第7話「私が好きだから。」

次の日の朝、僕は朝6時に起きた。


(こんなに早起きするの超久々だなぁ〜。)


僕は紙を一枚手に持って近くの公園に行った。


「朝って結構運動してる人沢山いるんだなぁ〜。」


(さて、始めるか!。)


まずは昨日の事を思い出しながら準備運動とストレッチをした。


「ふぅ〜。何か独りでこういうのも新鮮だな。」


次に、昨日と同じくウォーキングを10分程度してからジョギングに入った。


「昨日はどれくらい走ったんだっけぇ〜。まぁ〜10分くらい走れば良いか?。」


ここまでは何の問題もなかった。


「さてと、そろそろあれの通りにやってみるか。」


僕はポケットから例の紙を取り出した。


「え〜っと。まずは100mダッシュしてから5分インターバルをおいて、これを5本繰り返すのかぁ〜。」


(ますばやってみるか。)


うちの近所には広めの運動公園があり100mの直線があった。


「よぉ〜し!。やるか!。」


心の中で、


ピッ


と、笛をならした。


手と足をフル回転した。


一本目が終わった。


「ふぅ〜。」


(思ったよりキツくなかったな。)


「えっと次は。軽くジョギングをしなが5分間のインターバルか。」


(要は100mダッシュをしたら5分間ジョギングをする。これの繰り返しか。)


一本目よりも2本目、3本目と徐々に脚が重くなるのを感じた。


そして初日の目標、5本をやり遂げだ。確かに疲れたけどジムの時みたいに立てない程ではなかった。


(次はっと。筋トレかぁ〜。とりあえずやってみるか。)


「まずは腕立て10回。」


(イーチ、ニィー、サーン、シー、・・・。)


最初の10回が全て終了した。


「腕立てだけちょっとキツかったけど、まぁ〜あとは大丈夫そうだな。」


これを3セット繰り返した。全てが終わる頃には7:30を少し回っていた。


(思ったよりも動けてるな。明日も頑張ってみるか。)


僕は家に帰りシャワーを浴びてから学校へ。


校門の前に誰もいない事を確認して、僕はそそくさと教室に向かった。


昼休み、僕は中庭でボ〜ッとしていた。


その姿をたまたま通りかかった里美先輩が見つけた。


「あのやろぉ〜!。良くも私のLINEを既読スルーしてくれたなぁ〜。」


里美先輩は3階の通路から丸めた紙を僕に向かって投げつけた。


「カサッ!。」


何かが落ちてきた事に僕は気づき上を見上げた。


「げっ!!。」


そこには通路から身を乗り出して叫んでいる里美先輩の姿があった。


「コータロー!!昨日は良くも私のLINEを既読スルーしてくれたなぁ〜!。なめとんのかい!!。」


(そう言えばLINE返すの忘れてた。)


僕はすみませんのジェスチャーで誤った。


「誤ったって許すかボケ〜!。罰として今度の日曜も私に付き合えぇ〜。わかったか〜。」


友達に抑えられながら里美先輩は言った。


僕は慌てて何度もうなずくジェスチャーをして見せた。


言いたい事を言って満足したのか里美先輩はあっさりとどこかに行ってしまった。


(いやぁ〜。里美先輩怖すぎでしょ!あれだけ美人でも俺は無理だわ〜。)


