その時と同じ風景を見て、その時の事を思い出す。あの時聞いた歌が同時に口から溢れだす……という感じで、流れるように回想される主人公の数年前の体験のお話。
誰にも言わずに連れて行って欲しい所がある。
おっとりとしたおばあちゃんの、いつもと違う様子に困惑しつつも、口ずさまれるタイトル知らずの洋楽の歌が主人公と読者の心に意味深に残る構成がとても印象的です。
おばあちゃんの行先、そこで何をしているのか、歌は何なのかというところ、ミステリーを読んでいるようなドキドキ感を孕みつつ、その結末を知りたいという気持ちで読み進めてしまう作品。
友情や愛情、祖父母の知られざる過去の一面。人間ドラマがそこにはあって。
その歌はきっと、主人公にも価値あるものになると思わせる余韻のあるラストまで、ぜひ一気に読んで欲しい作品。