第10話 全員集合

夕方、妹の部屋にギルドメンバーが勢ぞろいしていた。

俺、妹、アンジェリーナはもちろん。

隣の家に住む俺の友人藤岡真斗、その従兄弟玉城志帆。そして妹の親友で剣道仲間の月之宮由莉、通称ポワポワゆりちゃんが集まっていた。それぞれの指には翻訳指輪がはめられている。


「ざっくり言うと、そのギルマスのアンジェリーナさんが、秘密のスキルでギルド登録するのだけれど、その秘密は明かせない。ギルド登録したあとならその秘密を教えてくれる。だから今は信じて耳栓と目隠しをしろ。そう言うことか。」

「簡単に言うとそう言うことだ。」

アンジェリーナさんの説明をまとめて内容を確認する真斗。それを肯定する俺。


ここに集まったのは、これからギルド登録をさせるためだ。


「松ちゃん。その秘密は松ちゃんは知ってるのか。」

「知ってる。」


真斗は不安らしい。それもそうだ。いきなり集まって、初顔合わせで耳栓して目隠ししろと言われればこうなる。男でも不安だ。


だがゆりちゃんはすでに承諾済み。妹が、「ゆりちゃん、黙ってアイマスクと耳栓をつけて!!」と言うと。「はぃぃぃ。」と言葉通りすぐにアイマスクと耳栓をつけた。よく妹にしつけ?されているみたいだ。もちろん今は外している。


同じ初対面のゆりちゃんが、素直なものだから真斗も不安ながらも男プライドから断ることができないようだ。


「あのー、松ちゃん。その秘密は納得がいく内容なのですか?」

「少なくとも、俺も必要な措置だと思っている。」

「なら私は松ちゃんを信用します。」

以外と素直なのは志帆だった。


隣の家だけあって、小さいことはよくお互いの家に遊びに行っていたこともあり、親戚でないものの、志帆のことは昔からよく知っている。


年下の従兄弟も納得してしまい。諦める真斗。


「ちょっと機械を触るから、途中で手を握ったり、耳栓外して指示するけど、騒ぐなよ。」

俺は一応諸注意をする。


「ええ?手を握る?」と言いながらアンジェリーナを見る真斗だが、「何、真斗意識してるの?金髪お姉さまが趣味なの?」と志帆に言われ、顔を真っ赤にしながら、「趣味じゃねーよ。」と否定する真斗に「真っ赤な真斗かーわいい。」と追い詰める志帆。


「と言うわけで、みんなちゃっちゃと耳栓とアイマスクつける。」

妹のパンパンと二回の合掌を合図にそれぞれ耳栓をしてアイマスクをつける。


ルートは簡単。まず浮遊都市空港で個人カード作成、個人カードに金貨1枚を入れ、耳栓を外して「持っているカードを前にしてひたすら進め」と指示。自動入国審査を通過。

そして全員で多目的トイレに入り、ギルマス室へ。

万が一のためにカーテンは全部閉めて場所がわからないようにする。そして全員の耳栓をとる。


「ギルドルールはギルドメンバーの秘密を漏らさないこと。これに同意できる人は手をあげて。」

新規入会3人は同時に手をあげる。

「では誘導するから。さっき渡したカードをリーダーにかざして。」

3人無事にギルド登録をする。


「もうアイマスクとってもいいわ。」

アンジェリーナさんの許しが出て、3人は先ほどとは全く違う光景に唖然とする。


「俺たちが、松ちゃんの家の玄関にいたよな。此処どこだよ。」

「ここは浮遊都市。そしてここは俺たちのギルド、最果てパーティのギルマス室。」

真斗の質問に答える俺。


「すごーい、こんなことあるんだ。」と志帆。

「ふぇーどうなってるんですかー。」とゆりちゃん。


「私のスキルは転移スキル、訪れた場所にマーカーを設置し、そのマーカーに自由に転移することができるの。この能力はダンジョン内では使えないけど、ダンジョン内では目線が届く範囲なら自在に転移できるわ。そして物質をモンスターに転移させて攻撃できる。『これは部外秘』」