「そう言えば今度の日曜も付き合う約束しちゃった!!どうしよ〜。」


放課後、僕は真っ直ぐ家に帰ってジャージに着替え、朝行った公園に向かった。


何となく体の調子が良かったので朝のつづきをやる事にした。


「えぇ〜っと。朝よりも100mダッシュを一本増やして、筋トレを1回ずつ増やすんだよな。」


それから2時間、


「ひゃ〜さすがにキツくなってきたわ!!。」


僕は汗だくになっていた。


「今日はこのくらいにして続きはまた明日やろう。」


家に帰り家族で晩飯を食べていると、


「ねぇ〜お兄ちゃん!!今日、お外でなにしてたの?。」


と、愛が聞いてきた。


「ちょっと運動をしてただけだよ。」


と、僕は答えた。


両親は特に何も言わなかった。


風呂に入ってから部屋に戻り、いつもの様にマンガタイムが始まった。


「今日は弱虫ペダルにしよっかな。」


例によって途中の巻から読み出した。


「ひーめひめ、ひめ・・・。」


「でたぁ〜みど〜すじ〜。キモっ!。」


たまたま読み始めたが、


「坂道って、チョット俺ににてる?。オタクでヒョロヒョロだし。まぁ〜身長は違うけど。」


僕はマンガを読むのを途中でやめて、


(明日も早く起きなきゃだから寝よう。)


と、思った。僕の変な生活リズムが崩れた瞬間だった。


次の日の朝、


「うぅ〜。」


僕は全身筋肉痛になって、関節や筋肉が悲鳴を上げていた。


それでもジャージに着替え公園に向かった。


(今日は100mダッシュ7本からだな!。)


昨日と同じく準備運動、ストレッチ、ジョギングをこなした。


そして同じ様に心の中で笛を吹いた。


ピッ!


ダッシュの度に笛をならした。


体はパキパキだったが体が温まるにつれて痛みは消えていった。


2日目の朝のトレーニングも無事に終わった。


僕は規則正しい生活が好きだった。


「良かった。これなら毎日続けられそうだ。」


それから数日間、僕はメニューを黙々とこなし続けた。


毎日の様に美和先輩からはLINEが来ていて、たわいもないやり取りをしていた。


土曜日の夜。


いつもの様に美和先輩からLINEが来た。


「ね〜明日くるって、おね〜ちゃんに聞いたけど大丈夫?。」


僕は即答で


「大丈夫です。行きますよ。」


と返した。


「じゃ〜明日はトレーニング終わってから、一緒にご飯行こうよ。」


美和先輩にご飯に誘われた事は嬉しかったが僕は少し悩んだ。


(この前なんて30分くらいで帰っちゃったのに最後までもつのかなぁ〜。)


少し間をおいて、


「ダメ?。」


と、美和先輩がLINEしてきた。


(ダメなわけもなく、むしろメインイベントとして行かせて頂きますよ!。)


と、心の中では舞い上がるも、LINEでは平常心を装って、


「オッケーです。行きましょう。」


と、返した。


(明日のトレーニング終わったら美和先輩とデートかぁ〜。超楽しみぃ〜。)


僕の頭の中はお花畑だった。


次の日の朝、僕はいつもの様に公園で日課になったトレーニングをこなしてから美和先輩の家に向かった。


僕が着いた頃には例によって沢山の学生達が集まっていた。


「カッカッカァ〜!コータロー!おはよー!懲りずにまたきたか!まぁ〜頑張れよ!。」


と、けんちゃんが声をかけて来た。内容的には少しイラッとしたが悪気がない事は分かっていたので、


「けんちゃんおはよー!。頑張るよ!。」


とだけ返した。


そこに加藤親子登場。


「それじゃーみんなーいつも通り始めるわよー。」


里美先輩の声でトレーニングが始まった。


「あっ!コータローは美和と別メニューね!。今日は逃げ出したら許さないから。」


僕の目の前まで顔を近づけ睨みつける様にそう言った。


僕は一応、


「がんばります。」


とだけ返した。


続けて美和先輩が、


「それじゃージョギングまでは前回と同じでいくよ。」


と、言い前回と同じ様に、腕には時計の様な物をはめてくれた。


走りながら、


「コータロー君、少し体つき変わったね。」


美和先輩は僕の体の変化に気づいてくれた。

それだけでも少し嬉しくなった。


「そうですかね?。自分じゃー中々わからないですけど、美和先輩からもらったトレーニングメニューのおかげだと思います。」


「あれやってくれてたんだ!何か嬉しいな。今日は最後まで頑張ってご飯行こうね!。」


(やっぱり美和先輩は優しくてカワイィーなぁー。)


