第36話 はじめましての、夢のさらに前の物語。

カーテンの隙間からは朝の光。


そろそろ誰かが起こしに来る頃か。と思っていると、ドアをノックする優しい音が部屋に響く。


「どうぞ」と僕が声をかけると背の高いメイドがそこに立っていた。


「おはようございます。ご主人様」

年の頃は16歳と言ったところか。


「新しい方ですか?見たことないケド」

「はい、リィナでございます。今日からお世話を担当させていただきますわ」


ニコリと落ち着いた笑みを作る。長い黒髪が揺れてる。僕は訝しがるように目を細めた。


僕にだけ見える黒い文字が浮かび上がる。


なになに、リィナ・アリステル。星5キャラか。悪くない。


「よろしくリィナ」


僕は彼女に笑顔を作る。それから何年も彼女と共に冒険を過ごす。7年後、ドラゴンの巣を討伐する頃には仲間がいくらかできていた。


星5"ルカ"。彼は性格は難があるが実力は本物だ。パーティーを物理で組むなら確実に欲しい人材。


星3"アレン"彼は低レアながら育てやすさがヤバい。覚醒素材がとりやすいからドラゴンの巣を周回すれば鉄壁の盾となるだろう。


星3"レイ"犬族の彼女は"最近のよく引き当てる"。バフもかけられる前衛、という少し使いにくい立ち位置だ。


レイは最初はハズレだと思っていたのだが、どうにも人懐こい性格なので愛着が湧いてしまい、いつしか"彼女が出た時点でリセット"とは思えなくなっていた。ほだされた、と言うやつだろうか。


僕の「リセット」は別に特別な条件は必要がない。


今この瞬間にもリセットをしようと思えばできてしまう。しかし。僕は躊躇する。そう、思い入れが出てしまう。


彼らとて人だ。この世界を救うために強い仲間が必要なのはわかるがどうしても一緒に冒険したくなってしまう。


それが僕の甘さ。僕はちらりと横を見る。リィナが髪を結っている。僕の目線に気がつくと彼女は微笑む。僕は頬を頬を赤くして目を逸らしてしまった。そして口の中で呟く。


「今度こそ、今度こそ世界を救うんだ」

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