アンジェリーナさんは自分のスキルを説明しつつ、秘密を縛る。


「なんだ、転移スキルか。」と一言で切る真斗に対し、

「なるほど、アンジェリーナさんが対策するのも納得です。このスキルは有用すぎる。」

志帆はすぐに価値に気づく。


アンジェリーナはさらに“これは部外秘”コマンドの仕組みを説明し、その存在も部外秘に指定する。


なお、ゆりちゃんは話はわかるが理解が追いついていない模様。


真斗は「スゲー面白い。」と反応が良いが理解はしていない模様。


志帆ちゃんは「これは使えますね。」と頭の中で色々考えている。


「ギルドの目的はパーティを組んでダンジョン攻略や探索をすること。連携で使う秘密は共有する。これもギルドルールよ。そのために秘密コマンドがあるのだから。」


そう言って始まる暴露大会。


「俺のスキルは変身スキル(ドラゴン)。変身してドラゴンになって火を拭いたり空を飛んだりできる。あと魔法攻撃はあまり効かない。変身しなくても火を吹いたり飛んだりはできるぜ。ダンジョンでは普通に剣を握ってる。俺はもう街ではバレてるから秘密とかではないぜ。」

真斗も妹同様秘密主義ではなかったな。


「わ、私のスキルは切断です。斬れるものもあれば斬れないものもあります。私も秘密にしているわけではないですが、あまりダンジョンの外では言わないで欲しいので『これは部外秘』....でお願いします。」

恥ずかしがりのゆりちゃんらしい秘密コマンドの使い方だな。


「私のスキルは魔法剣士スキル。簡単に言うと剣や刀で魔法を使うスキル。私も別に秘密とかではないよ。」

お手軽感が出てるぞ妹


「私のスキルはトレードスキル。トレードシシテムにアクセスしてダンジョン通貨でアイテムを売り買いできる能力。『これは部外秘』。」

志帆はなかなか有能なスキルを持っているようだ。


「俺の能力はポーションを作る能力。ダンジョン通貨かポイントを使って低級ポーション、中級ポーション作る事ができる。その他にも作れるポーションはあるけどそれはユニークポイントも消費しないと作れない。ユニークポイントを使って作れるポーションは高級ポーション、全快ポーション。『これは部外秘』」

俺のスキル説明に、志帆は一瞬、え?と言う顔になるがすぐに消えた。


それぞれが秘密を暴露したところで、アンジェリーナさんが「ギルドホームを案内するわ。」と言う。


「まずは今いるこの部屋。ここがギルマス室。隣の部屋は私の私室よ。私室は立ち入り禁止よ。私がこのギルドホームを管理するのを条件にここに住んでいるわ。そして私室の反対がギルド倉庫。ここはギルドメンバーが集めた素材を収納する場所。後で覗いてみて。今は何もないけどね。」

