第25話「大活躍。」

こうして西中対八中の試合が始まった。


「礼っ!!。」


「しゃ〜っす!!。」


挨拶が終わると、けんちゃんが僕に寄ってきて


「たまには、コータローが飛んでみろよ。そして思いっきり前にスパイクしてみろ!。」


と、言った。


(まぁ〜そうだよな。うちのチームで1番デカいの俺だし。)


僕は、


「了解!。」


と、答えた。


僕は、センターサークルに入った。


ピッ!


審判がボールをトスした瞬間、僕はボール目掛けてジャンプした。


「フンガァ〜。」


僕は余計な一言を発し、ボールが最高点から落下した直後、思いっきりボールを前方へ叩いた。


思いっきり叩かれたボールは誰もいない相手陣内へ飛んで行った。


だが作戦通りと言わんばかりに、


「ナイスパス!。」


と、けんちゃんが言いボールに追いついた。


相手チームは虚をつかれていた。


そして、けんちゃんはボールを2、3回つくと


「くらえっ!!。」


と、一言叫び高く飛んだ。


そして、


ガツっ!!


ドンッ!!


惜しくもボールはリングの淵に当たりボードで跳ねた。


けんちゃんは僕と同じく余計な一言を言って、まだ一度も成功した事のないワンハンドダンクにいった。


ボールは大きく跳ね返り八中のタケル君が拾った。


タケル君は、ニコっと笑い


「こいつら、おもしれぇ〜。」


(フンガァ〜!とか、くらえっ!とか、スラダンかっ!。)


と言って、ドリブルで突っ込んできた。


僕はとっさにタケル君のマークについた。


タケル君は3ポイントライン手前でドリブルをゆるめた。


そこへけんちゃんが戻って来て、


「わりぃ〜わりぃ〜!。調子に乗ったわ。」


と、僕に謝った。


しかし僕はタケル君のマークに必死で、それどころではなかった。


(この相手はヤバイ!。一瞬でも気を抜いたら一発でやられる。)


そんな僕を見て、


「コータロー君!。昔、翔先輩に言われた事を思い出して!。」


と、美和先輩が叫んだ。


僕は、思わず美和先輩の声がした方に視線を向けてしまった。


次の瞬間、僕の横をタケル君が通り過ぎた。


「こっち向くなバカ!。」


美和先輩は、オデコを触りながらそう言った。


スパッ


タケル君のレイアップが決まった。


そこへ愛ちゃんが、


「コータロー先輩!。よそ見してる暇があるなら、ちゃんとディフェンスしなさい!。」


と、叫んだ。


(いやぁ〜。美和先輩の声につられつて、ついつい見てしまった。)


僕は、ゴメンのジェスチャーをして謝った。


「コータロー!。気を取り直して行くぞ!。」


と、けんちゃんが言った。


僕達は、いつものパターンで攻めに行こうとした。しかし八中は僕達の攻撃パターンを研究しつくしていていた。


八中のディフェンスは変則的なボックスワンで、1-3-1の様に見えた。基本的にけんちゃんにはワンマークがつき、僕がハイポに陣取ろうとする時だけディフェンスがディナイでついてきた。


(さすがは冬の大会の優勝校だ。僕達がやられて嫌な事をきちんとやってくる。)


僕がそう思っていると、けんちゃんが一瞬ディフェンスを振り切りパスを要求した。


リョーは一回ドライブを仕掛けるフリをして3Pラインで待つけんちゃんにパスを出した。


パスを受けた瞬間、けんちゃんはクイックリリースでシュートを放った。


シュートは綺麗な放物線を描き、


スパッ!


