗だった。
「それでどうするんだ?」
「それを今から話し合うんです。わかりますか?」
志帆は相変わらず真斗への当たりが強い。
「わかっていなさそうな真斗は放っておいて、私もちょうど相談したいことがあったのです。
実はロサンゼルスダンジョンスキル持ちのスノーマンという人から、大阪ダンジョン公式ツエッタにメッセージが来ているのです。」
ちょっと待って、なにそれ。大阪ダンジョンってツエッターしてたの?
「あー、私そのツエッターよく知っています。大阪ダンジョンの臨時ダンジョンやユニークモンスターの情報がすぐに公開されてて便利ですよね。私もフォローしてますよ。」
ゆりちゃんは少し興奮気味でツエッターアカウントを見せる。アイコンがアニメキャラのデフォルメになっている。
アニメオタクだとバレたゆりちゃんはもう完全にオープンオタクになっていた。
「あの公式ツエッターアカウント。まさか志帆さんが更新しているなんて思いませんでした。」
たしかにそうかもしれないけれど、ゆりちゃんの思考は少しずれている。
「大阪ダンジョンスキルを持っているのは私ですから、大阪ダンジョン公式アカウントなんて私しか更新しないと思うのですが。」
「え?他にも“大阪ダンジョン攻略”とか“大阪ダンジョンのススメ”とか“公式:大阪ダンジョン”とかいっぱいあるよ。」
そう言いながらどんどんツエッターフォロー一覧を見せる妹。
お前もか...
「...そうなのですね。こんなにも沢山大阪ダンジョン関連のツエッターがあるとは思いませんでした。だから偽物扱いされていたのですね。少々言いがかりにムカついたので、本物証明の代わりにイベント発生予告をするようにしてたのですよ。
話を戻しますが、そのスノーマンという人から急にフォローされまして。何というか、まぁ、DMが届いたのです。問題はその内容なのですが....」
“
大阪ダンジョン支配人へ
こんにちは、初めまして。
ご存じかもしれないですが、ロサンゼルスダンジョンスキル持ちのスノーマンです。
今回DMを送ったのは、ダンジョン同士の繋がり強化のための意見交換会を開きたいからです。
つきましてはアンジェリーナ・サンディ殿と共にアメリカロサンゼルス市議会主催の親交会パーティーに出席をお願いしたく思います。
”
「...私とアンジェリーナさんが繋がっているのが、このスノーマンって人にバレています。」
流石にアンジェリーナの驚きの後なので、驚きはみんな言葉を失う程度に留まった。
「恐らく、私のもスノーマンのも、憶測の域を出ていないわね。
スノーマンの方に関しては、大阪ダンジョンと浮遊都市のつながりまでは確信しているけれど、私と浮遊都市に関しては完全にハッタリね。
どちらかと言うとそうであってほしいみたいな。
まぁ、私ではないのだけれど、だけどここでなにもしないのも疑われるし、何かしたら疑われるでどうすればいいのかというのも手詰まりなのよね。」
アンジェリーナはそう言いながら何か考え始める。
「東京ダンジョンの方に同じようなDMが届いていない...ってわかるわけないよね?」
「わかりますよ、東京ダンジョンスキルの人と繋がって入るのでそれこそ聞いてみれば教えてくれると思います。」
志帆の言葉にアンジェリーナは少し以外な顔をする。
「それって実は偽物だったりしないわよね?」
「イベント合わせとかしてるので、全権代理権限持ちとかではなければ偽物の可能性はかなり低いと思います。同じダンジョンを作ったり、モンスターの種類や出現率も合わせたりしているので。」
「それなら多分大丈夫ね。とりあえず東京ダンジョンへの探りは志帆にまかせるわ。....問題は私ね。」
アンジェリーナは再び考え込む。
「思ったけれどよ、アンジェリーナさんに何か直接メッセージとか来てないのか?」
真斗が以外にも口を挟んだ。
「別にそんなものはないわよ。精々実家の両親が家に住めなくなって、サム...弟のところに行ったくらいだわ。」
「なら、そんな考える必要ないんじゃね?それに松ちゃんが疑われているならともかく、アンジェリーナさんなら最悪スキル鑑定紙を役所に持っていて疑いを晴らせばいいし。」
「真斗にしてはいい考えじゃない、よく考えればそうね。」
「“しては”ってなんだよ。俺ってそんななににできないやつみたいなイメージがあるのか?」
真斗は少し口調を強くして言う。
「だって真斗だし」
「だって真斗ですし。」
「だって真斗だもんね。」
「だって真斗ですから。」
アンジェリーナ、志帆、神山、鈴がそれぞれに言った。
4人の女子からお馬鹿扱いされた真斗。
「真斗さん、頑張れ。」
ゆりちゃんはしっかりと別の意味で真斗にトドメを刺した。
「真斗、きっと未来はあるよ。」
「うるせぇ、松ちゃん。引きこもりに言われたら一番惨めじゃねぇか!」
「俺って引きこもり扱い?!」
何故か俺に対する真斗の強いあたりに、みんながケラケラと笑った。
解せぬ....