アンジェリーナはギルマス室の説明をすると、ギルドホールへの扉を開く。


相変わらずオシャンティな間取りのギルドホールに新規メンバー3人が感嘆の声を上げる。


「綺麗、ここのキッチンでお料理できますね。」

スカートのフリルを忙しく動かすゆりちゃん。


台所に立つと「とってもひろーい。」と嬉しそうだ。


真斗は大きな長テーブルに座り、「ゲームのモン○ンみたい」と言う。


確かにテーブルは天然木でできているのでそれっぽい。


志帆はトイレを除いたり、パーテーションの中のソファを見たり、女子更衣室をみたりと大忙し。

「アンジェリーナさん、こっち扉開かないんですが。」と男性更衣室兼仮眠室の扉の前で言う。」


「俺が開けてやる」と真斗が意気揚々に行きすんなりと開く扉。

「すげー、ベットとか色々ある。」

と感想を言うものの、志帆は入れないし見れない。


「ああ、男子仮眠室は女子は入れないし、見れないよ。もちろん女子仮眠室は男子は見れないし入れないから。女子の諸君。安心して利用したまえ。」

とアンジェリーナさんが自慢げに言う。


「なるほど、ちょっと中が気になりまけど、それは安心ですね。」

と志帆。

「中は女子の部屋とおんなじだよ。前見たから。」と妹が言った。


「それぞれの更衣室だけど、扉を抜けると土禁にしてるから注意ね。日本人が多いから、そこは配慮したわ。」

アンジェリーナが部屋の仕様変更を言う。


男子更衣室の引き戸を開けて部屋に入ると確かに玄関みたいに靴を脱ぐスペースと靴箱が追加されていた。


「この玄関からギルドホールまでの廊下広いですね。普通の家の廊下の4倍くらいありそうです。」

そう言いながら廊下くるりと回る志帆。


俺はギルドホールの奥にあるロッキングチェアに座りのんびりとする。


「知らない人が多いのでギルドに入るのを、考えていましたが、入って正解でした。アンジェリーナさんはブレーンで頼りになりそうですし、ゆりさんはフワフワして可愛いです。」

志帆は少し迷っていたみたいだ。そんな素振り見せなかったから気づかなかった。


「せっかくなので、このメンバーでダンジョンに行ってみたいですね。」

志帆の提案に俺以外全員が賛成した。

「お兄ちゃん、初ダンジョンだね。」


おい妹、暴露するな。


----


俺の家の玄関先に集まる一同。

真斗はカブト無しの藍色の洋フルプレート鎧に背中に先日妹が買ってきた大剣


志帆は灰色系の迷彩服でベストに2丁のオートマチック自動拳銃、大きめのナタナイフが後腰に1本。ズボンの太腿部分には拡張マガジンが左右に3本ずつ、スネにはナイフが左右に1本ずつ刺さっている。そして背中には大きいリュック。


妹は軍服男装で、腰に刀。そしてポーションバックが一つ。そして軍服に合う四角い迷彩柄のリュック


ゆりちゃんは巫女装束に長刀と普通の刀の二本差し。そして腰に和風のポーションバック


アンジェリーナは白衣で左右太腿にリボルバー拳銃。後ろ腰に大きめの物入れ。左腰には細いレイピア。そして普通のリュックサック。


俺は最果て鍛治ギルド製ジーンズに同じく最果て鍛治制の黒Tシャツとベスト。その上にトンビコート。前がけのポーション自動小銃。ポーション刀を左腰に。右腰後にポーションバック。

そして盾や防弾シールドにもなるリュックサックだ。


真斗「なんかファンタジーとか戦争ものとか、俺たちの格好って混ざってるな。」

妹「アンジェリーナさん、白衣着るんですね。あんなに邪魔だと言っていたのに。」

アン「防御性はそれなりに高いから。」

ゆり「志帆さんは2丁持ちで戦うのですね。小銃にしないのですか?」

志帆「小さい方が取り回し楽だし、銃の先にナイフを付けれる。あと属性弾の種類が豊富なのが良い。2丁持ちもするけど、普段はナタで銃はサブ。」

俺「みんなトンビコートとか着ないのかい。」

妹「電車に乗るならつけるけど、ダンジョン入り口近くで無意味につける人もう半分くらいしかいないわよ。動きにくいし、ダンジョンに入る時脱ぐの面倒だから。あと大阪ダンジョンの護符、ちゃんとつけて。」

そう言って妹に渡されたネックレスを俺は首にかけた。


「みなさん、無線機持ってきたのでつけてください。ダンジョン内では50mくらいしか繋がらないですが便利なので。」

そう言って志帆は無線機トランシーバーと何種類かのインカムを全員に渡す。そして

「この無線機はギルド費で買いました。」

と、しっかり報告もする。


俺はヘッドセット型のインカムにした。


無線機の使い方を習いつつ、ダンジョンに向かう。

流石に6人もダンジョン装備をして歩くと目立つ。


護符持っているか確認された後、ダンジョンに入る時、全員で手を繋いで入る。

ダンジョンに入る時に手を繋いで入ったらそのグループで1パーティ認識されるらしい。


初めて入るダンジョン。入った入り口は思ったよりも広かった。そして薄暗いけど、不便するほど暗くもない。


何人もの探索者が行き来していた。


「お兄ちゃん、意外でしょ?ここらへんは狩り尽くされて、ただの通路みたいになってるのよ。モンスターが出てすぐに狩られてしまうからこの大きな通りは安全なんだよ。」


なるほど。


「ここらへんの分かれ道に入ってもモンスターがいるけど、あんまり落とす素材的に美味しくないし、経験値もあまりないから、戦闘能力があまりないスキル持ちとか、戦闘が苦手な人が行くんだよ。」

