第19話「なんちゃって。」

3年生との親善試合と言う名の引退試合は続いていた。


僕はマークマンを翔先輩から慎吾先輩に変更していた。


最初は以前対戦した時の様にディナイで、ガードと慎吾先輩のパスコースを消す様にディフェンスをしていたが、裏を取られたりスクリーンを使われる事によって僕のディフェンスは意味をなさなくなっていた。


そこへ、


「コータロー!。今までせっかく鍛えてきたのは何の為だ?。そろそろインサイドでセンターとしてのプレイをやってみろ!。」


と、慎吾先輩からゲキが飛んだ。


「分かりました!!。」


と、僕は返事をしてディナイをやめた。


ゴール下でポジションを取ろうとする慎吾先輩に対して、真っ向からパワー勝負を挑んだ。


次の瞬間、


ドンっ!!


と、僕は尻餅をついた。


ピピィ〜!


「オフェンスファール。」


結果としては、慎吾先輩のファールとなったが、


「コータロー!!自分より体格に勝る相手に挑むときは重心をもっと低く構えろ。腰が浮いた状態じぁ〜絶対にパワー負けしちまう。」


慎吾先輩は、僕にそうアドバイスをした。


(そっかぁ〜。相手によって色々変えて対応しなきゃいけないのか。)


そして、リバウンド勝負の際には


「俺がいなくなったら、このチームで1番デカイのはお前だ!!。お前がリバウンドをとれる様にならなきゃ試合にならん。明日からはリバウンドの練習もトレーニングメニューに入れとけ!!。」


と、教えてくれた。


そして、僕が最後にマンツーで着いたのは里美先輩だった。


ドリブル、パス、シュート。どれを取っても男子に引けを取らなかった。


「最後は、里美先輩!。宜しくお願いします!!。」


と、僕は言った。


それに対して里美先輩は、


「はぁ〜。」


と、ため息をついた。


その数秒後、


ピピィ〜。


「試合終了ぉ〜!!。」


と、審判が告げた。


次の瞬間、


「アンタはノロマか!?。ノロマな亀なのか??。何が宜しくよ!!。時間をちゃんと見なさい!。」


と、僕のオデコをつっつきながはわめき散らした。


「すっ、すみません。」


と、僕は必死に誤ったが里美先輩の怒りがしずまる事はなく、


今度は、ヘッドロックで僕を締め付けた。


「いててててぇ〜?。あれ?。痛くないぞ!。」


里美はヘッドロックをするフリをしながら、幸太郎に言った。


「最初にあんたを見つけたのは私だったんだけどなぁ〜。可愛い妹があんたに惚れたとか言い出したからゆずっちゃったけどね。」


里美先輩は、僕にだけ聞こえる様な小さい声で言った。


「これからも、バスケ部と美和をよろしくね!。」


そう言った里美先輩の顔を見ると、涙と笑顔で溢れかえっていた。


僕も満面の笑みで、


「精一杯頑張ります。」


と、返した。


その時だった。


翔先輩が、


「おぉ〜っ!!。コータローのヤツまたにやけてるぞ!!。」


と、ちゃかした。


それを聞いた里美先輩は、


「このやろぉ〜!。絶対にゆるさぁ〜ん!!。」


と、ヘッドロックの力をマックスに強めた。


僕は何だか痛みと嬉しさで涙が出てきた。


しばらくして、


「それじゃ〜私達3年はこれで引退になるけど、みんな今までありかどう!!。」


と、里美先輩が言った。


続けて輝先輩が、


「俺はバスケ推薦の話が来てるから引退後も練習には顔を出すからよろしくな!。」


と、言い


続けて翔先輩が


「俺はバスケ推薦が決まってるから引退後も練習には顔を出すからよろしくな!。」


と、言い


続けて慎吾先輩が


「俺はダイエットの為に引退後も練習には顔を出すからよろしくな!。」


と、言った。


そして最後に里美先輩が、


「それじゃ〜最後に、せぇ〜の!!。」


と、掛け声をかけ、3年生は一斉に


「ありがとうございました!!。」


と言い、深々とお辞儀をした。


僕達下級生は全員で拍手をした。


その日の夜、僕は思い出に浸っていた。そして里美先輩の言葉を思い出していた。


(最初に僕を見つけたのが里美先輩で、美和先輩が僕に惚れたとか言い出したから里美先輩は僕を美和先輩にゆずって諦めたって事かぁ〜。でもそう考えると、里美先輩は僕の事がずっと好きだった事になるんだなぁ〜。)


僕がそんな事を考えていると、美和先輩から電話がかかってきた。

 

「もしもぉ〜し。コータロー君、今大丈夫?。」


「もちろん大丈夫マックスです。」


「ちょっと聞きたい事があるんだけど良いかなぁ〜。」


美和先輩は少し低めのトーンでそう言った。


(何だろぉ〜聞きたい事って?。)


「良いですよ。」


と、僕は答えた。


そうすると美和先輩は、


「今日おねぇ〜ちゃんに押さえ込まれてた時って嬉しかった??。」


もの凄い質問の内容に対して、僕は慌てて


「いやっ!!あれは・・・。ただ柔らかくて良い匂いがしたのでつい!!。」


と、思った事をそのまま口に出してしまった。


「へぇ〜。柔らかくて良い匂いがしたんだぁ〜。」


と、美和先輩が不満気味に返した。


その返しに、僕は完全にテンパった。


「いやっ!!。柔らかいと言うか気持ちよくて・・・。違う違う!!。あのお相手が美和先輩だったら尚更良かったと言うか・・・。是非次回は美和先輩にお願いしたいと言うか。」


幸太郎が言っている事は、はちゃめちゃだったが美和は、


「なんちゃってぇ〜!!。ちょっとからかってみただけだよぉ〜。」


と、言った。


その後、美和は普通に今後のバスケについて話をしているつもりだったが、気が動転していた幸太郎は意味の分からない発言を繰り返したと言う。


3年が引退し、新たなメンバーで始動する西中バスケ部。その後もチームの為に切磋琢磨する幸太郎と賢。


そして両思いの幸太郎と美和。


それぞれがバスケに打ち込み、幸太郎達は3年になっていた。






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