第16話「楽しもう。」
大会前日、レギュラーメンバーが発表されていた。
「15番、大泉幸太郎。」
(だよなぁ〜。まだ俺がユニフォーム・・・。)
「えぇっ〜〜〜。ぼ、僕ですか?。」
そんな僕の反応に対して、周りは大爆笑した。
しかし里美先輩は、
「はぁ〜。あんた以外どこに大泉幸太郎がいるの?。」
と、ため息まじりに言った。
「みなさんのお役に立てる様、一生懸命頑張ります!。」
と、敬礼のポーズで僕は言った。
それを見たチームメイトはさらに大爆笑した。
本来ならバスケ初心者の1年が選ばれたらヒンシュクをかいそうなものだが、里美の策略で普段から各ポジションのレギュラーメンバーとコミュニケーションを取らせていたのが功を奏し、幸太郎のベンチ入りに不満を漏らす者は誰もいなかった。
「それじゃ〜今日は軽く流して終わるわよ!!。」
と、里美先輩が言い、
全員一斉に、
「はいっ!!。」
と、返事をした。
僕は明日の試合が不安で不安で、練習に集中出来なかった。
そこへ翔先輩が来て、
「なんだ、コータロー。一丁前に緊張とかしちゃってるのか?。」
と、言った。
僕は、
「当たり前じゃないですか!。まともに試合も出た事ないのに、いきなり3年生最後の大会でベンチ入りなんて。」
と、返した。
翔先輩は続けて、
「安心しろよ。お前の出番がこねぇ〜様にしてやるから。」
(それはそれで少し寂しい。)
と、思う幸太郎だった。
「それに、試合に出たとしたって走りまくるだけなんだから大丈夫だろ?。」
「間違いありません!!。」
僕は翔先輩が言った事に対して、大声で賛同した。
「あははははぁ〜!!。コータローは本当におもしれぇ〜な。まぁ〜お互いに頑張ろうや。」
翔先輩は僕の背中を叩き練習に戻って行った。
(翔先輩のおかげで緊張がほぐれた!!。ありがとうございます!!。」
練習が終わり家に帰った僕は、ニタニタしながらユニフォームを眺めていた。
そして小声で、
「やった、やった、やった!。」
と、嬉しさを噛みしめていた。
そこへ美和からLINEが来た。
「少し話せる?。」
僕は速攻で、
「大丈夫ですよ。」
と、返信した。
直ぐに美和先輩から電話が来た。しかもビデオ通話。
「コータロー君ヤッホー!。」
美和は異様にテンションが高かった。
「美和先輩、楽しそうですね!。」
僕がそう言うと、美和先輩は
「当たり前じゃない!!。明日から大会よぉ〜。ワクワクせずにいられないわよ。コータロー君はワクワクしないの?」
と、言った。それに対して僕は、
「ユニフォームをもらっだけで超嬉しくて!。でも実際に試合の事を考えると不安しかないです。」
(試合に出れるとは限らないけど、出た事を想像するだけで心臓が飛び出そうだ。)
「まぁ〜。それはそれでいいんじゃない!。バスケを始めて、初めて試合に出るときの気持ちなんて一生に一回しか経験できないんだから。」
美和先輩にしては深い事を言った。
「一生に一回かぁ〜。確かにそうですよね!。これからバスケを続けていく中で僕にとって初めての試合出場。何か深く考えると涙が出そうになりますね。」
「でしょ〜。楽しんで、良い思い出にしなきゃもったいないよ!!。」
(美和先輩は相変わらず前向きな性格をしてて凄いや。)
「分かりました!!。明日は出場する機会があったら、みんなの為に精一杯楽しみながらコートを走り回りたいと思います。」
美和先輩は少し笑いながら、
「オッケー、オッケー。その方がコータロー君らしいよ。それじゃ〜明日はお互いに早いから今日はこの辺で、おやすみ。」
「美和先輩。おやすみなさい。」
電話を切った後もしばらく眠れなかったのでマンガを読んだ。
大会前日に選んだマンガは、
「アイシールド21」
ただの使いっ走りだったセナがアメフトと仲間に出会い成長していく物語。
「よく走るなぁ〜。」
「ヒルマは機関銃とかないわぁ〜。」
「僕も明日は走りまく・・・す〜す〜。」
幸太郎は珍しくマンガを読みながら寝落ちした。
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