第10話「私達からのプレゼント。」

今日は日曜で部活も休み。それでも幸太郎は朝からトレーニングに励んでいた。


バスケ部に入ってからも朝練は続け、美和からもらったトレーニングメニューも300m×10本まで終わった。


「ふぅ〜。初めはどうなる事かと思ったけど何とかなったな。明日学校で美和先輩に次は何をやったら良いか聞いてみよぉ〜かな。」


朝練を終え家に帰ると朝ご飯の支度が出来ていた。


「おはよー。今日も朝から頑張るわね。ご飯たべるでしょ。」


日曜の早朝にも関わらず母親が朝ご飯の用意をしてくれた。


「わりぃ〜ね!。せっかくの休みなのに。」


「後で倍にしてかえしてもらうから大丈夫よ。」


母親は笑いながらそう言った。


食卓にはご飯、味噌汁、納豆、ハムエッグが並んでいた。


「いただきまぁ〜す。」


母は僕がご飯を食べ始めると、


「後は勝手に食べてね。」


と言い、寝室へ戻って行った。


(今日は部活もオフだしなにしょ〜かなぁ〜。)


(そう言えば、そろそろバッシュが欲しいかも。まだ中学の入学祝いでおばあちゃんからもらったお金があるから買いに行こうかな。)


その前に、


「よしっ!。まずは久々にマンガでも読むか。」


手にしたのは、


テニスの王子様


中学テニス界における天才だらけのテニスマンガ。


「手塚ゾーン・・・。ありえないだろ。」


「無我の境地からの天衣無縫の極みぃ〜。」


「出た。乾汁・・・。」


(スプリットステップとかならバスケでもつかえるかなぁ〜。)


最近幸太郎はマンガを読んでいる最中、バスケに応用出来そうな技が出てくる度に頭の中で試していた。


出来るわけもないのに・・・。


「くぅ〜!!。」


幸太郎がマンガを読み終え大きく背伸びをした瞬間、携帯がなった。


(誰だろ?。)


電話は里美先輩からだった。


僕は慌てて電話に出た。


「あっ!。もしもし!。おはよぉ〜ございます!。日曜日なのにどうしました?。」


「おはよう。コータロー、今日暇でしょ?。いんや、暇に決まってる。コータローだし。」


(何だ?。いきなり人を暇人呼ばわりしだしたぞ。)


「ちょっと買い物に行こうと思ってますが

、どうかしましたか?」


僕がそう聞くと、


「公園で良い事しない?。きっと盛り上がるわよぉ〜。」


(良い事ってなんだ??。前も似たような展開で騙されたからなかぁ〜。)


「今日はですねぇ〜。午後からバッシュを・・・。」


僕が話している最中に、


「うるさいボケ。13時にいつもあんたがトレーニングしてる公園に集合ね!。じゃっ!!。」


そう言って、一方的に電話を切った。


・・・


・・・


(出た!!。里美ゾーン。)


(13時に公園じゃぁ〜バッシュ買いに行く時間ないじゃんかぁ〜。)


幸太郎は速攻諦めた。


「さっ。諦めて公園行く準備しよっ。どうせバスケやるんだし。」


家の近くの公園には陸上用のトラック以外にも、野球場、壁打ちテニスコート、バスケのリングなどが付いていのだ。


僕はジャージに着替え公園に向かった。


公園に着くと、


「おぉ〜い!。コータローこっちこっちぃ〜。」


手招きしながら、けんちゃんが僕の事を読んだ。


「けんちゃんも里美先輩に呼び出されたの?。」


僕がそう聞くと、


「昨日LINEしてたら急にバーベキューやろうってなったんだよな。」


と答えた。


「えっ!!。今日はバスケじゃなくてバーベキューやるの?。」


「そぉ〜言う事。あっ!!会費1500円な。」


幸太郎はてっきりバスケをやるものだと思っていたので財布を持って来ていなかった。 


「ちょっと家戻って取ってくるわ。」


急いで家に戻り財布を手にして公園に戻った。


幸太郎が公園に着いた頃にはバーベキューの準備はほぼほぼ終わっていた。


僕は、けんちゃんに会費を手渡すとバーベキューの手伝いを始めた。


「コータローは野菜を切って!。」


「そこの豚ゴリラ!!。お菓子ばっかり食べてないでちょっとは手伝いなさい。」


里美先輩の指示と罵声が飛び交っていた。


この豚ゴリラと呼ばれた先輩は


西村 慎吾 3年 ポジション C


僕よりもはるかに大きくガタイも良いが、お腹が少し出ていた。


「コータロー君!!。」


僕が野菜を洗っていると美和先輩が来た。両手には大量の食材を持っていた。


「美和先輩!チワッス。僕が持ちますよ。」


「ありがとう!。お肉沢山買ったから重かった。」


美和先輩はパパさんとちょっと離れた業務スーパーに肉を買いに行っていたとの事。


「パパさんはまだ来てないみたいですけど。」


「あぁ〜。何か忘れ物したとか言って、1度家に戻ったの。後で来るわ。」


(来るのか!。騒がしくなりそうだ。)