妹それなりな回数行っているだけに詳しい。


「付き添い以外で低レベルの分かれ道に戦闘スキル持ちが行くと、根こそぎ狩ってしまうので、あまりいい顔されません。」

補足説明をするゆりちゃん。


「俺たちが最初に目指すのは、噴水の間。広い空間でモンスターも少なく、泊まりがけの人が水を汲みに来たりするところだな。キャンプしてる人もいるぞ。」

と真斗が言うと、


「いえ、蛇の廊下にしましょう。そこならば物陰はありつつ広いので、銃も剣も使いやすいです。」

と志帆が真斗の意見から真っ向勝負。


「私蛇の廊下の方がいいと思うな。アンデッド系も出るけど、噴水の間よりも近いし、お兄ちゃん初心者だから、あまり強い敵が出ても倒せないよ。」

と妹が志帆に賛成する。


「私はこのダンジョン初めてだからお任せするわ。」とアンジェリーナは投票拒否。


「私はアンデッド苦手なので、蛇の廊下はあまり好きではないですが、噴水の間よりは初心者向きでいいと思います。」

ゆりちゃんの投票で1:3になり、蛇の廊下に行くことに決定した。


奥に進むにつれてモンスターがたまに出るようになるが、先頭を行く真斗が一撃を入れ、後ろから志帆が銃撃を入れると大概のモンスターは倒れる。


その度に、モンスターが自動的に消え、素材になる。それをリュックに入れる。



「不思議なものね。何もしなくても解体されるなんて。」

黒狼の素材を拾いながら妹が素直な感想言う。


「金貨とかダンジョン通貨は出てこないのか?」

俺は疑問を口にだす。


「ダンジョン通貨はゴブリンとアンデッド系がよく落としますよ。もちろん今みたいになモンスターでも落とすことはありますが、あまり確率は高くないです。あとフロアボスとかを倒すと、宝箱にダンジョン通貨が多く入っていることが多いです。」

疑問に答える志帆。


「今回の目標は蛇の廊下のフロアボス攻略だな。」

真斗が確認すると、志帆が「そうです。」と肯定。


「フロアボスを倒すと入ってきたダンジョン入り口付近まで戻れるまで戻れる魔法陣みたいなものが出ます。そのまま奥に進んでもいいし、転移でダンジョン入口に帰ることもできます。大体10分くらいでポスは復活するのでそれまでに進むか帰るか決めます。ボスを倒せないと今まで歩いた道を引き返さないといけなくなるのですが、このメンバーで倒せない可能性はほぼないでしょう。」

俺のために一生懸命説明してくれる志帆。


「戻る魔法陣はあっても進むに魔法陣はないから、フロアボス倒した後迷うんだよね。」

妹の話に志帆と真斗、アンジェリーナ、ゆりちゃんは「あるある。」と同意する。


「そのまま迷ってたら、もう一回ボスが出てきて二度手間だったり。」

「それをするのは真斗だけです。」

真斗の話にツッコミを入れる志帆。


のんびりしたものだ。


しばらく歩いていると、真斗が急に止まる。

誰も進まなくなるので俺が前を歩く妹に話しかけようとしたら、口を塞がれた。


真斗がインカム使って話す。

「ここから20メートル先、中型モンスター8体。多分ミノタウルスと思う。さらに小型モンスターの赤犬が4体。ゴブリンメイジが2体。俺は先行してモンスターを引きつける。そのあと近接戦闘職な。」


