第14話「おやすみなさい。」

体力テスト当日


僕はこの日を待ちわびていた。この3ヶ月、自分なりに頑張って来たので、どれだけみんなとの差があるのかを知りたかった。


(頑張るゾォ〜。)


まずは全員でラジオ体操とストレッチ、軽いジョギングを行った。


「それじゃ〜握力から行くぞ!!。」


先生の指示に従いながら種目が進んで行った。


僕は記録係を買って出た。みんなの数字が気になったからだ。


(あれ?。何か僕のテスト結果ってみんなより良いのかもしれないな。)


一種目一種目では凄い人は必ずいるが、最もバランス良く高水準の結果を出して行ったのは、幸太郎だった。


「じゃ〜次はセンゴな!!。」


(センゴって1500m走の事だよな。よしやるぞ)


「よーい!!スタート!!。」


先生の合図と共に一斉に走り出した。僕はいつも通りストライドを大きくとって腕を一生懸命振った。


学校のグラウンドも一周300mで、公園のトラックと同じだった。


1周を過ぎたあたりからだった。周りに生徒が居なくなっていた。


(あれ??。みんなペースを落としちゃったぞ。まだ一周しかしてないのに。)


僕は、例によって3周を過ぎたあたりから腕が重くなり始めペースが落ちてしまった。


ゴールした時には、いつもの様に酸素が足りない状態になり、口の中は乾ききっていた。


そんな僕のところへ先生が寄って来て、


「大泉、おまえ凄いじゃないか!!。陸上でもやってるのか?。」


と、聞いてきた。


僕は、


「毎朝趣味でトレーニングをやっているだけです。」


と、答えた。


すると先生は、


「俺が顧問をやってる陸上部に入れ!!。お前なら鍛えればものになるぞ!!。」


と、まさかの陸上部に勧誘さてしまった。


もちろん僕は丁重に断った。


が、センゴで1位になれた事は超絶嬉しかった。


(美和先輩のおかげだなぁ〜。後でお礼をいわなきゃ。)


次の50m走では中学生は6秒台だと普通に早い部類に入るのだが、幸太郎は7秒5だった。


そこへまた先生が寄って来て、


「大泉。短距離走は苦手か?!。走り方が全くなってないぞ。センゴはあんなにキレイなフォームで走れてるのにな。良いか?短距離はトップスピードへいかに速くもっていくかが大切だ。最初から背筋を伸ばし、大股広げて走るんじゃなくて、最初は前傾姿勢で歩幅を小さく足をフル回転させるイメージだ。スピードに乗ったらストライドを大きくする。まぁ〜今度やってみろ。」


と、言った。


「はい!。ありがとうございます。」


と、お礼を言った。


(そっかぁ〜。僕は無駄にデカいから歩幅が最初から大きくなりがちでスタートダッシュでスピードに乗ることが出来てなかったんだな。よしっ!!今日のトレーニングから気をつけてみよう。)


そして体力テストは終わり教室に戻ると、


「コータロー!。お疲れぇ〜。体力テストはどうだったよ?。」


けんちゃんがやって、そう聞いた。


僕は、


「思ったよりも良かったのかなぁ〜?。陸上部に勧誘されちゃった。」


そう答えた。


「なにお〜!!。陸上部の顧問めぇ〜許さん!!。コータローは俺達のもんだ。」


けんちゃんは嘘か本当か分からないが結構怒っていた。


「大丈夫だよ、そんなに怒らなくても。丁重にお断りしたから。」


と、けんちゃんに伝えた。


僕がけんちゃんと話していると。


「大泉!。お前スゲ〜な!。無茶苦茶運動神経いいじゃねぇ〜か。」


と、クラスの男子が寄ってきた。


いままでこんな事はなかった。


けんちゃんは、そんな僕の姿を嬉しそうに見ながら自分の教室に戻って行った。


(ほらな。お前は運動音痴じゃなかったろ!コータローの場合、運痴じゃなくて無知なだけだったんだよ。でも良かったな友達が沢山出来そうです。)


それからはしばらくスタートダッシュの練習を取り入れてみたりしたが中々しっくりこなかった。


バスケはスピードを必要とされる。


僕は日々のポジション練でそれを痛感していた。


(また美和先輩に頼るしかないかぁ〜。)


夜晩飯を終えて美和先輩にLINEを送った。


「夜分にすみません。トレーニングの事で相談があるんですけど。」


僕がLINEをすると、


「オッケー!!。お風呂入ったら電話するね。」


と、返信がきた。


僕は美和先輩から電話が来るまでマンガを読んで待つ事にした。


ベイビーステップを途中から読み始めた。


ベイビーステップはテニスマンガで、優等生のエーちゃんが努力とデータテニスで頂点を目指す物語。なっちゃんとの恋話もある。


「すべてのボールに追いついて返す事が出来れば負けないかぁ〜。」


「データテニスにエーちゃんノートねー。」


はっ!!と、ある事に気づきマンガを読むのをやめた。


(これかも!!。色々なトレーニングをするだけじゃなくてデータの取り方も覚えれば、もっと効率よく上手くなれるはずだ。)


しばらくして美和先輩から電話がかかってきた。


ピロロロン、ピロロロン


「はい!。コータローです。」


「ごめん!!。のんびりお風呂入ってたら遅くなっちゃった。」


「全然大丈夫です。マンガ読んでたんで。」


「マンガオタクは相変わらずなんだね。」


僕らは少しの間、たわいもない話をした。


しばらく話をした後、僕は


「LINEのビデオ通話に切り替えませんか?。」


と、美和先輩に聞いた。


すると美和先輩は、


「えっ?。今お風呂から出たまんまの格好してるから無理かも。」


と、言った。


(マジかあ〜!!。)


「それじゃ〜また次回でお願いします。」


と、僕は返した。


そして本題へ。


「この前、体力テストやったじゃないですか!。」


僕がそう言うと、


「聞いたわよ。コータロー君凄かったらしいじゃない。センゴなんて、もう少しで5分きれたんでしょ?。」


と、美和先輩が言った。


「そうなんですが。50m走の時は先生に走り方がおかしいって指摘されて、先生に言われた事に気をつけながらトレーニングメニューに追加して、やってみてるんですけと中々しっくりこなくて。」


僕の疑問に対して、


「要はダッシュ力の強化をしたいって事でいいのかなぁ〜?。まぁ〜バスケはスピードが大事だから必要かぁ〜。」


と答えた。美和先輩は続けて言った。


「コータロー君の場合は頭が理解してから体が動くまでのスピードは速いんだから、あとはちゃんとした体の使い方だけ教え込めば大丈夫だと思う。ちょっと面白い資料があるから明日持って行くね。」


「はい!。ありがとうございます。やっぱり美和先輩に相談して良かったです。」


その後もしばらく美和先輩との電話は続いた。


「それじゃ〜明日も頑張ってね!おやすみなさい。」


「ありがとうございました!。おやすみなさい。」


(美和先輩と長電話しちゃったぁ〜!!

よぉ〜し!明日も頑張るぞぉ〜。)


「くしゅん!!。あぁ〜ちょっと長電話しすぎちゃったかな。」


美和は可愛くクシャミをした。









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る