第5話「大丈夫?」
放課後、僕は教室を出て里美先輩にLINEを送った。
「今終わりました。どこに行けば良いですか?。」
(そう言えば女の子とLINEするの初めてかも・・・。かなり嬉しいかも。)
里美先輩からは直ぐに返信が来た。
「オッケー!。じゃー私は先に帰って色々と準備してるね。」
(色々と準備って・・・。)
頭の中がお花畑になりかけた。
更に続けて、
「妹を校門で待たせてあるから一緒に来てね!準備にちょっと時間かかるから30分くらいその辺でお茶してて。」
「へ?。」
と一瞬思ったが、良く考えたら僕は里美先輩の家を知らなかった。
(妹さんが案内してくれるのか。何だか悪いな。)
里美先輩に
「分かりました。でも俺、妹さんの顔知りませんよ。」
と、返した。
里美先輩からの返信、
「大丈夫!妹はコータロー君の事知ってるから。」
(妹さんは僕の事知ってるんだ?)
里美先輩とLINEをしてるうちに校門に着いた。
僕は周りを見渡したが、それらしき人はいなかった。
「あれぇ〜誰もいないじゃん。」
僕が頭をポリポリかきながらキョロキョロしていると、校門のかげから
「コータロー君!こっちこっち!。」
と恥ずかしそうに手招きする美和先輩の姿があった。
僕は美和先輩のところに行って、
「あれ?美和先輩どうしたんですか?。」
と、言った。
「何か、おねーちゃんが急にコータロー君と一緒に帰って来て。とか言うから待ってたの。」
「おねーちゃん?。」
(おねーちゃん?里美先輩?美和先輩?加藤里美、加藤美和・・・。)
状況把握完了!
「美和先輩と里美先輩が姉妹だったんですね!何でもっと早く気づかなかったんだろー。」
「ごめんね!。おねぇ〜ちゃんがちゃんと説明すれば良かったんだけど、何かとズボラだから。」
(まぁ〜鈍感な僕も悪いわけで。)
美和先輩は少しモジモジしなが、
「とりあえず行こうか?。校門の前で話してるのもちょっと恥ずかしいから。」
と言った。
「そうですね!。それじゃ〜道案内宜しくお願い致します!。」
例によって変な敬礼のポーズ。2回目だったが美和先輩は笑ってくれた。
少し時間を潰す様に言われてた僕たちはマックに入った。
30分はあっという間に過ぎて、結局1時間くらい話込んでいた
美和先輩は色々な事を話してくれた。小学生からやっているバスケの事。お姉さんの事。お父さんはうちの中学のバスケ部OBである事。お兄さんが怖い事。
「あっ!。おねぇ〜ちゃんからLINEが来て、もぉ〜帰って来ていいよ!。だって。」
僕は2人分のトレーを持ち、
「じゃ〜行きましょうか。」
と、席を立った。
マックから直ぐの所に美和先輩の家?ジム?はあり、
「めちゃくちゃデカいじゃないですか!。」
思わず声に出てしまうくらい立派な建物だった。
(もしかして美和先輩の家って超金持ちなのかなぁ〜。)
美和先輩は
「家と事務所とジムが一緒になってるから大きく見えるだけだよ。」
と言った?