「「「了解」」」

俺以外のみんなはわかってるようで、リュックを下ろしたりと戦闘体制を整える。俺もみんなに習ってリュックを下ろし、ポーション小銃にポーションを装填した。


まず最初に真斗が勢いよく飛び出す。そして敵寸前で敵全体に火炎の息を吐く。


それと同時に妹とゆりちゃんが飛び出し、妹が赤犬に、ゆりちゃんはミノタウルスに一撃を加える。


赤犬に妹の刀が触れるたびにバチバチとスパークが走り当たるたびに怯むが、4匹もいるので同時に捌くのに苦労しているようだ。


ゆりちゃんはミノタウルスに対峙すると最初の長刀を使った左斜め上に突き上げるような居合斬りでミノタウルスの太腿から顔まで一気に大きな傷を作る。


大きくのけぞり悲鳴のような鳴き声を上げてそのまま後ろに倒れるミノタウルスに、真斗が大きな大剣を傷口に突き刺す。


それを見た別のミノタウルスが両手を組んで大きな拳を作り、ハンマーのように振り下ろすが、ゆりちゃんが長刀を振り上げてそのままミノタウルスの両腕を切り飛ばす。

さらにアンジェリーナと志帆がそのミノタウルスの目や額に銃弾を当てて怯ませる。


赤犬がミノタウルスの方へ行こうとすると妹がその背中を遅い、赤犬を常に引きつける。


アンジェリーナは転移スキルでゴブリンメイジの攻撃を避けつつ、レイピアで攻撃をする。そしてたまにミノタウルスに銃弾を撃ち牽制をする。


志帆は無線機で指示を出しつつ、銃を打って敵の攻撃を妨害する。


俺はただポーション小銃を構えて、誰かが怪我した時に備えるだけだ。何もできない。


真斗「ミノ1体撃破。」

ゆり「ミノB腕消失。先にミノCから攻撃する。」

志帆「了解、こちらはミノBの牽制優先します」


真斗は腕を失ったミノタウルスの足の関節に思いっきり大剣を振る。膝カックンのようによろけるミノタウルス。


ゴブリンメイジの相手をしているアンジェリーナを襲おうとしている無傷のミノタウルスの背中に、ゆりちゃんの長刀の一撃が入る。

悲鳴と共にのけぞるミノタウルス。


そのままミノタウルスの股の下を潜りながら足を切断するゆりちゃん。そのままゴブリンメイジの方へ。アンジェリーナはゆりちゃんが股を潜ろうとしたと同時にミノタウルスの肩に転移。腰のレイピアを転移スキルでミノタウルスの頭を脳天から突き刺す。


アンジェリーナはミノタウルスが倒れきる前に赤犬の背後に転移してリボルバー銃で赤犬を撃つ。


ゆりちゃんはミノタウルスの足を切った勢いでゴブリンメイジの首を1つはねた後、もう1体は縦に下から真っ二つにする。2体のゴブリンメイジは消えてダンジョン通貨とアイテムになった。


アン「ミノC撃破。」

ゆり「メイジ2体撃破」


アンジェリーナの助けで余裕ができた妹は、赤犬の横っ腹に思いっきり刀を突き刺す。突き刺された赤犬は急に苦しむだし、口から炎を吐き、腹が膨らむ。刀を抜き去ると赤犬はそのまま倒れる。

