第4話

 友達の彼女。注文もせず、歩いて去っていく。


「と、まあ、こういう女の子が、俺の彼女です」


「気が強いな」


「ね。すごいの。押しが強いの」


 良い組み合わせかもしれない。直情径行だが優しくて言葉選びがうまい友達と、気が強く友達思いの女。


「いいなあ」


 俺には、無理な恋愛だった。きっとこの二人は、お互いの顔ではない部分で惹かれて、付き合ってるのだろう。


「あ、そういえばお前、手を繋いだことがないって」


「うん。なんかさ、俺と正式に付き合うのは、友達の恋が成就してからなんだってさ」


「義理堅いな」


 やくざかよ。友達の花道を用意しないと自分も付き合わないとか。


「ん、ちょっと待て。その友達って」


「うん。たぶんお前を数日前に振った相手」


「うわあ」


「たぶん今から、おまえを振った相手を連れてくるぜ」


「すまん。お前にはもうしわけないんだけど、たぶんもう、修復不可だと、思う」


 さっきぶつかったときに、かなり邪険に扱った。


「そうか。じゃあ、まあ、しょうがないな」


「ごめん。おまえの彼女とおまえの関係も」


「そこだ。お前は優しすぎる。俺と彼女のことは気にしなくていい」


 友達。真剣な目。


「お前自身のことだけ、考えろ。重要なのはひとつだけだ。よりを戻したいかどうか。それだけ。どうだ?」


「そうだな。復縁したい。でも、俺から告白したわけでもないし、振ったのは相手だ。だから、相手の気持ちを尊重したい」


「よし。それでいい。がんばれよ」


 友達が、立ち上がる。


「おい」


 一緒にいてくれないのか。


「後ろのほうで見てるよ。大丈夫。お前なら大丈夫だ」


 友達が去っていく。そして、それとすれ違って、数日前に自分を袖にした女が、来る。

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