「はいっ!頑張ります!。」


少し話をしながら走っていると、


「コラァーッ!!グダグダくっちゃべりながら走ってんじゃねー!。」


と。パパさんから怒声が飛んできた。


ヒィー。


無言のまましばらくジョギングは続いた。


しばらくすると、美和先輩が


「はっーはー。ゴメン!ちょっとキツイわ。あとは独りで走って。」


と言い、パパさんの方へ歩いて行った。


「ちょっとパパぁ〜!どんだけ走らせるつもりよ!。ちょっとは加減しなさいよね!。」


パパさんは何かの機械を見ながら美和先輩にこういった。


「こいつを見てみな。」


美和先輩は機械を覗き込んだ。


そこには心拍数110の文字が表示されていた。


「いくらジョギングだからって、これだけの時間走っても心拍数が全く上がってないじゃない。」


「まぁ〜そう言うこっちゃ。前回は心拍数130まで上がったところでダッシュさせたわけだが今回はそこまで上がらねーんだわ。」


パパさんは続けて、


「あいつの事は気にくわんが、まぁ〜まぁ〜良いもん持ってるかもな。」


それに対して美和先輩は、


「気にくわんは余計でしょ!!いい加減に子離れしてよ!!。」


「しゅいましぇん・・・。」


前回同様、パパさんは素直に謝った。


その数分後、


「まぁ〜。このくらいで良いだろ〜。」

「美和!!小僧を呼んでこい!。」


「はぁ〜い。」


美和先輩は少し呆れた顔で返事をして、


「コータロー君!ストップぅ〜!。こっちに来て!。」


と、僕を呼んだ。


(ふぅ〜。次は何やるんだろ〜。)


「お疲れ様。結構体力ついてるじゃない。ビックリしちゃったよ。」


「いやぁ〜。美和先輩のトレーニングメニューのおかげですよ。」


僕は笑顔で答えた。


そこへパパさんが来て、


「コゾォ〜。次はこっちだ。さっさと来い!。前回はこれをやらせたくて呼んだのに、その前にへばって帰りやがったからな。」


僕は不思議な壁の様なボードの前に立たされた。


「あのぉ〜。これはいったい何をする機械でしょうか?。」


僕は恐る恐るパパさんに聞いてみた。


するとパパさんは、


「美和!。手本を見せてやれ。」


美和先輩が


「わかった。」


と、答えた。


「それじゃ〜始めるから良くみててね。」


そう言うとボードに向かって立った。


次の瞬間、ボードの一部が点滅を始めた。そして点滅した箇所を美和先輩がタッチしていく。


(あぁ〜!これかぁ〜。前にテレビで見た事あるぞ。瞬発力とか動体視力とか測るなつだよな確か。)


30秒ほどして僕の番が来た。


「それじゃ〜やり方を説明するね。まずはここに立って正面を向いて。目線は変えない様に一点だけ見ててね。その状態で、視界に入るところが光ったらなるべく早くそこにタッチする。これだけだから簡単でしょ。」


美和先輩はそう言うと、パパさんの近くに場所を移した。


「それじゃ〜パパお願い。」


「オッケー!。じゃー行くぞ。」


機械から、


「アーユーレディー、ゴー。」


の音声が流れると同時にそれは始まった。


(視界に入る光を指先で出来るだけ早くさわる。)


光が点滅する度に、ピッと音が鳴る。


僕はひたすらボードの光を叩き続けた。


そして30秒後、


ビィー!!


