第2話
「で、腹が立ってしかたないから俺のところに来たと」
「そういうわけ。奢れよ」
「奢らねえよ」
友達。いつも通りの、ふたりともハンバーガーセット。
「いいよな、お前は。普通の顔で」
「そうか?」
友達。水を飲みながら、外を見ている。
「普通の顔で得したことなんてないけど。お前はイケメンだから、ほら、ハンバーガーセットも俺より早く来る」
俺の前に置かれる、ハンバーガーセット。
「同じもの頼んだんだぜ。なのにお前のが早い。なんでだと思う?」
「店員が女性だから」
「そうなんだよ。それだよ。まったくもう。やってらんねえよ」
置かれたハンバーガーセットを、友達のほうに置き直した。
「でもお前はこうやってさ」
友達。ハンバーガーセットのポテトをつまむ。
「先に来たハンバーガーセットを必ず俺によこすんだよ。そういうところが、本当のおまえの魅力だと思う」
「ありがと」
この友達は、思ったことをすぐ口にするくせに、言葉選びがうまい。誉めるときはストレートに。けなすときはオブラートに包んで。
優しいやつだ。平凡な顔だけど、俺なんかよりよっぽど人格ができている。
「お、来た来た」
友達の彼女が来た。
「じゃあ、俺は行くぜ」
「おいおい。会っていけよ。さすがにそろそろ頃合いだろうが」
友達にできた恋人。話に聞いた限りだと、とてもいい人だった。
だからこそ、会うことはできない。
自分の顔のせいで、友達との関係を壊したくなかった。友達の恋人なんて、こわくて会えない。
「とりあえず、な、座ってくれよ。おまえのために呼んだんだ」
「俺のために?」
「大丈夫だから。まず、まず座ってくれ。ハンバーガーセットもじきに来るから。な?」
立ち上がりたかったが、友達の目が、本気だった。
「少しだけだぞ」
「ありがとう。おおい、こっちこっち」
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