「あ、アンジェリーナさん。東京ダンジョンから返信きましたよ。DM来ていたみたいです。ただアンジェリーナさんが誰かわからなかったみたいで、そのまま放置していたみたいで。」
「え?もう送ったの?」
「ええ、アンジェリーナさんにいわれて速攻送りましたが何か不味かったですか?」
志帆は少し顔を傾けて疑問を表現している。
「別にそうではないけれど。志帆がこんなにも早くメッセージを送ってるとは思わなかったのよ。」
「そうですか、何か不味かったのかと思いました。...それでですね、東京ダンジョンから実は誘いがありまして、アンジェリーナって人を知っているなら合わせってほしいと。そしてできれば浮遊都市と連絡先を教えてほしいともありまして。
その...要するに東京ダンジョン側からリアルであってスキル鑑定紙でスキル証明をするので相談に乗ってほしいと。」
志帆はアンジェリーナの言葉を待つ。
「...行きましょう、ただし向こうにはパーティメンバーも一緒に連れて行くと言って。ただし私...アンジェリーナはいないと伝えて。それでお断りならこちらも会わないわ。」
志帆はアンジェリーナに言われてサササとスマホで文字を打つ。
「問題ないそうです。あちらは東京ダンジョンスキル持ち本人だけで会うそうです。」
「多分よほど追い詰められているのね。何か大きな事件でもあったのかもしれないわね。」
アンジェリーナは考えこむ。
「多分ですけれど、南太平洋浮島が破壊されたからだと思います。その....大阪ダンジョンは浮遊都市に守られているので、その...ダンジョンコア破壊の可能性がほとんどないんです。
あの事件以降支配人スキルは無敵じゃないと世界中のダンジョンスキル持ちと浮島スキル持ちは気付いたので。
目的は恐らくですが、私と浮遊都市のつながりだと思われます。」
志帆はアンジェリーナに自分の見解を言った。
「そうなると、こちらのリアルで会うメリットがないわよね。やっぱりやめた方がいいかもしれなわ。」
「すいませんアンジェリーナさん、もう会うって書いちゃいました...。」
「さーて、久しぶりに東京観光するわよー。」
アンジェリーナは志帆の言葉に少しだけ現実逃避をした。
◇
8月の終わり、俺、アンジェリーナ、志帆、真斗の4人は新大阪から新幹線に乗った。
本当はアンジェリーナが転移してくれればいいのだけれど、アンジェリーナ曰く。
「スキルはなるべく隠す方が無難なのよ。」
と言ったためである。
ただし、座席はグリーン席。緑のクローバーが描かれた車両に入るという贅沢。
飛行機の時といい、今回の新幹線といい、俺の体が贅沢を覚えたらどうするんだ。
と言いたかったけれど、新幹線の座席のリクライニングが気に入ったのでなにも考えないことにした。
「こんなの普通よ。ここでケチろうとするなんて、チャンは生粋の大阪人ね。」
とチケットを買いときに行ったアンジェリーナの言葉は正しかったのかもしれない。
....グリーン車に乗らないってそんなケチでは無いと思うんだけど。
「それでなんて俺もついてくることになってるだよ。せっかくダンジョンに潜る計画を立ててたのに。」
アンジェリーナと志帆に無理矢理連れてこられた真斗は少し不機嫌そうにいった。
「やっぱりゆりちゃんと一緒がよかったみたいね。」
「そんなことねーよ!」
アンジェリーナは真斗を揶揄う。
「真斗はわかりやすいですね。もう少し下心を隠さないとゆりちゃんに気付かれますよ。」
志帆も絶好調。
「....そもそもなんで俺なんだよ。」
不機嫌真斗に志帆が答える。
「そんなの決まってるじゃないですか、私の従兄弟だからですよ。だってやっぱり身内がいた方が安心できるじゃないですか。」
「え?」
「嘘です。そんなどうでもいい理由で真斗は誘いません。...優斗がドラゴンスキル持ちだからですよ。いざってときにアンジェリーナさん以外の脱出手段はちゃんとあった方がいいので。」
下げて持ち上げられる真斗はどう反応したらいいのかわからない言わんばかりの表情をした。
「でも、一番頼りにしているのはアンジェリーナさんですが。」
「...やっぱり帰る。」
志帆の言葉に真斗は臍を曲げた。
「うるさいわね。いいから大人しく着いて来なさい。女二人に東京に誘われて断ったらゆりちゃんに嫌われるわよ。」
全く真斗がゆりちゃんに嫌われる要素は無いのだけれど、真斗はその先帰りたいとは言わなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます