第26話 瓦礫でティータイム

「さて、何から話そうか」


崩れかけた応接室で私たちは向かい合う。幸い椅子と机だけは綺麗に原型を留めていた。私は沸かした湯で熱い紅茶を入れていく。


「まずルカ。君は教皇を利用したつもりのようだが、彼もまた君を利用していたようだな」


ルカはため息をつきながら目を閉じる。


「どうやらそうらしいですね」

「対神樹用のメガゴーレム。それがあれば禁伝ユグドラを使わずとも神樹の討伐ができる、と教皇に主張していた?おそらくそんなところか」

「そう言う事にしときましょう」


言いながらルカは紅茶をゆっくりと口に運ぶ。


「教皇はしかしユグドラに頼りたかった。だから逆に神父殿のゴーレムがユグドラに切り伏せられればアナタも彼女に協力すると考えたのでしょう」


そしてそれは結果的にその通りになったという事か。私がそう思った矢先にアレンが横から口を挟んだ。


「なに?教会も神樹の存在に気がついていたのか?!」

「むしろアナタが気がついていた事の方がイレギュラーだったよねぇ。おかげで計画が狂ってしまった」


ルカは呆れ顔だ。レナード様はうなずきながら答える。


「そう。騎士団、軍、教会。それぞれが独自に神樹の対策に動いてしまった」


私は目を丸くする。


「何故ご協力なさらなかったの?」

「ユグドラ伝承がそれほど表に出したくないものだったというところさ。アレが掘り返されると損をするところがたくさん出てくる。皆が皆"他の奴らが気がつく前に"と焦ってしまった」


そう言うとレナードもお茶を飲む。そしてカップを置きながら続けた。


「私は証人尋問をわざと長引かせて、ユグドラ伝承を匂わせて法廷の場に大統領を引き摺り出した」

「そんな事してたんですか?!」

私の驚いた顔を見て、レナード様はニヤリと笑う。


「少し手間取ったがね。だがおかげでこうして同盟を取り付けるきっかけを作れたわけさ」


私たちはお互いの顔を見合わせる。


「で、できますかね?」


私が汗をかきながら各人の顔を覗き込む。


「教皇様が言うのであれば」

「また心にもない事を言いますな」


アレンがまたしても口を挟む。


「こんな奴らと一緒じゃ命がいくつあっても足らねーな」


ヴェリルはクッキーをボリボリ食べている。だが口を乱暴に拭くと不機嫌そうに続ける。


「だが、こんな奴らにメイド長を任せるのはいささか心配だ。ついてってやるよ」

「私はもちろん最初から同行するつもりだ。女王のお墨付きとなればこれ以上ない幸いです」


アレンは頼もしく胸を叩く。レナード様は不敵な笑みで場を締め上げた。


「よろしい。ではこれから我々は"バランシュタイン討伐隊"だ。」

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