第39話
「もう逃げ場はありませんよ?観念してください」
どうやら今回ばかりは逃げおおせることができないようだ。僕の運命はここで尽きたようだ、グッバイ我が人生。
「さぁ、どうとでもするがいいさ。今の僕はただの被捕食者だ。窮鼠猫を噛むなんて言葉があるけれど、今の僕には反撃する気力すらないから心行くまで堪能してくれて構わないよ?ただ責任はとってよね?」
「普通は逆だと思いますが、まぁそれは私にとってありがたい話ですから構いません。骨の髄までしゃぶりつくしてあげましょう」
また下品な言葉が出てしまっているではないか。しかし、今となってはそれもどうでいいことだ。ただ喰われるのみである。
「じゃあどうぞ」
その言葉を最後に僕の意識は途切れていた。再び目覚めた僕はどうやらベットに寝ているようだった。
「知らない天井だ」
「また同じこと言っちゃって、いったい何回使いまわせば気が済むんだい?天丼とはいかないよ?」
しょうがないだろう、この場面ではこれ以外の言葉を思いつかないのだから。
「まったく君の頭に脳みそが入っているか疑いたくなってくるよ。あの図書室にこもった発言はどうしたんだい?」
あれは、その場のノリみたいなものだ。しまし、図書室にはこもっていたし、頭が煮詰まることもあったのだから嘘は言っていない。ただそれが本を読んだ故のことではないというだけのことだ。いわばミスリードというやつだ。図書室=読書という先入観を巧みに利用させてもらっただけのことだ。
「いや、別に上手とは一言も言ってないけどね。あとそれを言ったとところで何の意味もない話だ。偶には実のある話をしてもらいたいものだね」
実のある話か。しかし、僕はその場のノリと勢いで生きているようなところがあるからな。その期待に沿えるかどうか。
「その文句ももとは僕たちのものだった気がするけどね。まったくいつから君は適当人間になったんだい?」
いつからと言われれば生まれてからとも言えるし、生まれかわってからとも言える気がする。まあその辺は適当だ。
「適当だね」
良いじゃないか適当で。適当最高。
「あのー、そろそろ私に触れてもらってもいいですか?いえ、直接触るということではなくて、話に出してほしいということなんですが」
「誰かと思えば、初対面の男の子を追い回し、挙句の果てには貞操を奪った犯罪者じゃないですかやだー。これが僕だったら非難轟々だというのにまったく、よかったですねたまたま女の子で」
「それを言うなら貴方にも非難されることはあると思いますが。挑発してきたのは貴方じゃないですか。あと、そもそも貞操は奪っていません」
「貞操は奪ってませんときたか。なるほど犯罪に手を染めることはないらしい。さしずめ知能犯といったところか」
「心の声出てませんか?あと、発言が支離滅裂過ぎませんか?犯罪を犯してないのに知能犯って。知能すら発揮していないと思うんですが」
「まったくつまらない奴だね君は。それぐらい流してくれたって構わないじゃないか。揚げ足を取ってばかりいると友達をなくすよ?」
とんでもないブーメラン発言だった。今まで揚げ足を、揚げてすらない揚げ足を取ってきた僕が到底言えるようなことではなかった。
しかし、それは彼女にとって図星だったようで、急に黙り込んでしまった。
まったくいきなり黙り込むなんてやめてほしい。流れを大事にしてほしい。さっきも言った通り僕はノリと勢いで生きているのだ。話の流れが一度途切れてしまえば僕にできることなど何もなかった。ただ茫然とするだけ。ただそこでふさぎ込んでしまった女の子を尻目に僕もまた茫然とするのだった。
「まったく適当発言で図星をつくとは。話の流れが聞いてあきれるよ。しかしこの地獄の時間に囚われていても話が進まないからね、ここは僕が仕切らせてもらうよ。ただ君がパンツを脱がされるだけの話に三話も使っていたんじゃあきれる人も出てくるからね」
そういって僕ら二人はヴァ―ラに連れられて教室に戻る。
教室ではほかの生徒はもう式が終っていたようで全員そろっていた。
先生含め全員の肌を貫くほどの痛い視線が僕を襲ってくる。
やめてくれ、僕にはMの気はないんだ。そんな視線を僕に送らないでくれ、こんな衆目の中では興奮しようにもできないではないか。せめて人気のないところでしてもらいたいものだ。
「「……」」
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