一通りの準備が終わりバーベキューがスタートした。


(みんなでこう言うのは初めてだから何か楽しいや。)


僕はひたすら手伝いに徹した。みんなが楽しそうにしてるのを見てるだけで満足だった。


「お疲れぇ〜。沢山食べてる?。」


(美和先輩!。今日も可愛いぃ〜なぁ〜。)


「そう言えば今日、何か用事があったの?。おねぇ〜ちゃんがそんな事言ってたけど。」


(そう言えば、バッシュの事すっかりわすれでた。)


「実は、午後からバッシュを買いに行こうと思ってたんですよ。」


美和先輩は少し考えてから、


「なるほどねぇ〜。」


と、言った。


僕は不思議に思い、


「美和先輩何ですか?。」


と聞いたが、


「ん〜ん。何でもない。さっ!!食べよ食べよ!。」


「そうですね!。美和先輩、何か焼きましょうか?。」


「じぁ〜とうもろこしとエリンギをお願い。」


僕はいつもの様に、


「かしこまりました!!。」


と、敬礼のポーズで言った。


みんなでやるバーベキューは超楽しかった。


途中でパパさんが合流し、僕の横にマンツーマンではっついて、美和先輩と楽しそうにする度に邪魔をした。


(パパさんは本当に美和先輩の事が好きなんだな。)


夕方近くになり全ての食材がなくなった。


「それじゃ〜そろそろ撤収!!。片付けが終わったら各自解散。」


三年生はバーベキューの途中からバスケのゴールを使って遊んでいた。普段は厳しい表情で練習している先輩達も笑顔ではしゃいでいた。


僕はせっせと片付けを進めていた。


そこへ里美先輩が来て、


「あんたはいつも雑用を率先してやってて偉いわね。」


と、言った。


僕は、


「僕は普段何も役に立たないので、みんなの為に出来る事があるなら一つでも役に立ちたいんです。」


と、返した。


そうすると里美先輩は僕の背中を思いっきり叩いてこう言った。


パシッ!!


「誰かの役に立ちたいか・・・。それがコータローの本質なのね?。まぁ〜らしくて良いんじゃない。私は好きよ、そう言うの。」


里美先輩はそう言うと機嫌良さそうにバスケをしている先輩達のところへ行った。


少し暗くなりかけた頃、片付けも終わった。


(そう言えば最初の方にちょっと肉と野菜を食べただけだから、このままトレーニングしてからかえろぉ〜かな。)


「それじゃ〜みんかまた明日なぁ〜。」


各々が散っていった。


「よしっ!。やるか。」


と、僕がトラックの方に向かおうとした時、里美先輩、美和先輩、パパさんが近づいて来た。


パパさんは、


「おっ!!。これからまだトレーニングするのか?。」


と言い、続けて里美先輩が、


「本当によくやるわよ。」


と言い、続けて美和先輩が、


「良かったらこれを使って。」


と、バッシュを僕に手渡した。


「サイズは28cmでぴったりだと思うから。」


続けてパパさんが、


「まぁ〜なんだ・・・。美和にちょっかい出すのは気に喰わんが、バスケに対する姿勢は気に入った。」


と、言った。


「これは普段みんなの為に頑張ってくれているコータロー君に私達からのプレゼント。」


僕は思いがけないプレゼントにかなり感激してしい、


「ありぎゃとうございます。」


と涙目ながら、お礼を行った。


次の瞬間、


パシッ!!


「コータロー!!。あんたはタイミングが悪いんだよ!!。せっかく私達がバッシュをプレゼントしようって、みんなで話しをしてたのに、今日買おうとしてただろぉ〜!!。空気を読め!!。」


里美先輩はそう言いながら僕のケツを何度も蹴っ飛ばした。


(コータロー君が喜んでくれて良かった。)


と、思う笑顔の美和。


(みなざんあでぃがとうございます。)


僕は嬉しいのと痛いので涙が止まらなかった。








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