第23話「ムカつくんだけど。」
試合でダンクをしたいと言う僕の願いを叶えるために、美和先輩達が作ってくれたトレーニングメニューを僕は必死にこなし続けた。
その中でも握力と指先の感覚を鍛える為のトレーニングに時間を多く使った。正確に言うと、暇な時はバスケットボールを指先で上に弾いたり、授業中は軟式のテニスボールを指先だけで握ったりしていた。
(ダンクをする為には、ただ高くジャンプするだけじゃなくて、正確なボールコントロールが出来る様にならなきゃいけないって書いてあったけど、直ぐに効果が分からないから、何かが出来る様になってるって言う実感がないなぁ〜。)
そして、ここにもう1人
「コータローは手がデッカくてうらやましいぜ。俺なんてマツヤにを塗りまくってやっとボールがもてるだけなのによ。」
けんちゃんは指先で、ボールを弾きながら言った。
僕は、ボールを片手で持つくらいなら出来ていた。ただ飛んだ状態でバスケボールを持ち続けるまでにはいたらなかった。
「ワンハンドダンクって色々な要素が揃わないと出来なさそうだね。」
それからも僕達は暇さえあればボールを触ったりし続けた。
ある日の部活終わりに、
「コータロー!。ちょっと遊ばねぇ〜か?。」
と、けんちゃんが声を掛けてきた。
「何すんの?。」
「まずは、これだ。」
と、バレーボールを見せてきた。
僕は一瞬意味がわからなかったが、けんちゃんがボールを持って走り出しリング目掛けてダンクをしようとしたのを見て、
(なるほど!!。バスケットボールより小さいバレーボールならボールを持つ事も飛ぶ高さも少しは優しくなるのか!。)
「よしっ!!。けんちゃん。軽く遊んで行こう。」
僕はバレーボールを握ってみた。
(確かにこれなら飛ぶことだけに意識を集中できるぞ。)
僕は、バレーボールを持って走り出した。
(床を強く蹴る事だけに意識を集中して。)
ダンッ!!
フワッ・・・
(おぉ〜!!。)
今までよりも高く飛んだ事に驚いた僕はリングを見るのを完全に忘れていた。
ドタドタドタァ〜
バンッ!!
僕は飛んだ勢いのまま着地して、ゴール後ろの壁に突っ込んでしまった。
それを見てたけんちゃんが、
「おいっ!!。大丈夫か?。」
と、興奮気味に言ってきた。
「大丈夫大丈夫。ちょっとリングを見るのを忘れちゃって。」
と言う僕に対して、
「今の絶対にいけてたろぉ〜!!。もういっちょ行ってみろよ。」
そう言った。
僕はスリーポイントラインよりも少し後ろからスタートを切った。
(ボールをしっかり持って、リングをよく見ながら、床を強く蹴る。)
ダンッ!!
フワッ
幸太郎は先程同様ボールを持った状態で高く舞い上がる、
そして一言、
「リングの真ん中に、叩きつける。」
スカッ!!
バレーボールはリングの真ん中を綺麗に通過したが、迫力はゼロ。
(やったぁ〜!!。出来た!!。)
「やったな!!。まずは第一段階クリアじゃぬぇ〜か!!。俺も負けてらんねぇ〜ぜ。)
これが、僕が初めて決めた
『なんちゃってダンク』
と、なった。
そこへ、愛ちゃんが走り寄ってきた。
「コータロー先輩!。凄いじゃないですか!。今のはダンクってヤツでしょ。」
「まぁ〜正確には、バスケットボールじゃないし、ドリブルもしてないから、なんちゃってダンクだけどね。」
「でも中学生で出来る人なんて、ほとんどいないでしょ?。やっぱ!こ〜ちゃんはすごいな。」
(こ〜ちゃんになってるし・・・。)
「さぁ〜俺も負けてらんねぇ〜ぜ!。」
けんちゃんはそう言うと何度もダンクの練習をした。しかし、あと数センチボールがリングを越えず失敗していた。だが確実にジャンプ力は上がっていた。
「クソッ!!。あとちょっとの所でボールが手から離れちまうぜ。何か良い方法はねぇ〜かな。」
確かにけんちゃんの場合、手のひら半分から上はリングを越えていた。
僕は、
「両手で持ってやってみれば?。正確に言えば両方の指先でかな。手のひら半分はリングを越えてるから上手くいけばできるんじゃない??」
けんちゃんはボールを左右の手で持ちながら、ニコっと笑った。
そしてバスケットボールに持ち替えた。
「行くぜっ!!。」
けんちゃんは両手でボールを持って走り出した。
リング手前で高くジャンプ!
(リングの真ん中に叩きつける。)
ガシッ!!
あと1cmのところでボールがリングのフチを擦った。
しかし両手でボールを持っていたけんちゃんは、
「気合だぁ〜。」
と、ボールをリングに押し込んだ。
ガサッ!
NBAやアニメの様なボースハンドダンクではなかったが、けんちゃんは嬉しそうに飛び跳ねた!。
「どぉ〜だ!。見たか!!。なんちゃってボースハンドダンクだぜ!。」
こうして僕達は部活終了後のダンク遊びで少しずつ成果を出したのであった。
帰り際、
「やっぱり2人は仲がいいね!。最近ずっと一緒だもん。」
そう言う愛ちゃんに対して、
「俺たちはあと2ヶ月で引退だからね。」
僕がそう言うと、
「えぇ〜!。こ〜ちゃん、あと2ヶ月でバスケ部引退なのぉ〜?。知らなかったぁ〜。じゃぁ〜私も2ヶ月でバスケ部やめよぉ〜っと。」
(はぁ〜。わがまま少女め。)
「そぉ〜言えば、コータローってバスケ推薦の話し来なかったか?。俺は何校か来たぜ。」
「俺にバスケ推薦なんて来るわけないじゃん。」
僕は、そう答えたが実は5つの高校から推薦の話しが来ていた。
「こ〜ちゃんなら大丈夫だよぉ〜。夏の大会が終わったら色んな高校で取り合いになるんだからぁ〜。私と美和先輩みたいに。」
と、愛ちゃんがニコニコしながら言い、腕を組んできた。
「はぁ〜。」
僕は小さくため息をついた。それを見た愛ちゃんは、
「あぁ〜!。私と腕を組むだけでため息が出るなんて、ひどくない?。」
「別に愛ちゃんにため息をついたわけじゃないよ!。ちょっと考え事をしてただけ。」
「それはそれでムカつくんだけど!!。せっかく腕組んであるいてるんだから、ちゃんとあいの事を考えなさい!!。」
「わかったわかった。悪かったよ。」
「そもそもお前ら、付き合ってもねぇ〜だろ。」
と、けんちゃんが突っ込んだ。
「うるさい!?ケンボーは黙ってて!。」
愛ちゃんのかえしに対して、けんちゃんはヤレヤレと言うリアクションをした。
結局、帰る途中愛ちゃんはずっと腕を組んで離してくれなかった。
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