2匹目赤犬はジャンプした腹はに突き刺さり、地面に落ちたところで動かなくなる。

3匹目は襲ってきたところ口に刀の刃先を入れ、そのまま炎を纏った刀で赤犬のお腹を切り開いた。

4匹はアンジェリーナが銃で牽制しているところ、首に刀を入れて電撃で感電させた。


最後の腕を失ったミノタウルスは地面に倒れる、胸に真斗の大剣が突き刺さり、戦闘終了。


結局何もできないまま、ただポーション小銃を構えるだけでに終わった俺。


みんな強すぎじゃないか。


「あー終わった終わった。やっぱり人数が多いとモンスター倒すのが早いな。」

真斗がミノタウルスから大剣引き抜く。


「さくらの戦い方。やっぱり見ていて怖い。内臓を内側から焼くのはいいけど、そのまま破裂しそうでヒヤヒヤするわ。」

そう言いながらミノタウルスの脳天に置きっぱなしにしたレイピアを引き抜くアンジェリーナ。


「何回か破裂させたことあるよ。今回は手加減する余裕があったから服が汚れすに済んた。」

そう言いながら笑う妹。


「あの血の雨にだけは被りたくないです。」

そう言いながら長刀を吹きながら鞘に収めるゆりちゃん。


「真斗と二人の時と違って、前に出る必要がないので楽でした。」

そう言いながら使用済みのマガジンを拾い、新しい球を詰める志帆。


5分もかからずモンスター倒しきるみんなに圧倒される俺。

「なぁ、みんな強すぎじゃね?俺何もできてなかった。」


「志帆は元々サバゲーやってたから別にして、ここにいるメンバーは全員戦闘スキル持ちだぜ。ダンジョン通ってたらできるようになる。」

真斗が大剣でミノタウルスの首を断ち切る。ミノタウルスは消え、素材になる。


「お兄さんは生産職なので戦闘ができなくても問題ないです。」

そう言いながら刀でミノタウルスの首を跳ねるゆうちゃん。ポワポワ感が出てるのに恐ろしい。


「私はチャンも何か戦う手段を持つべきと思うわ。でも最初はこんなものよ。」

そう言いながらサバイバルナイフで赤犬の首を斬ろうとするアンジェリーナ。


「お兄ちゃんも首を跳ねるの手伝ってよ。」

そう言いながら赤犬の首を斬る妹。


「な、このモンスターってもう死んでるよね。」

俺の質問に志帆が

「はい、死んでいます。ただ首をはねないと素材にならなので。」


俺はポーション刀にエリクサを装填し、ミノタウルスの首を斬った。


----


全てのモンスターの素材や魔石アイテムリュックに入れる

大きなミノタウルスも素材になれば軽い。


「お兄さん、さっきの刀ですが。切れ味いいですね。」

ゆりちゃんは剣道をしているせいか、刀がお好きらしい。

「最果て鍛治ギルドでくれた刀なんだけど。」

そう言いながら俺は腰から刀を外し、ゆうちゃんに見せる。


「おい、最果て鍛治ギルドって言ったら、いま最高峰の鍛治ギルドだぞ。なんでそんな刀持ってるんだよ。」

真斗が驚いて足が止まり、俺のほうに向かってくる。

「抜いて見せてよ。」

真斗に言われて俺はポーション刀を抜く。

黒い刃が美しく見惚れる真斗とゆりちゃん。


「ちょっと触ってみてもいいですか。」

俺は肯定する代わりに持ち手をゆうちゃんに向ける。

刀を持とうとゆりちゃんは手をのばすと、バチッと言った。ゆりちゃんは慌てて手を引っ込める。


俺はふとアルおじさんが血で何かをしたのを思い出す。

「あー、ごめん。アルおじさんっていう職人さんが所有者登録するって言ってたわ。触るだけならと思ったけど、触るのもダメなのか。鞘をつけた状態で妹が触ってたから平気だったから。鞘付きなら持てるよ。」


