第41話
突如として始まった自己紹介だったが、これといったトラブルもなく終わった。
最後の人が終わると彼は音頭を取り下校を促した。
僕ももちろんそれに従って家路についた。
「なんでついてくるんだい?」
「いえ、ついてきてなどいません。ただ家の方向が同じなだけです」
なら仕方がないか。家の方向が同じなら避けようのないことだ。
十数分後家に帰宅したのだが、いまだに彼女はついてきていた。
「もう僕の家にはついたんだけど、君は家には帰らないのかい?ここまでついてくる必要はないと思うんだけど」
それもそのはず、彼女は僕の家の中にまで入ってきたのだ。家の中といっても屋内ではなく屋外なのだが。ただ庭に入ってきただけのことだが。しかし、それでも人の家に入るということは異常ではあった。少なくとも僕は彼女の行動を正当化する理由を知らない。
「それには及びませんよ。何と言ったって今日からここは私の家でもあるんですから」
「え?どういうことだい?」
「今朝ケイト様に助けて頂いたところ、住むところがまだ決まっていないと申し上げたところ、ここで住んでも良いとのことでしたので。素直にご厚意に甘えさせていただきました」
「ケイト?」
「何か文句でもありますか?こんなに私を放置プレイしてそんなことを言われる筋合いはありませんよ?何より、願ったり叶ったりでしょう。どうやらお友達を欲しがっていたようですからね。渡りに船とでも言いますか」
数話に渡って話に出ていなかったことで鬱憤がたまっているようだ。仕方がないことだったとはいえ、それは申し訳ないことだ。ここは素直にありがたいケイトのご厚意に甘えるとしよう。ありがた迷惑というやつだ。
「何か言いましたか?お坊ちゃま?」
おお怖い怖い。そういえばここには僕の心を読める人しかいないのだった。今後は読心されない方法を見つけることに勤しまなければならないようだ。僕の今後の計画が一つ決まった瞬間だった。
しかしながらありがた迷惑ではあるけれど、友達が欲しかったのは事実だ。穏やかな細々とした学校生活を望んでいた僕だけれど、どうやらそうはいかないらしい。明らかに平穏とはかけ離れた存在が友達第一号なわけだし。
「そうそう。君には主人公という自覚を持ってもらわないとね。君の何も変わり映えのしない、つまらない学校生活なんて誰も望んでいないんだから。君を除いてね」
ほほう。どうやら僕は主人公なようだ。主人公と言われて悪い気はしないな。
「あくまで君の物語の主人公は君自身だという話だけどね。それ以上でもそれ以下でもないさ」
上げて落とすタイプだった。そういえばこいつはそういうやつだった。いつだって僕は上げては落とされての繰り返しだった。
「それは君が必要以上に強く受け取るからだよ。流しておけばなんともないことなのに一々突っかかるからそう感じるんだよ。今だってそうさ。これからはもう少し大雑把にいってもいいんじゃないかな?」
まさか説教をくらうとは思ってもみなかった。がしかし、それはまさしく金言だ。さっそく大雑把にいってみようか。
「まったく、君ってやつは影響を本当に受けやすいね。まぁそれが良いとことでもあり悪いことでもあるんだけど」
家につくと僕の部屋は魔改造が施されていた。何と僕のワンルームが、あの広々とした空間がとんでもなく狭くなっているではないか。具体的に言うと半分ぐらい。
「凛様が住むのですから当たり前でしょう。何を甘えたことを言っているのですか?」
あぁ、これでは僕の秘蔵コレクションもばれているに違いない。僕のベットは移動されている。ケイトがやけに強く当たるのはこれが原因なようだ。すまんな、僕は巨乳派なんだ。
「うぐっ」
「グサッ」
「グハッ」
一斉に自分の胸を見てうなだれる彼女たち。落胆しすぎて空気すら青ざめているではないか。
え?またオレ何かやっちゃいました?
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