と、ブザーがなり終了した。


「これは中々シンドイね!!腕と肩がパンパンだよ。」


僕は終わった後に美和先輩に話しかけたが、何やらパパさんと真剣な話をしている様だった。


「あのぉ〜。美和先輩?。どうかしまし

た?。」


と、僕が声を掛けると、


「やっぱり!私が思った通りだったね!。」


と、微笑みながら僕に言った。


僕には何のことだかわからなかった。


そんな僕に、美和先輩は


「コータロー君は普通の人よりも極端に視野が広いのよ。」


と、説明した。


「それって何かの役に立つんですか?。」


と、僕は続いた。


「そっか。知らないよね。簡単に言うと一流のパスケットプレイヤーになれる可能性を一つ持っていると言う事なの。」


(へぇ〜。知らなかった。ん?そう言えば黒子のバスケでもイーグルアイとホークアイと言ってたなぁ〜。あれの事か。)


僕はまたしても頭の中で考えた事をそのまま口に出した。


「あれですよね!。黒子のバスケでイーグルアイとかホークアイとか言ってたやつ。」


次の瞬間、パパさんと美和先輩は目を見合わせて大爆笑した。


「あははははぁ〜。なんだ小僧!。お前ただのオタクじゃねーな。黒子のバスケときやがった!!。」


続いて美和先輩も、


「そうそう!。それそれ。コータロー君にはそっちの方がわかりやすかったね!。クスッ。」


(何か物凄く笑われてしまったが今更気にする程の事でもないか。)


「あのぉ〜。もしかして僕はこれの為に呼ばれただけなのでしょうか?。」


美和先輩は、胸を張って


「違うよ!。私が好きだから。」


と答えた。


「えっ!。」


と、僕が驚いた次の瞬間、


「テメェ〜なんか絶対に認めねーかんなー。終わったらさっさと帰りやがれぇ〜!。」


パシッ!!


パパさんが再び美和先輩に叩かれる。


「いい加減にしなさい!。」


(ふぅ〜。毎回このくだりをやらないといけないのか・・・。って言うか「私が好きだから。」って言ったよな?。)


「あの・・・。美和先輩?。今、好きって言いましたか?。」


一応本人に確認した。


美和先輩は顔を真っ赤にして、


「今のはなしなし!。」


そう言うと、パソコンの画面を僕に見せた。


「コータロー君。ちょっとこの画面を見て!。この四角く塗りつぶされている所が普通の人間の視覚範囲なの。」


画面には人間の体が描かれていて、その人間を中心にピンク色の四角部分が表示されていた。


「へぇ〜。」


美和先輩は続けた。


「そしてこれがコータロー君の視覚範囲。どう?。四角の部分からかなりはみ出してるでしょ?。」


(確かにかなりはみだしてる。)


「そうですね!。」


と、僕は答えた。


「まぁ〜私がコータロー君にバスケをすすめたいのは別にこれだけが理由じゃないんだけどね。それはまたレポートにまとめてあげるから。」


美和先輩はそう言うと事務所に入って行った。


僕はパパさんと2人きりになり微妙な空気のなか、


「おい!。小僧。続きをさっさと始めるぞ。」


と、一枚の紙を僕に手渡した。


そこには基礎体力テストの内容が書かれていた。


(結構沢山あるなぁ〜。まぁ〜せっかくだから全部やってみるか。)


そして僕は、途中休憩を挟みながら全ての項目をこなし終えた。


「コータロー君お疲れ様!!。」


美和先輩がタオルを手渡してくれた。


「ありがとうございます!。」


「どう?。疲れた?。」


「いや。全然大丈夫です!。」


美和先輩はニコニコしながら、


「じゃ〜今日はここまでにして、約束通りご飯に行こうか!。」


と、言った。


僕は、いつもの様に敬礼のポーズで、


「はいっ!!。」


と、答えた。


「それじゃ〜私も色々と準備してくるから30分くらい時間潰してて。それじゃ〜また後でね。」


美和先輩は事務所の方に行き、僕は更衣室に向かった。


僕は着替えを終えるとジムに戻り、他の人のトレーニングを眺めていた。




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