第8話「一緒にやろうよ。」

しばらくジムを眺めていると、里美先輩が近づいて来た。


「コータローおつかれぇ〜!。もう終わったの?。」


僕は、


「はいっ!。今日はへばらずに最後までやれました。」


と、返した。


「それは良かったね!。」


と、里美先輩は笑顔で返してくれた。


里美先輩は続けて


「今日はもう帰るの?。」


と、聞いて来た。


「今日はこの後美和先輩と、ご飯に行く約束をしてまして。」


それを聞いた里美先輩はニタニタ顔で


「ははぁ〜ん。コータローもすみにおけないわねぇ〜。」


そう言うと、少し怖い顔になり


「まっ!良いか!。今日は美和に譲るわ。次回は私に付き合いなさいよ。」


そう僕に告げみんなの元へ戻っていった。


僕は心の中で、


(今度は私に付き合いなさいよ!って、里美先輩ともご飯に行くって事かな・・・。想像しただけでも飯が喉を通らなくなりそうだ。)


しばらくして、美和先輩が着替えを終えて事務所から出てきた。


僕は、ポカぁ〜んとなってしまった。


(ちょ〜.ぜつ可愛いんですけど!。美和先輩って普段こういう格好をしてるんだぁ〜。)


「おまたせ!!。」


僕は少しの間、沈黙して美和先輩にみとれていた。


「ちょっと何よ!!どうかした?。」


僕は美和先輩の質問に対して、


「可愛すぎる。」


と、一言だけ発した。


次の瞬間、


「きゃ〜!。バカ!。何言ってんのよ!。ゴニョゴニョ〜。」


美和先輩は思いっきり動揺して見せた。


「もぉ〜!。いいからさっさと行くわよ!。」


と言い、僕の袖を引っ張って外に連れ出した。


僕は、


「美和先輩は何が食べたいですか?。」


と、尋ねた。


「そぉ〜ねぇ〜。ファミレスとかでいいんじゃない?。ドリンクバーもあってゆっくり話しできるし。良い?」


僕は即答で、


「どちらへでもお供致します。」


と、答えた。


しばらく歩くとファミレスがあり入る事にした。


「あぁ〜お腹空いた!。何食べよっかぁ〜?。」


美和先輩はニコニコしながらメニューを見ていた。


(美和先輩、楽しそうで良かった!。)


僕はメニューを見ている美和先輩のことを、じぃ〜っと見ていた。


「よし!。決めた!。私、海老ドリアのセットにする!。コータロー君は決まった?。」


「あっ・・・。」


僕は美和先輩に見惚れていてメニューを見ていなかった。


慌てて、


「俺も美和先輩と同じにします。」


と、答えた。


「オッケー!。じゃ〜注文しちゃうね!。」


美和先輩は店員さんを呼び注文をした。


そこから料理を食べ終わるまでは、学校の事や友達の話で盛り上がった。


食事が終わり僕がドリンクバーを注いで戻ると、美和先輩が封筒から何枚かの紙を取り出していた。


「それは今日、僕がやった能力テストの結果ですか?。」


僕がそう聞くと、


「そうだよ。」


と、言い紙を僕に渡した。


「一緒に見よっ!。」


と、言い美和先輩は僕の横に移動してきた。


(距離近ぁ〜い!!)


美和先輩が内容の説明をしてくれた。


「コータロー君の場合はねぇ〜。これと、これと、これ。あとこれか。この4つが普通の人よりも優れている所かな。」


美和先輩が指を刺した先には、


視野の広さ・動体視力・心肺機能・反射速度


が書かれていた。


(へぇ〜。視野の広さはさっき説明されたけどあと3つもあるのかぁ〜。)


「私、コータロー君が池内君と3on3をやってる時に気づいたのは、心肺機能以外の3つなんだ!。」


「美和先輩、あの時見てたんですか?。」


「おねぇ〜ちゃんに呼び出されて見に行ったの!。バスケ部期待の一年が3on3やるから見に来いって。」


(でも確かあの時、僕は立ってただけで何もしてなかった様な気が。)


とりあえず僕は、


「そうだったんですね!。」


と言い、続けて


「あれを見てただけで、良く色々な事が分かるんですね?。」


美和先輩は言った。


「私も、おねぇ〜ちゃんも小さい頃からスポーツジムにいるせいで、どうしても色んな所に目がいっちゃうのよね。」


(なるほど!!。黒子のバスケのリコみたいな感じかぁ〜。)


例によって僕はそれをそのまま口に出した。


「黒子のバスケのリコ先輩と同じ感じですかね?。」


美和先輩は首を振りながら、


「違う違う。あんなに凄い能力じゃないよ。ただ、ボールの動きに対する反応スピードやちょっとした目の動きなんかを観察してるだけ。」


(それはそれで普通の中学生には中々出来ないよなぁ〜。)


とりあえず僕は何で僕に興味を持ったのか知りたかったので色々と聞いてみる事にした。


「美和先輩が言ってた3つなんですけど、なんで僕が普通の人より優れていると思ったんですか?。分かりやすく教えてもらっても良いですか?。」


僕は少し長めの質問をした。


美和先輩は、


「オッケー。じゃぁ〜順番を追って説明するね。」


と、結構真剣な顔で話し始めた。


「まずは、コータロー君から見て池内君はどう見える?。」


(けんちゃんかぁ〜。)


「子供の頃から超運動神経が良くて、イケメンで、ちょっと天然ですかね?。」


パシッ!!


