第20話「こうちゃん部長。」

幸太郎、3年の春。


「にしちゅ〜ファイ!。オッ!。」


体育館では男バスと女バスの合同練習兼新入生部活見学が行われていた。


「よぉ〜し!!。集合ぉ〜!!。」


僕は、3年が引退してから部長となった。


「今日から新入生の部活見学が始まるから、みんなしっかりやってね!!。それじゃ〜いつも通りアップしよう。」


練習内容は週に1回通っている美和先輩の家(ジム)で作っている。そこには毎回、美和先輩、里美先輩、パパさん、けんちゃんが参加していた。


「コータローはだいぶ身長が伸びたね!。いまどのくらいあるの?。」


と、里美先輩が聞いてきた。


僕は、


「185cmですね。」


と、答えた。


「ちなみに、俺も180cmな!。」


と、けんちゃんも誇らしげに言った。


「良いなぁ〜2人とも。私なんて153cmで止まっちゃったよぉ〜。」


と、美和先輩も続けて言った。


(美和先輩は小柄な方が可愛らしくて良いですよ。)


美和は中学の頃よりも髪を伸ばし、ポニーテールにしていた。もちろん高校でもバスケを続けている。


そこへパパさんが割って入り、


「それにしても、コータローもケンも少しは有名になって来たんじゃねぇ〜か?。」


と、聞いてきた。


僕達は冬の大会で準決勝まで進む事が出来た。その大会で僕とけんちゃんは少し活躍した。正確に言うと、けんちゃんが大活躍で、僕はディフェンスだけに集中した結果、周りから評価されていたらしい。


「僕の、このスタイルは里美先輩と美和先輩が考えてくれたものです!。感謝しても感謝しきれません。運動音痴の僕がここまで出来る様になるなんて・・・。」


僕は少し涙ぐみながら、そう言った。


「何回も言ってきた事だけど、もぉ〜一回言っとくぞ。お前は運動音痴なんじゃなくて、オタクだったから運動をやってなかっただけな!。」


と、けんちゃんが言った。


周りは笑いながら、


「でもマンガオタクのお陰でバスケの知識はあるし、妙にスケールが大きい事を言ったりするわよね。」


と、里美先輩が言い


「確かに、そう言うところがあるかも?。」


と、美和先輩が言い


「口だけなら誰でも何とでも言えるんだよ!。」


と、パパさんが言った。


「とりあえず、これが私達が考えた2人の個人練のメニューね。」


加藤一家は完全に僕達2人のアドバイザーになっていた


「え〜っと。俺はフィジカルトレーニング中心かぁ〜。あとはぁ〜。ふむふむ。」


けんちゃんはトレーニング内容を確認しながらニコニコしていた。


僕は家に帰ってきて、僕専用のトレーニング内容を見た。


そこには2つの課題が書かれていた。


[ジャンプ力強化]


[シュート力強化]


幸太郎の場合、ディフェンスでは役に立つが、オフェンスになると速攻かゴール下のシュートくらいしか得点につながる事はなかった。


(ふむふむ。ジャンプ力に関しては美和先輩のジムでやらせてもらう方が良かな。シュートに関しては毎朝のトレーニングメニューに入れよう。)


だが中学で身長185cmと言うのは、それだけで相手チームにとっては脅威になっている事に幸太郎はまだ気づいていなかった。


「よぉ〜し!!。今日はこの辺にしてアップしよう!!。」


幸太郎の声に反応する様に部員達は、


「はいっ!!。」


と、返事をした。


「それじゃ〜けんちゃんもお疲れ様!。」


僕は片付けの指示を出し部室に戻ろうとした。


その時、


「こーちゃん!!。」


と、僕を呼び止める声がした。


僕が振り返ると、そこには2つ年下で近所に住む秋山愛香がいた。


「あれ?。愛ちゃんじゃん。どうしたの?。」


と、僕は聞いた。


愛ちゃんは、


「何か、こーちゃんがバスケ部の部長をやってるって聞いたから見にきたんだ!。」


と、言った。


「そうなんだぁ〜。全然気付かなかったよ!。」


「思ったより、ちゃんと部長やってんじゃん。」


「まぁ〜ね。思ったよりは余計だけど。」


愛ちゃんは笑いながら、


「あははぁ〜。私、バスケ部に入ろうかなぁ〜。」


と、言った、


「おっ!!。良いじゃん!!。愛ちゃんは身長も高いしバスケに向いてるよ。


「ぶぶぅ〜。」


愛ちゃんは、バッテンの仕草をして


「私が入るのは男バスでぇ〜す!。」


と、言った。


「男バスって。マネージャーにでもなるつもり?。」


「そうだけど何か問題ある?。」


「いや・・・。別にないけど。」


「じゃぁ〜決まりね!!。明日から宜しくお願いします。こうちゃん部長。」


と、微笑みながら愛ちゃんは言った。


秋山愛香は小学生の頃から幸太郎に惚れていた。


オタクの幸太郎は、そんな事に全く興味が無い世界で生きていたので愛香の気持ちには気付いていなかった。



























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