俺はそう言ったが、ゆうちゃんは「いえ、大丈夫です。」と言って諦めた。


「でもこの刀、使えないよ。ポーションかエリクサを使わないと切れないし、ポーションもエリクサもモンスターを回復するから。」

俺の説明に、

「だからモンスターが死んでるか確認したのですね。」

と志帆が言った。


「なぁ、そういえばアンデッドって、ポーション投げると一発で倒せるよな。」

真斗が何かひらめたようだ。


「アンデッド限定ですけど、緊急の倒し方ですね。ポーション自体が高いので滅多にしませんけど。」

と志帆。

「斬ってもアンデッドは死なないので、何度か助けられました。」

そう言って少し顔を青くするゆりちゃん。


「そのポーション刀とポーション小銃って、アンデッドに有効じゃね?しかも圧倒的に。」

真斗の言葉に俺以外の全員がうなずく。


----


蛇の廊下

アンデッドの大群。集団で襲ってくるゾンビにポーション小銃は圧倒的に火力でねじ伏せる。


ダダダダン


ダダダダン


なにこれ、楽しい。


「あー、もったいない。ポーション何本使ってるだよ。」

俺が撃つたびに真斗が呟く。


「ポーション1本金貨1枚買取だから、お兄ちゃんを止めて代わりにポーションを売るだけで金貨1枚の黒字だよ。」

と妹がいう。顔はもう諦めの表情。


「私はアンデッド苦手なので、嬉しいですが。ちょっと複雑ですね。」

ゆりちゃんは少し嬉しそう。


「まさに、ポーション生産職の特権ですね。この戦い方。経験値稼ぎならこれより効率的な戦い方はありません。」

志帆ちゃんは冷静に分析する。


「ポーション生産職でもこんな使い方しないわよ。いきなりダンジョン通貨になってくれるから戦闘の後片付けは楽でいいわ。」

呆れるアンジェリーナ。


俺は蛇の廊下のアンデッドモンスターを一掃し、フロアボスの脳天を中級ポーションで打ち抜いた。


「蛇の廊下を一人で一掃したのは間違いなく松ちゃんは最初ですね。宝箱も二つありますし。」


1つ目の宝箱は普通の宝箱。金貨やアイテムが入っていた。中身を全員のリュックに入れる。

もう一つのだから箱を開けると2本のポーションが入っていた


一本は高級ポーション。

もう一本は墨汁のような液体が入った黄緑の下地にドクロが描かれたポーションだった。


「なにこれ、毒ポーション?」


俺が触ろうとすると妹が止める。

「お兄ちゃん触っちゃダメ。割れたら危ないから。」


「松ちゃんは気付かなかったかもしれないけど、ゾンビを倒すとたまにこれを落とすんだよ。」

真斗はそう言いながら、墨汁のような色で青色下地にドクロが描かれたポーションを見せる。


「これは蛇の廊下しか出てこない毒ポーション。いくら防御しても必ずダメージをくらうから。この低級毒ポーションくらいなら、大火傷くらいで済むけど、そっちの新しい種類の毒ポーションは割れたら本当に危ないと思う。」

真斗は「絶対割るなよ」と言って低級毒ポーションを俺に渡す。


とてつもなく危ないのはわかった。だがこれならポーションシリーズ武器が生きてくるんじゃね?


そう思わずにはいれなかった。


スキルステータス開き、毒ポーション検索。購入不可になっているが、ポイント消費で購入できるようになった。ついでに中級毒ポーションも購入できるようにする。高級毒ポーションも同様に購入できるように購入権をポイントで買う。


そしてポーション小銃に低級毒ポーションセット。誰もいない壁に撃ってみるとしっかり発射された。


これは使える。


「真斗、これ使えそう。」

俺の一言に

「まさか、その毒ポーションで戦闘する気か。」

真斗が俺に聞いてきた。


「絶対俺たちに当てるなよ。あと、何か対策したいな。」


「あ、そうだ。」

何かを思いついたように妹はポーションを一本取り出し飲み干す。


「毒ポーションを私に投げてみて。」

そういう妹に素直に投げる人はいない。みんなその危険度を知っているからだ。危険度を知らないアンジェリーナも流石に人体実験はしない。


だが、あまり危険度を知らない俺は言われるがままに妹に手に持っている毒ポーションを投げた。ただし、足にだ。


毒ポーションは妹の足にかかるが、妹は平気な顔をしている。

みんなポカンと妹を見る。


「異常状態回復ポーションってダンジョン内で毒を食らった時に使うのが一般的な考えでしょ?だけど、ダンジョンで毒があるのは、モンスター以外では毒沼辺りだけ。もちろんモンスターからの毒の時にも飲むけど、毒の沼地に行く時の飲むって聞いたことあるでしょ。だから毒ポーションも毒なら異常状態回復ポーションを飲んだら効かないのじゃないかなって。」

妹の解説に


「だからって試すことないでしょ。お兄さんは初めてだからこのポーション危険性がわからないからポーション投げたけど、このポーションで何人地上送りになったか。このポーションをかぶって高級ポーション使ったの忘れた?もうちょっと慎重に行動して。」

ゆりちゃんが怒った。

「ごめんなさい。」という妹。


「お兄さんも妹にこんな危険なものを投げないでください。真斗さんが危険度が高い事説明しましたよね。たまたま実験がうまく行ったのでよかったですが、失敗したらどうするつもりだったんですか。」

「全快ポーション投げるつもりでした。」

正直にいう俺。


なにもいえないゆりちゃん。


「...とにかくあんまり危険なことはしないでください。」

「「はい」」

俺と妹は二人揃って反省ということになった。

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