第11話 夏目茜の告白2
中学のとき、今とおんなじように病んでしまったことがある。好きな人に裏切られたときのことだ。
■
なつめ、と呼ばれて振り返ってもそれはあたしのことではない。
「いつまでお前、ハルに固執するわけ?」
「いつまで、って。何言ってんの、春馬はあたしの彼氏だし」
「お前、本気でハルのこと好きなわけ?」
「そんなの当たり前じゃん」
「好きだったら、何してもいいとか思ってねえよな」
高校二年の冬に恋人ができた。名前は、青山春馬。ちょっとやんちゃだけど、いつも輪の中心にいるような明るい性格で、人気者で、あたしはいつもそういう人に憧れを抱いて、そして恋に落ちる。あたしはそれとは正反対の人間だから。
高校デビュー、というやつをした。中学までは暗くて地味で、クラスでは全く目立たない、いわゆる陰キャというやつで、それをどうしても払拭したかった。メイクも頑張って覚えたし、ファッション雑誌でお洒落に関して勉強もたくさんした。あたしは垢抜けた今どきの女の子になれたと思う。だから、春馬と付き合えたんだろうし、あたしはこの努力を無駄にはしたくなかった。
だから中学時代の知り合いであった岩田が春馬と友人であることを知って、正直最悪だと思ったけれどそれを口にすることはなかった。最初、キャラががらりと変わったあたしに気づいてないのかな、と思ったけれど、岩田はどうやらあたしのことに気づいていて敢えて無視をしているのだと知った。いつもあたしを見る目がとても恐ろしくて、怖くて、あたしは彼の前で演技をするのが日々上手くなっていった。
「ハルに何かしてみろ、許さねえからな」
岩田棗。もうひとりの、なつめの話。
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