リングのど真中を射抜いた。


(さすがけんちゃん!!。いきなり練習の成果が出た。)


けんちゃんはダンクの練習もしていたが、実は1番練習に時間を割いていたのが3Pシュートだった。1年の時に翔先輩を見ていて気づいたらしい。


「ほぉ〜。西中の7番は外もあるのか?。こりぁ〜面白くなりそうだ。」


と、2階で見ていた男性が言った。


その後、第一クオーターは両チームのエースが活躍して、オフェンシブな試合展開となっていた。


僕はタケル君を止められないまでも懸命に彼の弱点を探していた。美和先輩が試合開始直後に叫んでくれた言葉通りに。


第1クオーターが終了した。


僕はいつも通りジョギングでインターバルをとりチームの輪に入った。


「とりあえず、第2クオーターも今のかたちで行ってみよう!。」


と、僕は言った。


そして第2クオーターが始まり、


??


今度は八中が、けんちゃんに対してオールコートでワンマークをつけてきた。相手はタケル君だった。


けんちゃんは目を輝かせながら、


「上等!。」


と、言った。


僕も攻撃パターンを変えハイポに陣を取らず、少し外に出た。


そしてゾーンディフェンスの相手にたいして、僕はセオリー通り3Pよりやや内側からミドルのジャンプシュートを放った。


まだまだ確率が低く得意と言える程ではなかったが、僕もこのシュートの練習を積み重ねてきた。


打った瞬間、


(やべっ!!。ちょっと力んで短すぎたか。)


そう思い、すぐさまリバウンドに向かった。


ガンッ!


案の定、ボールはリング手前に当たり大きく跳ねた。


そこへ真っ先に飛び込んだのは、けんちゃんとタケル君、そして僕だった。


ちょうど、僕とけんちゃんがタケル君を挟むかたちになり、


チョンッ


後ろから僕がボールをタップした。


ボールは再度リングに向かい、


ガガガッ


ストンッ


と、リングに収まった。


タケル君は、


「ふぅ〜。うまく7番に飛ぶのをおさえられちまったか。」


と、言いオフェンスに入った。


(そっか!。けんちゃんがうまくやってくれてたのか。)


僕は、けんちゃんに対して


「助かったよ!。」


と、声をかけた。それに対して


「こっちこそ助かったぜ!。俺も抑えるので精一杯だったからな!。」


と言い、続けて


「でも、逆にタケルさえ抑えりゃ〜何とかなるってこったな。コータローもいるし。」


と、言った。


(僕は今のところ大して役にはたってないと思うんだけどなぁ〜。)


相手チームにはガタイの良いセンターと小柄ながらスピードのあるガードがいた。


しかし、うちのガードとセンターも似たようなタイプで比較的対等にやり合えていた。


(僕がタケル君さえおさえられれば八中に勝てるかもしれない!。)


そう思うとワクワクしてきた。


第2クオーターは比較的ディフェンシブな展開となったが、勝負所のタケル君は他との違いを見せつける様な活躍をしていた。


第2クオーター終了間際、


僕は、ある事に気付いた。


(あれ??。結構ロースコアな割に僕の得点が多い気がする。なんでだろぉ〜?。)


実はタケルが池内をマンツーマンで守っているため、僕の高さに対抗出来るのは相手センターだけだった。そのセンターも太一と良い勝負をする事で、僕に対するマッチアップがミスマッチになっていた。


(よしッ!!。)


「へいっ!!。」


僕は、太一とは逆のローポストにポジションを取りパスを要求した。


リョー、豊と渡ったボールが僕に回ってきた。


僕はボールを受け取ると、振り向きざまに思いっきりジャンプしてゴール下のシュートを放った。


スポッ


ボールはあっさりとリングをくぐった。


(やっぱりそうだ。僕が思いっきりジャンプするだけで相手はボールに手が届かないんだ!。)


僕は、そう確信した。


そして第2クオーターは僕のミスマッチを利用したゴール下が面白いように決まり始めリードを奪って終了した。


「キャーキャー!。コータロー先輩、大活躍じゃないですか!。」


と、愛ちゃんが寄って来た。


「いやいや。みんながマッチアップの相手をしっかり抑えてくれてるから、何とかなってるだけだよ。」


幸太郎のこの言葉は正しかった。


後半に入り八中が本領を発揮しだす。








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