第26話「キャプテン。」

試合は後半に入り基本的なチーム力の差が出始めた。


「はぁ〜はぁ〜はぁ〜。」


(もう無理。これ以上走れないよ。)


1年でありながら、八中のセンターとパワー勝負を繰り返してきた太一の体力が限界に達した。


ピピィ〜


「太一お疲れさん!。あとはベンチで休んでてて良いぞ。」


「はぁ〜はぁ〜。すみません。あとは、お願いします。」


(さぁ〜どうすっか。俺がセンターにはいるか?。)


「俊介!。ガードのポジションに入って、リョーと2人でゲームをコントロールしてくれ。」


「了解です。」


第3クオーター3分、太一が離脱


(太一はまだ一年だ。ここまでよくやってくれたよ。)


これにより相手チームのディフェンスが変化した。


2-1-2 ゾーンディフェンス


「やっぱり、そうなるか?。」


俊介がボールをキープしながらパスの出しどころを探す。


ビッ!


俊介から僕にボールが入る。今まで同様ゴール下でボールを受けたが、


ガシッ


相手センターが手を上げ僕に当たってきた。

今までは太一とゴール下でやりあっていたがうちのチームで180cmを超えるのは僕とけんちゃんだけになった。そして僕への当たりが厳しくなる。当然の流れだ。


(これはキツいか?。いや!!。)


僕は1.2度ボールをついてゴールに向かって飛んだ。


相手センターは飛ばずに手を上げいるだけだった。


(よしっ!!。)


シュートが決まったと思った瞬間


パシッ!


タケル君が飛んできた。


(そうだった。今はゾーンの中にタケル君もいたんだ。)


その後も八中は、けんちゃんにボールが入った時だけボックスワン気味に当たって西中の外を潰し、基本的にはゾーンの形を崩さなかった。


「いやぁ〜。まいったな!。コータロー。どうすっか?。」


「まぁ〜。最初から分かってた事だけどね。」


「とりあえず第3クオーターも、残り1分だから2人で遊んでみっか?。」


「そうだよね。残り1分くらいならいいんじゃない?。」


「よしっ!!。やるか!!。」


僕は、大声で


「オールコート!!。」


と、叫んだ。


「マジか?!。」


と、リョーが言い


「まぁ〜俺は出たばっかだから平気だけど。」


と、俊介が言い


「先輩は余裕だな。」


と、豊が言い


「良かったぁ〜。僕が交代したあとで。」


と、太一が言った。


西中はマッチアップを少し変えた。


僕は、タケル君につき、けんちゃんはガードについた。


(手を上げろ!。腰を落とせ!。相手とボールが見える位置。絶対に逃がさない。)


(コータローのバッシュの音を聞き分けろ!。相手の目を見ろ!。一瞬たりとも気を緩めるな!。)


八中のガードは完全に舞い上がっていた。


(自分で行くのは無理だ!!。でも、ど、どこに出せば。)


残り1分だから出来る事もある。


ただのオールコートマンツーだが全員がガードからのパスコースを防ぐようなディフェンス。これによりガードは、けんちゃんとの1on1の様な形になる、


「マジかこいつら!。」


そう言いタケル君は動き出した。


(逃がさない!!。)


僕はタケル君のユニフォームに手が若干触れる様に張り付いた。


(このやろー。)


2階では、


「ほぉ〜。西中の4番は八中の伊東に食らいつくのか。あの身長でたいしたもんだ。」


1階席では、


「コータロー!。もっとしっかり貼っつけぇ〜。」


と、里美先輩が叫び


「ケンボー!!。とっちまえ!!。」


と、パパさんが叫び


「コータロー君!!。頑張れぇ〜!!。」


と、美和先輩が叫び


「残り10秒ぉ〜!。」


と、愛ちゃんが叫んだ。


(タケル君がスピードを変えた?!。離すもんかっ!!。)


パシッ!


けんちゃんは、パスの出しどころを完全に失った八中ガードからボールを奪った。


そして、


「速攻!!。」


と、叫んだ。


僕は、けんちゃんがボールを奪った瞬間が見えていたので誰よりも早くスタートを切っていた。


タケル君は少し遅れて僕に着いてきた。


3Pラインより少し外側で、けんちゃんからのパスが来た。


(行ける!!。)


僕は2〜3回ドリブルをつき、思いっきりジャンプした。


ダンッ


そこへ当たり前の様にタケル君が飛んできた。


「コータロー!!。上!!。」


僕はけんちゃんの声に反応して、ループ気味のボールをリング付近に出した。


タケル君は完全にタイミングを外された形になった。


トスッ


ダンッ


スポッ


リングよりもやや上でタップされたボールは、ボードに当たりリングに吸い込まれた。


「やるぅ〜!。お前ら良いコンビだな。」


そう言ったタケル君の表示は嬉しそうにも見えた。


ピピィ〜


第3クオーターが終了した。


「いやぁ〜あそこまでしないと厳しいのかぁ〜。でも、あれをやり続けるのは俺達にはまだ無理だしな。」


と、けんちゃんが言った。


「でも可能性は示せたんじゃないかな?。第4クオーターはいつもの形で勝負しよう!。」


そこへ、愛ちゃんが入ってきて


「さっきパスをしなくてもいけたんじゃないですか?。」


と、言った。続けて


「向こうの7番よりコータロー先輩の方が高く飛んでましたよ。」


「そうかなぁ〜。ブロックされる寸前だったと思うんだけどな。」


(もしかして、タケル君も疲労がではしめたのかな?。だとすると。)


「みんな、ちょっといいかな?。」


僕達は小さく円陣を組んだ。


「今日は出来る事は全部試したいと思う。さっきはオールコート。次は俺とけんちゃんがマンツーに入って、あとはゾーンで行こう!。オフェンスはけんちゃんのアイソレーションで行くからスクリーンをこまめに使う。とりあえずやってきた事を出し切ろう!。」


「はいっ!。」


その姿を見た美和は、


「キャプテンらしくなったね。」


と、つぶやいた。


第4クオーターは両チームのエースが魅せる。













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