第2章
第20話 報連相は大切。
暁とクレアちゃんのレベリングをしながら西の森を突破すると、僕が前回突破した時の森の出口とは違う場所に出てしまった。
「ごめんなさい……」
「すいません、お兄さん、アイさん」
その原因はレベリングの途中に見つけた色違いのフォレストボアだ。実力差に関係なく突進してくる通常のフォレストボアとは違って、色違いのフォレストボアは僕らを見るなり一目散に逃げ出した──らしい。
らしい、と伝聞調なのは僕と藍香はほぼ同じタイミングで出現した2頭のフォレストグリズリーという熊のモンスターで遊んでいたからだ。
フォレストグリズリーを処分した後、暁とクレアちゃんの姿が見当たらなかった時は本当に焦った。2人は色違いのフォレストボアを追って森の奥まで進んでしまっていたのだ。
2人は色違いのフォレストボア──フォレストホワイトボアという名前だったらしい──に追いつき倒した後、パーティチャットの機能を使ってどうにか僕らと合流した。
しかし、正規のルートからは外れてしまったようで合流した地点から西に10分ほど進んで森から脱出することができたのだ。
「いいわよ、反省もしているようだし」
「次からはパーティメンバーと別行動する時は報告、連絡、相談をしっかりとしてね。そうでないとパーティを組んでる意味が半減しちゃうから」
「「はい」」
西の森から抜けた場所から更に西にあった小高い丘を登るとソプラの街の外壁が見えてきた。丘の頂上まで登れば外壁がところどころ崩れているのが分かる。眼下には僕が前回ソプラの街へ行く時に通った街道があった。どうやら今回僕らが森から出てきた場所は正規のルートから北にズレた場所だったようだ。
「あそこがソプラの街?」
「そうだよ」
「で、あれがワイバーンが生息してる山よね?」
藍香が視線を向けたのはソプラの街の北側に数キロ離れたところにある鋭く尖った山だ。東西に尾根を伸ばしているように見えるので一概に『ソプラの街の北の山に棲むワイバーン』と言っても範囲が広すぎて見つけるのは大変かもしれない。
「ソプラの街の住民NPCの話だとね。実際に僕が確認したわけじゃないよ」
住民の嘘、もしくは勘違いという可能性もある。
「そう……ならソプラの街に着いたら真宵と私たちは別行動した方がいいかしら」
「そうだね。レベル差もあるし、何より僕は邪魔だろ?」
藍香は暁とクレアちゃんを育てたいらしい。
そうなると今の僕は邪魔になる。
ステータスを下方修正できるスキルがあれば別だけど、確認した取得リスト(習得可能なスキルのリストのこと)にはなかった。
「そうね」
「え、えっと、えと……」
「兄さん!? お姉ちゃんまで!」
「「喧嘩しないで(ください)!」」
「「してないけど?」」
「「え?」」
誤解されるよね。
藍香はレベルのことだけを2人に説明して、それで納得してもらったようだ。
ソプラの街に到着した。
相変わらず壊滅状態にあるが外壁は昨日と比べて少し補強されている。
「昨日の少年じゃないか! 救援を届けてくれたのかい!?」
昨日のオッサン兵士だ。
「はい、届けて来ました。彼女たちは救援依頼を受けた僕の仲間です」
「嬢ちゃんたち、ロクなもてなしはできないが歓迎するぞ」
「「ありがとうございます!」」
[Emergency Quest:ソプラの街を救えをクリアしました]
[Emergency Quest:ソプラの街を救え②を受注しました]
◼︎Emergency Quest:ソプラの街を救え②を受注しまひた
ソプラ街を襲うワイバーンの群れはソプラの街の北にある山脈を中心に活動しているらしい。ソプラの街が襲撃されるまでにワイバーンの数を可能な限り減らしましょう。
残り時間:175:20:11
達成報酬:なし
「真宵、どうしたの?」
「あー、うん。また強制クエストだよ。北の山に行ってワイバーン殲滅してこいってさ」
「わかったわ。2人の事は任せてちょうだい」
いつから僕らは保護者になった?
あと少しは休ませて!?
「兄さん、そ、その……今日はありがとう」
「お兄さん、またパーティ組んで下さい!」
この雰囲気で休ませては……無理だ。
「気にしなくていいよ、んじゃ行ってきます」
[パーティを離脱しました]
僕は街に入ることもなく、北の山でワイバーン狩りをすることになった。
◆◇◆◇◆◇◆◇
ここまで藍香たちがいて賑やかだったせいか静かだ。
配信して気を紛らわせようとも思ったけど、よく考えたら1日に配信できる時間が決まっていたのを思い出す。
「あ、でも課金すれば上限増やせるのか」
課金とはは現金を支払うことで様々なサービスを受けることができるシステムだ。このゲームにはガチャと呼ばれる底なし沼のようなシステムはないが、それでも『プレイヤーネームの変更』や『配信機能の拡張』、『デスペナルティの軽減』や『取得経験値の増加』などの課金することによって様々なサービスを受けることができる。
『アイ?』
『何?配信機能の拡張でもしたくなった?』
なんで分かるの!?
『まぁ……うん』
『いいわよ。ただ、私たちで共有してるアイ&ショウのアカウントを使う時は──』
『もう1人に必ず知らせること、だよね。分かってるよ』
この約束は僕らの決めたルールではなく、僕らが配信を始める時にお互いの両親との間で決めたルールの1つだ。小さな頃から暴走しがちだった藍香を止めるためだったんだろう。
『それじゃぁ私は2人で遊んでるから』
相方からの許諾を得たので、メニューから『配信機能拡張パック(2980/月額)』というアイテムを購入した。これは配信関係では2番目に高い商品で、最も高いのは年間/34800円の配信機能拡張パックだ。
「配信のタイトルどうしよっかな……」
───────────────
どうにか間に合いました。
(2020/8/23/14:41)
予約投稿の時間を19:00にしていました。
本当にすいません……
(2020/8/23/17:51追記)
第3話の改稿を行いました。
タイトルが不適切という指摘もあり変更しました。不快に思った方、申し訳ありませんでした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます