プロローグ010

 森を全力疾走で抜け、その後道筋を並ぶように破壊しながら俺の後を着けいるクレイゴーレムから俺は逃げていた。

 無論、何度か高速で突進される機会はあったがそれらすべてを避けて俺は目的の場所まで疾走を続ける。

 

 もう少しだ。あと……少し。

 

 いくら普段から鍛えているとはいえど、体は子供のソレで種族はエルフ。長期的な運動には体力的には限界がある上に、いくら全速力で走ろうが、10トントラックよろしくな巨体が走ってこればそれ相応の振動と障害が起きる。

 木々はなぎ倒され、地はえぐられ、こっちは木を避けてジグザグに走っているというのにあちらはそんなのもお構いなしに常に真っすぐなショートカットだ。

 正直もう体力的な限界がきていた。

 

 それでも俺がこうしてワザとジンさんから引き付けて必死に走っているのには理由がある。

 

 先の攻撃で理解したことは二つ。

 まずその1、こいつは尋常じゃなく硬く頑丈とということだ。

 それは先ほど撃った上位魔法魔法が証明したように、いくら摂氏数千度の死の炎を浴びせようがソレに耐えうる炎の体制を持っている為、俺が知りうる魔法では到底破壊は不可能ということ。

 

 俺が師匠から教えられている魔法はまだ修行段階。それゆえに放射系炎を出したり水を出したりするものがおおい。それ自体は魔法の操り方を学ぶために師匠が順を追ってこれでもかってほどに効率よく教えてくれている為、仕方はない事だが、いまこの緊急事態においてはそれが仇となっている。

 

 それが一つ目。

 

 そして一つ。

 

「うおっ!?」


 突然速度を上げて俺を引きつぶそうと背後から迫った突進を、真横に飛び茂みの中に落ちてかわす。

 

 この速さだ。ジンさんの時もそうだが威力は巨体な総重量からきているの言うまでもない。魔法もかかってないなければなにか特殊な攻撃という訳でもない。純粋ななんの変哲もないただの突進。

 

 だが、それでこれだ。

 

 茂みから出てモグラが通った道のようにえぐれ盛り上がった道を横目に再び走り出す。

 

 単純な破壊力ゆえにスキはない。

 いや。あるにはあるが。

 

「こっちだ!!」


 一時的に止まったクレイゴーレムを追い抜き、目的の方向へ走りながら注意を引き、それに引きずられるようについてくる。

 

 硬すぎる上に機動力もそれなりにある。

 

 魔法を放つには魔力を放ち精霊を集め呪文を紡ぐ必要があるが、走りながらでは精霊は集めずらい。あくまでも精霊はエサに群がる虫のようなモノ。それ全速力で走って移動しながらなど虫と同じように途中で俺に追いつけず離れて散ってしまう。

 その上、いくらオリジナルの魔法があったとしてソレを放とうとするにも、あの硬さを貫くには長い呪文は必要不可欠。

 精霊に繊細な動きをさせようとするほど呪文は長くなるため、走りながらでは散ってしまうため最初から最後まで呪文を訊く精霊も少なくなり結果、その威力も落ちて攻撃は利かなくなってしまう。

 

 まあそういう状況から、最初の一発目から、なんでオリジナル魔法があるなら使わないのならという話になりかねないが、あそこでソレを撃たなかったのは先に撃った炎魔法の方が威力としては高いからに他ならなかったからだ。

 

 とはいえ、それをこうも簡単アッサリと耐えられてはなんの意味もない訳であるが……。

 

 ゆえに現状、正直なところ絶体絶命である訳だが。

 勝機がないという訳ではない。

 

 二つの問題を解決し硬いクレイゴーレムに決定打を与える唯一の方法。

 

 ついてきてるな。

 

 背後で猛威を振るい、木々を荒々しくなぎ倒すクレイゴーレム確認しながら、そこでようやく目的地の秘密基地のツリーハウスが見えてくる。

 

 梯子を上っている暇はないな。

 ならば――。

 

 自信にかけっぱなしの身体強化の魔法を強くして、大きく跳躍して自分ほどの太さの枝へと地から飛び移る。

 そうして――先の木、先の木と軽業師よろしくな程に飛び跳ね繋いで行きツリーハウスへと着地する。

 

「っと」


 そしてそこで見渡し目的の鞘に納められた一本の"長剣剣"を手に取る。

 剣自体は大人用に作成していたの為、子供の俺には大きく大剣のようになっている。

 

 それを取った後は殆ど一瞬だった。

 

 とっさの判断で下を見れば、クレイゴーレムがツリーハウスの主柱になっている大樹に突進をしさんと森の方から突っ込んでくる限界ギリギリで、止むおえなく俺は飛び降りて――。

 

 そのまま宙で俺は剣を鞘から引き抜き鞘を投げ捨てた。

 露になる刀身は鉄でできた金属でありながら、金のような黄金。日の光に輝いて眩き照り返し。

 

 その光と共に真っすぐ落下すると同時、迫って来たクレイゴーレムの顔面に力いっぱい両腕の大振りを下ろした。


 唯一の方法。

 それがこれ。

 

「エクスプロージョンッ!!」


 クレイゴーレムの頭部に黄金の剣先が激突する寸前、魔力を剣へと流し込み、その"魔剣"の能力を発動させる。

 

  ――ドンッ!!

 

 その能力は爆撃。およそコンクリートの一軒家を塵も残さず吹き飛ばす4C爆弾程の威力だが、先に撃った最上位魔法のニブルヘイム・フレアロードとは異なり直接的かつ局地的。

 あの魔法は炎で包んで燃焼させ消し炭にするというものだったゆえに硬く熱に強いクレイゴーレムには効かなかった。

 だがこれなら違う。

 同じ炎属性で魔法で起こした爆発だが、それは事実上、燃やすという行為ではなく弾け破壊するという打撃にほかならない。それも部分的に爆弾レベルの衝撃をピンポイントで与えるという攻撃。いくら硬いとはいえ、所詮は岩石の塊に過ぎないクレイゴーレムではひとたまりもないはず。

 

 弾ける雷鳴も及びもつかない大轟音。ほぼゼロ距離で受ける爆撃音はなんの音かも知覚できないレベルであるが、それゆえに威力は絶大。

 高速かつ重量動に突進をしていたクレイゴーレムは、俺の視界が一瞬、白一色に奪われた0秒後、進撃に反するようにその体をのけぞらせて背から爆発の衝撃で弾け。

 

 ドゴーン!!

 

 地面を潰しならしながら微量の土煙を散らして、頭部がひび割れて白い煙を上げるクレイゴーレムは倒れた。

 続けて俺も、クレイゴーレムの倒れた衝撃とは比較にもならない小さな音と共に着地した。

 

 俺には爆発によるケガはない。

 それどこから、そんな爆発なかったというぐらいにゼロ距離で爆発を目の前にしてもなんの影響を受けていなかった。

 

 成功か……。正直一番懸念していたのは爆発に使用者である俺自体が飲み込まれることだが、それもクリアしているようだ。

 

 エクスプロージョン。

 

 炎の精霊と微量の水の精霊を集めながら打った爆炎剣。その能力は煙硝と爆撃。

 大量の高温の水蒸気を放つ能力と、先のように斬撃と共に敵が刃の接触した際に爆発するという能力を持っており。

 その爆発の弾け方は特殊。本来爆発とは360度どの包囲域にも弾けるものだがエクスプロージョンの場合は異なる。

 その角度はおよそ90度。刃との接触した対象を中心にしてそこから横に爆発が広がるのは90度ほどの角度で、使用者側へはけっしてその爆撃の衝撃波伝わらない。

 

 これが、俺がなんのケガもしていない理由。

 大規模な爆発を目の当たりにしても平然と立っている訳だ。

 

 ただ、まあ……。

 音とかを防げていないためその辺は改良の余地はありそうだが。

 こうして実践でこれだけの威力を出せれたのだから、今は完成品と言ってもいい。

 

 そう、俺が魔剣エクスプロージョンの黄金の刃を見てその威力と完成に歓喜していた時だ。

 

「タクミっ!!っ――お前がやったのか!?」


 クレイゴーレムが木々をなぎ倒してできた道から、足を引きずりながら来たジンさんから声が掛る。

 

「はいっ!!この通り。コイツで」


 そうして大はしゃぎで自慢するようにエクスプロージョンを見せつけた、途端。

 

 パキパキ――。

 パキンッ!!

 

「っ――!?」


 エクスプロージョンの中央ほどに小さな亀裂が入ると、その亀裂はミミズバリのように広がってそれが剣が形を保てる限界を超えると、木端微塵に破裂して無数の小さな刃になって弾けた。

 

 案の定それらは俺の顔をすれすれですり抜けて、もう何度目か分からない。頬に真っすぐ赤い線を作る。

 

「大丈夫か!?」

「あっ、はい……」

「まあいつものことなので……」

 

 散らばる金の刃の破片を見落として、砕けた際の爆発に血の気が引いたように蒼白になって心配してくれるジンさんの方へ、俺はまだ改良の余地ありと認識して、大丈夫ですよと言いながら振り返り戻る。

 

「まったく。すごいなお前っ!!本当に魔剣を作っちまうなんて」

「いえ、まだまだ改良の余地ありですよ。完全じゃありません」

「あれだけの威力で呪文もいらないんだろ?剣ってのは消耗品だ一回撃てれば大金星だ。まあ、何がともあれ、大したもんだ、一端の鍛冶師になれよっ!!」

「鍛冶師もそうですけど、剣士もですよ」


 ゴシゴシとじゃれ合うように少し強引に頭を笑いながら撫でられて、それがたまらなく嬉しく俺も笑う。

 なんというか、父親見たいな感じとでも言えばいいのだろうか?こちらの世界では母一人に育てられてきたというのもあって、正直すごくこういった事が新鮮で、懐かしいものもまた感じた。

 

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