第10話 デートの約束?その裏で
いつも読んでいただきありがとうございます。
主人公の一人称を省いていましたが、改めて読み返すと読みにくいことに気がつきました。順次改稿していきます。
また日常シーンを削るため第7話の一部セリフを削除しました。
───────────
その後、ソプラの街の代表を名乗る人物から救援要請の手紙を預かった僕はアルテラの組合まで戻ってきた。
中に入ると相変わらずプレイヤーで混み合っている。
「次の方」
「はい。ソプラの街の代表をしている方からアルテラの組合長へ救援要請の手紙を預かっています」
「救援要請ですか?」
「ワイバーンの群れから連日のように襲撃を受けているそうです。既に外壁部は半壊、街の中は無事な建物を探す方が難しいほどでした」
「し、失礼しますっ!」
受付嬢は焦った様子で席を立った。
組合長に話をしに行ったようだ。
「フォレストボアの討伐報告を先にしとけば良かったかな」
それから数分もせず奥の部屋から強面のガタイのいい男性が現れた。イメージとしては昔のマンガに出てくるヤクザかマフィアだ。
「この手紙を受け取ったのは坊主か」
「僕だよ」
「あの大猪を倒したのか?」
「倒しましたよ。これで倒した証拠になりますか?」
メニューから"森暴王の大牙"を取り出して見せる。
「魔石は?」
「回収できませんでした」
「できなかった?」
「できませんでした」
何せ消し飛ばしちゃったからね……
「まぁいいだろう。救援要請は受け取った」
「救援はいつ頃出せるんですか?」
「大規模な救援ともなれば領主の判断を仰ぐ必要がある。組合からの依頼として発布されるのは早くても明日の朝になるだろう。ご苦労だった」
救援要請に関する報告を終えた僕は昨日受けたフォレストボアの討伐クエストの報告をすることにした。
「魔石が179個ですね。報酬は17900Rになります」
「ありがとうございました」
ちょうどタイミングもいい。
セットしたタイマーの時間より少し早いが切り上げよう。
「ログアウト」
◆◇◆◇◆◇◆◇
翌朝、僕はとんでもない事実に気がついた。
一昨日から夏休みが始まっていたのだ。
「ま、いっか。夏休み明けたらクラスメイトと話そう」
学校へ行く支度を取りやめてログインしようとした時、見計らったように藍香から電話が掛かってきた。
『真宵、もうログインしてる?』
「これからだよ」
『なら一緒にパーティ組まない?』
どうやら藍香は北の草原に出現する徘徊型のネームドモンスターを倒したいらしい。ネームドモンスターとは個体名で呼ばれているモンスターのことだ。
「別にいいけど……あ、手伝う代わりに一緒に行って欲しい場所があるんだ。いいかな?」
『いいわよ、それじゃアルテラの噴水広場にいるから』
「特徴は?」
『狼を連れた赤毛の軽戦士風の美女』
「りょーかい」
狼を連れた赤毛の軽戦士風の美女ねぇ……
狼を連れているということは初期スキルでテイムを取得したんだ。ということは魔術士か狩人のどちらかは選択しているはず。
藍香の性格を考えれば残る素質は戦士かな?
「ま、会えば分かるか。ログイン」
◆◇◆◇◆◇
ログインした場所は組合の中だった。
昨日や一昨日よりもプレイヤーが多い。
「すいません、ちょっといいですか?」
「なんだい?」
「昨日や一昨日より組合にいるプレイヤーが多い気がするんですけど何かあったんですか?」
話しかけたのはワカメみたいな髪型をした男性プレイヤーだ。左右の腰に剣を装備しているということは二刀流なのだろうか。雰囲気からしてカッコつけではなさそうだ。
「ワイバーンだよ」
「アルテラにも来たんですか?」
「いや、ソプラっていう街がワイバーンの群れに何度も襲われてるらしいんだ。組合からソプラの街に救援しにいくクエストが貼り出されたんだよ」
なるほど、昨日の救援要請のことか。
「西の森は抜けられそうですか?」
「それが一番の問題だね。今のところ西の森を突破したのはエリアボスを最初に倒したプレイヤーだけみたいだよ」
「…………そうですか。ありがとうございました」
ソプラの街は3日から4日に1度のペースで襲われていると兵士のオッサンは言っていた。
最後に襲われたのは一昨日、
次に襲われるのは明日か明後日だ。
このままではプレイヤーの救援は間に合わない。
「藍香には悪いけど僕の用事から優先させて貰うしかない」
僕は足早に組合の建物を後にした。
◆◇◆◇◆◇◆◇
「フレンド登録お願いすれば良かったな」
彼はワイバーンについて「アルテラにも出たんですか」と反応していた。それはアルテラ以外の場所にワイバーンが出現することを事前に知っていたということだ。それに俺はソプラの街が西の森を抜けた先にあるとは一言も言っていない。
「ノウアン先輩、どうしたんですか?」
「いや、なんでもない。それよりもミライ」
「な、何でしょうか……」
「お前のリスナーが西の森の入り口を封鎖した件だ」
「ま、待ってください。あれはリスナーが勝手に!」
こいつは相田ミライ。
俺と同じ事務所に所属するプロゲーマーだ。
プロのストリーマー(動画配信者)としても活躍している彼女が事務所にスカウトされた理由は、ほぼ間違いなく宣伝効果を期待してのものだろう。
「リスナーを制御できないないのにプロのストリーマーを名乗るのか」
「うっ……」
「昨日も他のメンバーに監督するよう頼むべきだった」
「こ、子ども扱いしないでくださいよ!」
「子ども扱いしていなかったから監督役を付けなかったんだ。その結果リスナーを制御できないプロストリーマーのせいで俺たちの看板に傷がついた。子ども扱いして欲しくないというなら大人として扱ってやる。今回の件、どう責任を取ってくれるんだ?」
「そ、それは……」
やはり子どもの相手は俺には無理だ。
馬場君にでも預けてしまおう。
「結果だ。プロゲーマーなら結果で周りを黙らせろ」
「でも私は!」
「実力が伴っていないと思うのなら実力を付けろ。馬場君に土下座でもして教えを乞うてこい」
「で、でもぉ……」
「そうだな。5日後までに西の森をソロで突破出来なければ……」
「で、できなければ?」
思った以上に恫喝が効いているようだ。
マヨイ君には悪いと思うが発破を掛けるネタになってもらおうか。
「お前をクビにしてマヨイ君をスカウトするさ。彼はお前以上に動画映えしそうな容姿をしているからな。彼なら客寄せパンダ以上にチームに貢献してくれるだろうからな」
この時、俺は知らなかった。
ミライも忘れていたようだ。
この一連のやり取りが配信されていたことを……
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