僕は軽く頭を叩かれた。


「そう言う事じゃなくて!。バスケの話し。」


(あぁ〜。そう言う事かぁ〜。」


「けんちゃんは動きも早いし、パスとドリブルも超うまいかなぁ〜。流川ほどじゃないけど。あっ!!。」


僕の話はまたオタってしまった。しかし美和先輩は普通に、


「まぁ〜そうね。池内君はまだ一年だけどかなりの物を既に持ってるのは分かるわ。」


(けんちゃんが褒められるのはかなり嬉しい。)


「入学して早々、一年生の歓迎試合をやったんだけど一年生チームは池内君の早いパスや予想外のクイックネスに誰もついていけなくて大敗しちゃったの。」


(へぇ〜同じ学年じゃ〜もう頭一つ抜けてるんだなぁ〜。僕は少し誇らしく思った。)


「へぇ〜、やっぱりけんちゃんってバスケ上手なんですね!。」


美和先輩は話を続けた。


「でもコータロー君はあの日の3on3で池内君の鋭いパスやトリッキーなプレイにもちゃんと反応してたの。」


美和先輩の話は更に続いた。


「それにコータロー君はほとんど正面を向いて立ってだだけだったでしょ?。それなのにパスを完璧にキャッチして正確なパスまで出してたの。」


「あとは池内君がシュートを決めた時もちゃんと振り返って確認する事なくディフェンスの位置まで下がったりもしてた。」


(美和先輩、評論家みたいになってきたなぁ〜。)


「一つ一つの事で言えば、もっと優れている人はいるんだろうけど、コータロー君の場合、視覚範囲が広く、動体視力も良い、また脳が認識してから体が動くまでのスピードが異常に速い。ここまで高水準でバランスが取れてる人って中々いないのよ。」


(へぇ〜。専門家ってそう言う見方をするんだ。)


「あれだけの時間で良くそれだけの事が分かりましたね?。俺はただいつもの様に立ってれば良いって言われて、立ってただけだったのに。」


僕がそう言うと、美和先輩は


「えっへん!!。」


と言い、鼻の下を人差し指で擦って見せた。


「はぁ〜。喋りすぎたら喉がかわいちゃった。」


そう言って、美和先輩が席を立とうとしたので


「あっ!!。俺が取ってきますよ。何飲みます?。」


と僕の体が動いた。美和先輩は、


「メロンソーダぁ〜。」


と、可愛らしく言った。


ドリンクを作りながら、


(そっかぁ〜。ずっと運動音痴だと思ってたけど良い所も結構あるんだなぁ〜。)


席に戻ると、美和先輩は、


「ありがとう!。」


と言い、メロンソーダをストローで少し飲んで、


「さっきの続き話しても良いかな?。」


僕は


「お気の済むまでどうぞ。」


と答えた。


その後も1時間くらい話は続いた。


「ひやぁ〜〜〜!。」


美和先輩は一通り話し終えると背伸びをしながら変な声を出した。


「まぁ〜ざっくり説明すると、こんな感じかなぁ〜。わかった?。」


(これだけ丁寧に説明されれば僕にでもわかる。)


「ありがとうございました。少しでも自分の良い部分が知れて良かったです。」


美和先輩は少し間を開けて、


「コータロー君!。」


と言い、更に僕に近づいてきた。


(美和先輩っ!!めっちゃくっついてますけど!!。)


美和先輩は真剣に僕の目を見て、


「私と一緒にバスケやろうよ!。」


と言った。


(僕はまともに女の子と喋った事も、こんなに誘ってもらった事もなかった。しかもこんな可愛いぃ〜子が、少ない僕の長所を見つけ出してくれて、こんなに一生懸命になってくれている。)


「分かりました。やってみます。」


僕がそう告げると、美和先輩は携帯を取り出し誰かに電話をかけた。


「あっ!!。もしもし、コータロー君バスケ部に入るって!!。うん、うん。わかった。待ってるね。」


そう言うと電話を切った。


「あのぉ〜。誰か来る様な話をしてましたか?。」


僕が聞いたその直後、大勢の学生が入って来た。


その中には、里美先輩やけんちゃんの姿があった。


(なんだぁ〜。みんな外でかまえてたのかぁ〜。)


「ごめんね!。みんなが来る事黙ってて・・・。」


美和先輩はそう言ったが、僕はなんかとても嬉しかった・・・。


最後にぱぱさんの姿を見つけるまでは。


「あの小僧ぉ〜。ウチの娘は絶対にやらんぞぉ〜。」


ちなみに、この後ぱぱさんは全員分の会計を払わされる事となった。


「うぉ〜!!。今日は最悪の日だぁ〜!!。」


(ぱぱさん、ご馳走様でした・・・。)









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