第37話 そして、最後の朝。
83回目。
僕は運命の決心を定めた。
「おはようございますレナード様!」
僕の部屋のドアを叩いたのはミーシャ・ベルベット。星1のメイドだ。特にこれと言った特技もなく容姿も普通。
いや、猫属なのは僕にとってマイナスだ。僕はどうしても犬族のレイを思い出してしまう。
いつ頃からだろうか。僕はレイに固執するようになっていた。彼女と添い遂げたいと言うわけではない。むしろ逆だ。
僕はそれからレイと出会った瞬間に「さよなら」を告げるようになっていたのだ。
現実を認めなければならない。
『レイは弱い』と言うことだ。
レイと一緒では世界は救えない。
長い旅の末、いつしか僕は人をモノ扱いするこの自分の思考に嫌気がさしていた。
それから数回して奇妙な事が起こるようになったのだ。乱数の悪戯かそれまでまったく出会わなかったこのミーシャ・ベルベットという猫族を引き当てるようになった。
最初は偶然だろうとすぐにリセットしていた。しかしそれはいつしかエスカレートし、ほとんどこの子しか会ってないんじゃないかというくらいになっていた。
「星1キャラなんて逆に滅多に出ないのに」
僕は彼女の屈託のない笑顔を見ながら口の中でぼやく。星1キャラが出ていたらすぐそこでリセット。それは疑いようもない。
しかしその時はレイの事を思い出したからか、ついに僕は口を開く。
「君、やりたい事とかある?」
見た目は僕と同じ6歳ごろか。と言っても対する僕は82回の6歳からの人生を過ごしている。
相手によっては最初のドアが開いた瞬間にリセットした周回もあるが、総計でおよそ400年は世界を生き抜いた身だ。自分に甘いと言われるだろうが、これは仲間がモノに見えていても仕方がないだろう。
僕のその陰鬱な気持ちを吹き飛ばすように、彼女は屈託のない笑顔で答える。
「はい!私父が冒険家をやっておりまして!いつか自分の武器をゲットして世界を旅するのが夢です!あっ!でもこんな事雇い主に行っちゃダメですねよく考えたら?!えと、えとーっ!!!立派なメイドになってレナード様に尽くすのが夢です!目指せメイド長!むん!」
腕をぶんぶん振り回しながら話すミーシャ。僕は彼女の慌てように思わず笑いが吹き出す。ああ、一回だけ。一回だけ試してみよう。諦めかけていたけどこの子と。
「なれば良いじゃん!僕と一緒に冒険すれば両方達成できるよ」
そう言って笑う。
さぁ、ベッドから立ち上がる時だ。
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