「さっ!入ろう!。」
と言い、美和先輩が僕の袖を引っ張った。
中に入ると、中学校の体育館の半分くらいはありそうな場所に案内された。
「おぉ〜!!コータロー君!来たね!。」
そこには里美先輩がいて、周りにはジャージ姿の男女が沢山いた。
僕は里美先輩に近寄り、
「あのぉ〜今日は何を?。」
僕の質問に対して里美先輩は当たり前の様に、
「スポーツジムに来たら運動をするに決まってるじゃない!!。あれっ?。言ってなかったっけ?。」
「えっ〜全く聞いせませんけど〜。」
「そうだったかしら?お〜っほっほっほ。」
と、里美先輩は白々しくお蝶夫人の様に笑って見せた。
「いや、でも、俺、なんも持って来てないんで。さすがに・・・。」
僕の話をさえぎる様に
「美和ぁ〜!。」
と、里美先輩が叫んだ。
「はぁ〜い!。」
と、美和先輩も大きな声で叫んだ。
そして、
「はいっ!コータロー君はこれを使って!お兄ちゃんのお古だけど合うはずだから。」
と言い、ジャージとシューズを渡して来た。
(え〜〜。これは完全に逃げられないやつじゃん。)
そう思いながら周りを見渡すと、大人数に身を隠しているけんちゃんの姿が目に入った。
その瞬間、僕はある程度の事は理解した。
すっかりデート気分だった僕は相当浮かない表情をしてたのだろう。
里美先輩が、
「デートは楽しかった?。」
(ん?意味わかんねぇ〜よ。デートはこれからのはずだったのに。ん?デートは楽しかった?って事はもうデートはしたって事か?ん?ん?)
里美先輩が続けて、
「デートついでにもう少しだけ付き合ってあげて。ほら!。みんな待ってるから早く着替えておいで!。」
更衣室へ案内され着替えを終えてジムに戻って来た僕に
「コータロー!。黙っててすまん!。」
と、けんちゃんが駆け寄って来て謝った。
「里美先輩から話は聞いてたんだけどコータローの事だから来ないと思ってたから。」
僕は完全にハメられた形となったが、頭の中がお花畑だった事なんて恥ずかしくて言えなかったので、
「まぁ〜たまには体を動かすのも良いかもな。」
けんちゃんはほっとした様な表情で、
「まぁ〜あんま無理すんなよ。」
と、僕に言ってみんなの輪に戻って行った。
「それじゃ〜みんなぁ〜始めるわよぉ〜。」
里美先輩の一際大きな声がジムに響き渡った!
僕もみんなのところへ行こうとしたが、
「コータロー君はちょっと待っててね。」
そう言うとジムの端にある事務所へ行き誰かを連れてきた。
その男性はジャージを引っ張られ無理やり僕の前に連れて来られた。
「なんで俺がど素人の面倒なんて見なきゃならねぇ〜んだよ!!しかも美和の、美和の・・・。」
男性は僕のことを睨みながらそう言った。
「美和ぁ〜あんたもこっち気なさぁ〜い!。」
里美先輩は美和先輩の事も呼びつけた。
「パパ!。良い加減にしなさい!。昨日約束したでしょ!。今日はちゃんとやって!。」
(パパ??。おとぉ〜さまでしたか!!しかし扱いがひどいな。)
「パパ!。美和からもお願いね。」
男性はそう言われると
「おほんっ!。美和に頼まれたら仕方がないパパに任せておきなさい。」
と、態度を一変させた。
里美先輩が続けた。
「そしたら、美和はコータロー君のサポートに回って上げて。パパだけじゃ心配だから。」
(里美の奴!!。後で覚えとけ!!)
「じゃぁ〜私はみんなの所に戻るから。」
そう言い残し里美先輩は去って行った。
「じゃ〜コータロー君。早速始めようか?。」
(早速始めようか?って何をだよぉ〜。)
「何をするんですか?。」
バシっ!!
僕はケツを蹴られた。
「何をするんですかじゃねぇ〜。ごたごた言わねぇ〜で、美和に言われた通りやりゃ良いんだよ!。」
ヒィー。
バシっ!!
今度はパパさんが美和先輩に蹴られた。
「何いきなり喧嘩売ってんのよ!。子供じゃないんだからいい加減にしなさい!。」
パパさんは寂しそうに
「しゅいません。」
と誤った。
「それじゃ軽く体操と柔軟をして体をほぐそうか。」
僕は美和先輩の真似をして体操をした。そして柔軟。
美和先輩が僕の背中を押してくれた。
「イチ、ニ、サァ〜ン。」
グニョ〜ン!!
