第24話「邪魔モノ。」

毎日指先の感覚と握力を鍛える事でもう一つの変化が生まれていた。


それはドリブルだった。今までよりも手に吸い付く感じがわかった。


けんちゃんの場合は元々すごかったが、さらに磨きがかかりチーム内の1on1で、けんちゃんを止められる者はいなくなっていた。


僕はと言うと、


『デカい割にドリブルが上手い』


程度だった。


だが、僕の身長は185cm。中学バスケではこれだけでも十分な武器になる。その上、ドリブルが上手いとなれば、それだけで相手チームにとっては嫌な存在になった。


そして僕達の本当の武器は、


(よしっ!!。けんちゃんがパスコースを完全に消したぞ。あとは僕はがマークさえ外されなけばいける。)


月に何度か行われた練習試合でも僕達のディフェンスは完璧に機能していた。


エースを抑え、パスの出し手を抑える。これが西中が得意とするパターン。


攻撃面に関しては、リョーがガードとしてゲームをコントロール。


僕のポストプレーから、けんちゃんが決める形がメインとなっていた。


そして試合前のアップで、恒例となりつつある僕達2人のなんちゃってダンクだった。


ボールはもちろんバスケットボールを使い、思いっきりリングの淵にあたるだけ。まだまだ実践式のダンクは未完成だったが、僕達2人が勢いよくかましていたので、相手チームは


(もしかしてこいつらダンク出来るのか?。)


と、思ったらしい。そして無駄に


『西中にヤバイ2人がいる。』


と、噂が広まった。それを聞いた他校は西中に対して練習試合を申し込んで来ていた。


土日はもちろん、平日でさえ練習試合が行われた。これらの出来により、池内&大泉の名はさらに広まる事になった。


ある日の練習試合。体育館2階の通路部分にはいつもより沢山の人がいたので、僕は保護者でも見にきているのかと思っていた。


「おぉ〜!!。今日はいつにも増して観客が多いな!。」


と、けんちゃんが言った。


すると、


「みんな、先輩達を見にきてるんですよ。」


と、リョーが言い


「すごいっすね!。」


と、俊介が言い


「今日もかましますかぁ〜。」


と、豊が言い


「緊張して、お腹が空いてきた。」


と、太一が言った。


(あれ?。いつもより1人多かったな・・・。)


「よぉ〜し!!。アップ始めるぞ!!。」


「はいっ!!。」


僕の掛け声と共に西中はランニングシュートを始めた。


次の瞬間、


ドカッ!!


湧き上がる館内。


「すげぇ〜!!。八中の7番、ワンハンドダンクしたぞ!!。」


「やっぱ、今年も八中が優勝か?!。」


八中・・・八幡中学校。冬の大会での優勝校


八中エース7番、


3年

伊東 健(いとう たける)

身長 187cm

PF

趣味 読書


同世代でNO1の呼び声が高い選手だ。


「やっぱやるなぁ〜。」


と、けんちゃんが言い


「あそこまで行くと、本当の天才だよね!。」


と、僕は言った。


そして恒例の西中ダンクっぽいショー。


「コータロー!。行くぜ!。」


と言い、けんちゃんが走り出した。


次の瞬間、


スカッ!!


けんちゃんのリングをかすめた両手ダンクが決まった。


「うぉ〜!!。西中の7番もダンクをかましたぞ!。ちょっとリングをこすったけど今日は決まったぞ!。」


(やるなぁ〜!。次は僕の番だ!。)


「よしっ!!。」


僕はパスを出し走り出した。


・・・


・・・


パスを受けたのは、先程ダンクを決めたけんちゃんだった。


「コータロー!!。跳べ!!。」


と言い、リング付近にフワッとボールを投げた。


(おぉ〜い!。けんちゃん!。何してくれてるんだよぉ〜。)


と、僕は一瞬思ったが、


「行くぜっ!!。」


と、意味のわからない言葉を発して大きく飛んだ。


ボールは僕が跳ぶタイミングに合わせてリングの上に舞った。


(ちょっと高いけど、この角度なら。)


と、僕は思い、思いっきり右手を振り切った。


スカッ!!


ボールは見事にリングを射抜いた。


が、次の瞬間。館内は大爆笑に包まれた。


「あははははぁ〜。なんだよ西中の10番。思いっきりスパイクしたぞ!!。」


僕はボールを手で持つ事が出来ずに、バレーのスパイクをする様な形でシュートを決めた。


ここで、ダンクが出来ていればアリウープだったが、今のは何と呼べば良いのか誰もわからなかった。


僕は、


「メテオジャム!!。」


と叫んだ。(黒子のバスケでカガミがやるやつ。)


それを見てたマネージャーの愛ちゃんは、


「キャァ〜!!。コータロー先輩。マジヤバっす。」


と、大声で言った。


その言葉に対して、2階で見ていた男性が、


「いいのがそろってるじゃねぇ〜か。」


と、言った。


試合開始直前。加藤ファミリーが体育館に入ってきた。


「ふぅ〜。間に合った。」


と、里美先輩が言い


「たまには成長してるかどうか確認しなきゃな!。」


と、パパさんが言い


「もぉ〜!!。おねえ〜ちゃんとパパの準備が遅いからギリギリになっちゃったじゃない!!。」


と、美和先輩が怒り気味に言った。


「ちわ〜っす!!。」


加藤ファミリーに気付いた西中のみんなは一斉に挨拶をした。


そんな中で、


「邪魔モノが来た。」


と、愛ちゃんが小声で呟いた。


「それでは試合を始めます!。」


西中、八中の選手がセンターサークルに集合した。


美和先輩は、僕に対して


『がんばれっ!!。』


と、拳を突き出した。


その拳に対して、僕はちょこんと拳を当てた。


そんな僕達2人の姿を見た愛ちゃんは、


「コータロー先輩!。がんばれぇ〜。」


と、投げキッスを飛ばしまくっていた。















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