第12話「うまくなってきたね。」

次の日の朝、僕はいつもの様にトレーニングメニューをこなしていた。


ピッ!!


タッ、タッ、タッ、


300m走をやっている時、自転車に乗った美和先輩が現れた。


「コータロー君!!。おはよぉ〜!!。」


「あっ!!。美和先輩!!。おはようございます!!。」


僕は足を止め、美和先輩に挨拶を返した。


「へぇ〜。本当に朝からトレーニングやってるんだね!。偉い偉い。」


「はいっ!!。僕は運動神経が悪いから人一倍努力しないと行けないので。」


僕がそう言うと、美和先輩は、


「別にコータロー君は運動神経悪くないと思うんだけどなぁ〜。」


そう返してきた。


「そうですかねぇ〜。」


(実際、小学生の時めちゃくちゃ走るの遅かったからなぁ〜。)


「とりあえず新しいトレーニングメニューを持ってきたから、これを参考にやってみて!。」


「ありがとうございます!。わざわざこの為に来てくれたんですね。」


美和先輩は少しため息をついて、


「はぁ〜。わざわざきたのはトレーニングメニューを渡す為だけじゃなくて、コータロー君に会いたくなったから。」


と、強めの口調で言った。 


僕も少し照れながら、


「美和先輩!!。今日も最高に可愛いです。」


と告げた。その直後美和先輩は、


「じゃ、じゃ〜私は帰るね!!。」


と、言い帰って行った。


僕は、美和先輩が持ってきてくれたトレーニングメニューを見た。


そこには、


[ステップ2]


と、書かれていた。


細かく読むには時間が足りなかったので、とりあえずトレーニングを続ける事にした。


その日は学校で授業の合間に新しいトレーニングメニューを見ていた。


その中には参考資料と題してURLが書かれていた。


部活が終わり家に着いた僕は早速居間にある父のパソコンを開いて、このURLを開いた。


現れたのは、


「最強のディフェンダー。」


と、言うタイトルだった。


その中にはガードからセンターまでのNBA選手が紹介されていた。実際にNBAを見るのは初めてだったからかなり衝撃を受けた。


(すげぇ〜な!!。こんなのマンガの世界と変わらないじゃん。)


「ここまで凄いと良くわからないや。」


僕はパソコンを閉じて公園に行く事にした。


[ステップ2]のトレーニングメニューにはバスケに必要な技術面のトレーニングと筋力面のトレーニングについて書かれていた。


例えば、


瞬発力を鍛える筋トレ、パワーを鍛える筋トレ、持久力をつける為の練習方法が書かれていた。


(腕立て伏せ一つとっても、やり方を少し工夫するだけで色々な効果があるんだなぁ〜。)


中学バスケは1クオーター8分。これを全力で走り続ける体力が必要になる。それにただ走るだけじゃなくて、ジャンプしたりサイドステップやバックステップも取り入れないと意味がない。


(さすが美和先輩。色々なパターンに必要な練習方法が書いてある。)


そして最後のページに、


「幸太郎君は身長の高さや手の長さも武器になるから今後はジャンプを意識したトレーニングもやろう!。誰かの為に頑張る事を励みに出来る幸太郎君にはコートの中を縦横無尽に走り続けるオールラウンダー型の選手が向いてると思うよ。」


(オールラウンダーかぁ〜。仙道輝みたいな事だよな!。ハードル高っ!!。)


「こりゃ〜大変だぞ!!。スケジュール管理からやらなきゃだ。」


この日は軽く運動をして家でスケジュールを考える事にした。


部活がある日は朝練だけにした。朝練は主に体力的なトレーニングを中心にして、夕方のトレーニングは技術的な物を中心にした。


そんな生活がしばらく続き、バスケ部の練習でも少しずつ実践的な練習に混ぜてもらえる様になっていた。


ポジションの固定はされず色々なパターンでの練習が多かった。オフェンスでは技術的に全く役に立たなかったが高身長を活かしたポストプレーだけは何とか様になってきていた。


(けんちゃんの練習に付き合ってたのが良かったな!。)


でも西村先輩の様なパワー型の選手に当られると直ぐにはじき出されてしまった。


(もっと動かなきゃ!。普通にポジションに入ってもマークに着かれた状態じゃ良いパスが出せないや。)


それからも自主トレと部活で走り続けた。


そんなある日の休日、美和先輩からLINEが来た。


「今日みんなで3on3やるんだけど来ない?。」


僕はそろそろゲームをやってみたいと思っていたので、


「喜んで!!。」


と、返信した。


「それじゃ〜いつもの公園に14時集合ね!。」


「了解です!!。」


(3on3かぁ〜。けんちゃん達と昼休みにやった以来だなぁ〜。)


僕は12時に公園に行き自主トレを始めた。


(今日は持久力を上げる為に1500m走をやってみるか。確かタイムを測るように書いてあったよな。)


僕は準備体操、ストレッチ、ジョギングを終えると、新調した腕時計のストップウォッチをセットした。


ピッ!!