「きゃっ!!。」
ドンっ!!
美和先輩が勢い余って僕の上に覆いかぶさってしまった。
「いててててぇ〜。ごめーん!。運動してないって聞いてたから体硬いと思って勢いよく行き過ぎちゃった!。」
「あははははっ〜。そうですか。」
と、僕は苦笑いして見せた。
顔を上げると今にも殴りかかって来そうな涙目のパパさんの姿が目に入った。
ヒィー。
「はっ、早く柔軟を終わらせちゃいましょー。」
僕は慌ててそう言った。
柔軟が終わり、体がほぐれたところで、
「じゃぁ〜まずは軽くウォーキングしようか。」
(次はウォーキングかぁ〜。これなら大丈夫そうだな。)
「その前にコータロー君はこれを腕につけて。」
と、時計の様な物を僕に付けてくれた。
「それじゃ〜いこぉ〜か。」
と言い歩き出した。
しばらく歩くと、
「美和ぁ〜!。そろそろ良いぞ!!。」
パパさんが大きな声で叫んだ。
それに反応する様に。
「じゃ〜軽く走るね。」
と、言いジョギング程度の速さで走り始めた。
(これくらいならまだ全然平気かな。)
ここからしばらくこのペースで走り続けた。
美和先輩と僕は程良く汗をかいていたが、僕は余裕だった。
しばらく走っているとパパさんが美和先輩に近寄って来て何か耳打ちをした。
そしてパパさんが離れてから数秒後、
「コータロー君!行くよ!。」
と僕に声を掛け、一気にペースを上げた。
(うっ!!)
僕は昔から短距離走が苦手てで、このダッシュには全くついていけなかった。
そしてジムを2周した時点で、膝から崩れてしまった。
(さっきまではなんともかなかったのに。やっぱり本気で走ると全然だめだなぁ〜。)
そこに美和先輩が近づいて来て、
「いきなりごめね!大丈夫だった?。ちょっと試したい事があって。」
は〜は〜は〜
僕は完全に息が上がってしまった。
「嫌、僕の方こそすみません。体力なくて・・・は〜は〜。」
(かっこ悪いな僕。)
僕が膝をついていたのは数秒だったが情けない気持ちと恥ずかしさで時間がやけに長く感じた。
どれくらいの時間そうしていたのかは分からないが、僕はおもむろに立ち上がり、
「やっぱり運動は苦手です。今日はもう帰ります。」
僕は美和先輩にそう告げて更衣室に向かった。
着替えを終えユニフォームを返しに事務所へ行くとパパさんがいた。
僕は、
「今日はすみませんでした。」
そう言い、その場を去ろうとすると、パパさんは大きな独り言を言った。
「嫌だね〜。最近の若い連中はぁ〜。あんなののどこに惹かれたんだか、うちのバカ娘どもは?」
僕は思わず、
「えっ?。」
と声を出した。
「なんだ、まだいたのかヒョロ男。さっさと帰んな!風邪引くぞ!。」
僕の体を心配してくれた事が少し嬉しかった。
「おぉ〜そうだそうだ。美和に頼まれたやつ一応渡しとくわ。気が向いたらみとけや。」
パパさんはそう言い封筒を僕に渡した。
「ありがとうございました。」
一応、お礼を言ってから事務所を出た。
ジムを出た所で、美和先輩が駆け寄って来た。
「コータロー君!!今日は何か無理やり付き合わせちゃってごめんね!。」
「わざわさすみません。僕は大丈夫ですから練習に戻って下さいわ、」
軽く会釈をする僕に、
「今日はコータロー君と沢山しゃべれて楽しかった!また今度デートしてね!。じゃっ!。」
と言いジムに戻って言った。
多分この時、普通の精神状態だったら頭の中はお花畑になっていたのだろうが、今はそんな気分にはなれなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます