第40話

「お前たち、気が済んだのならさっさと席に着け。ホームルームが始められん」


 そそくさと席につく僕たち。僕は被害者なのだから少しは優しくしてもらいところだが仕方がない。


「君も加害者側だと思うけどね。どっちもどっちってやつだよ」


 僕たちが席につくと早速ホームルームが始まった。


「明日からは普通に授業が始まるからな、教科書等々忘れないように。忘れ物は成績に響くからな。ホームルームが終ったあとで物品購入があるから忘れずにそろえるように。じゃあ今日はこれで終わりだ、また明日」


 とものの一分で説明し終わり、先生は教室から出ていった。


 僕たちは皆ポカーンだ。普通ここから自己紹介とかあるもんじゃないか?ほとんど皆顔見知りだからいらないとでも言うのだろうか?


 僕みたいな友達いないがいない人はどうすればいいのか。一生このままでーすとでも言うのだろうか。


「君みたいな人は、一握り中の一握りだと思うけどね」


 まぁ、それはいい。しかし、中等部からは貴族と平民が一堂に会するのだ。今まで関わり合ったことのない層の人間がいるというのに自己紹介もないのだろうか。


「皆、こっちを向いてくれ」


 手を叩きながらそう発言したのは、いかにもな爽やか少年だった。十歳児だというのによくやる。


「先生は終わりだと言ったけど、初対面の人も多いだろうし自己紹介ぐらいはしないか?お互いが初めましてじゃ、明日もやりづらいだろうからね」


 素晴らしい。リーダーシップの塊みたいな人がこのクラスにいて助かった。ここは彼の献身にあやかるとしよう。


「本来なら、君が前に出るべき流れだと思うけどね。なんてったって君は精神的には十六歳なんだから」


 確かに精神的にはそうかもしれないが、外見的には十歳児なのだから別にこれでいいだろう。そもそも僕はリーダー気質じゃないのだ。


「それじゃあ、僕から行こうか。僕はユーリ・ムール。女の子みたいな名前だが、男の子だ。よろしくね。では、次はそこの二人組行こうか。初日から全校の知るところとなったお二人さんに次をお願いしようか」


 なんだか嫌味が込められている気がするが、気のせいだろう。


「トリマーナ・トラスです。初日からお騒がせしてすいませんでした。以後は細々と生きていくつもりですので、よろしくお願いします」


「凛・ラマダです。名前でお気づきでしょうが、東方の島国より参りました。よろしくお願いいたします」


「やけに普通な挨拶だね。もっと奇天烈なのを期待していたが、期待外れだったようだ。じゃあ、次は君いこうか」


 一言が多い奴だな。開始早々嫌われるんじゃないか?少なくとも僕は嫌いだね。


「良かったじゃないか。初めて人を嫌うことができて。彼も本望じゃないかな?君の初めての嫌いな人になれて」


 そんな不名誉は誰だって嬉しくないだろうに。嫌われて嬉しいなんていったいどこにいるのだろうか。どんな変人であってもそうはならないだろう。


「いやいや、この世界ではそれはあるんだよ。君の初めての人となったところで、今後の話でも出てくることが確定されたわけだからね。」


 そんなメタい話だったのか?


 あと、その言い方は誤解を招くからやめてほしい。使っていいのはここで猫をかぶっている凛とかだ。


「何か言いましたかトリマーナ様?」


 何故か、はちきれんばかりの笑顔だった。

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