(よし!!。最初から全力だ!!。)


トラックは一周300m。これを5周する。ストライドはなるべく大きく、腕も大きく振る。


3周までは順調に進んだが、1kmを超えたくらいで腕が重くなってきた。腕の疲れはあるものの足はまだ良く動いた。腕の振りを少し小さくして走り続けた。


ピッ!!。


「はぁ〜はぁ〜。ぜぇ〜ぜぇ〜。」


喉がカラカラになる感じと、酸素が足りない感じがわかったが急には止まらずインターバル程度のジョギングをしながら呼吸を整えた。


300mトラックを一周すると呼吸は普通に戻った。


それからしばらく筋トレ、柔軟、ストレッチをやった。


(そう言えばタイムを測ってたんだっけ。)


ストップウォッチは、


5分05秒


で、止まっていた。


「これははやいのかなぁ?。」


中学に入ってから体力テストをやった事はまだなかったので、僕には分からなかった。


しかし1ヶ月後に行われた体力テストで、今までの努力が報われる事になるのだが、その時の僕には知る由もなかった。


(そろそろ時間かなぁ〜。)


僕はバスケゴールがある場所に着くとすでに美和先輩が来ていた。


「チワァ〜ッス!。美和先輩、早いですね。」


「コータロー君も早いね!。もしかして自主トレでもやってたの?。」


「はいっ!。時間があったので。」


「エライ、エライ。」


美和先輩は笑顔でそう言った。


そこへ、みんながぞろぞろやって来た。


けんちゃんは、


「おっ〜!!。コータロー、相変わらず30分前行動は変わってねぇ〜な。」


と言った。


そこへ3年生が、


「場所取りご苦労。」


「ボコボコになる覚悟はできてるか?。」


「お腹空いたなぁ〜。」


と、言いながらやってきた。


少し遅れて、里見先輩も合流した。


(そう言えば、里美先輩っていつも監督みたいな事やってるけどバスケ上手いのかなぁ〜?。)


「今日は私も軽く混ぜてもらおうかな。」


里美先輩がそう言うと、


「おっ!!。久々に里美ちゃんと、やれるのかぁ〜。こりゃ楽しみだ。」


と、翔先輩が言った。


僕は、美和さんに


「里美先輩ってバスケ出来るんですか?。」


と、聞いてみた。すると美和先輩は、


「ん〜、そうねぇ〜、そこらの男子にはまけないんじゃないかなぁ〜。」


と、言った。


(そこらの男子が、どこら辺までのレベルを言っているのから分からないけど上手いって事だなよ。)


それから2時間くらい、僕らは3on3を楽しんだ。部活とは違い、みんな笑顔で楽しそうだった。


(やっぱ、先輩達にはまだ勝てないなぁ〜。)


(まぁ〜1番驚いたのは里美先輩のうまさだったけど。)


里美先輩はまさしくオールラウンダーという表現がぴったりなプレイヤーだった。


「里美先輩!!。」


「なに?。」


「1on1やりませんか?。」


僕がそう言うと、里美先輩は


「私がコータローとそんな事したら焼きもち焼く人がいるからやめとくわ。」


と、言った。


僕は美和先輩の方を見た。


(むむ。確かに若干だけど焼きもちのオーラを感じるぞ。)


「私達3年は解散するから、あとは2人で楽しくバスケやって。」


里美先輩はそう言って他の3年生達と帰って行った。


「コータロー君。少し1on1やる?。」


「お願い致します。」


「うん!。」


美和先輩はニコッと返事をした。


それから30分くらい1on1をやった。


「きゃっ!。どこ触ってんのよ!。」


「すみません・・・。」


(やっぱり美和先輩はドリブルが上手くて動きが早いから下手に突っ込んだり手を出したりすると直ぐ抜かれるかファールになっちゃうな。)


そして、美和先輩が


「ぷはぁ〜。もぉ〜無理!!。やっぱり男子が相手だと疲れるわ。」


と言って1on1は終了した。


「ちょっと飲み物買ってきますね!。」


僕は近くの自販機でスポーツドリンクを2本買い美和先輩の所に戻った。


「これどうぞ。」


美和先輩はスポーツドリンクを受け取り


「ありがとう!。」


と言い、一口飲んだ。


「今日は誘ってくれてありがとうございました。超楽しかったです。」


僕がそう言うと、美和先輩は、


「コータロー君はバスケがだいぶ上手くなってきたね。体も良く動くし。あとはシュート練習を沢山やれば試合でも色々出来る様になるんじゃない。」


と、言った。


僕はベンチに置いたスポーツドリンクを一口飲んだ。


次の瞬間、


「あぁ〜!!。それ私のだよ!!。」


僕は間違えて美和先輩のスポーツドリンクを飲んでしまった。


「すっ、すみません・・・。間違えちゃいました。」


僕が謝ると、美和先輩が


「絶対わざとだぁ〜。変たぁ〜い。」


と、言った。僕はまだあけてないスポーツドリンクを渡そうとした。


「ごめんなさい。こっちの新しいやつを飲んでください。」


そうすると美和先輩は、僕が飲んだスポーツドリンクを、


ゴクッ!ゴクッ!


と飲んで、


「冗談、冗談。今更そんな事きにしないよ。」


と微笑んだ。


僕は、


「光栄であります!!。」


と、よく分からない事を口にした。


幸太郎にとって今年の夏は暑くなりそうな予感がした。


(コータロー君と間接キスしちゃった。)


美和はお風呂に浸かりながら思い出し笑いをしたらしい。

















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