第24話 VS プリースト (5/6)

高速で大地を蹴り、ヴェリルはゴーレムの周りを背面に向かって周回しながらその身体を観察する。


ルカの持つ膨大な魔力の中でもかなりの量が注がれているのは明白。そしてこの大きさは前人未到。


だがなぜだ?効率から考えればここまで大きなゴーレムに生み出す必要は無かったのでは?


「そう、おそらくこれは実験だ」


この巨躯でゴーレムを作れるのは論理上可能でも、やった事がなきゃー実戦で使えねぇ。だから郊外のここで試した。奴の神父という立場上、王都は離れられねぇ。だからこれはトラブルに見せかけたギリギリの選択肢だったはず。


「そしてもう一つ。ミーシャを捕獲したいのならば人型である意味がねぇ」


人型という形態は縦に長い。足元の小さな物体を掴むには不利な体勢を取る必要がある。それをしたいならば、もっと重心の低い四足の獣か蛇。百足に近いゴーレムを作る方が遥かに効率的。


極論、大剣でも切れないサイズのスライム状のゴーレムで飲み込むように覆えばそれだけで決着がつく。


そしてルカはバカ騎士とは違ってそれに気がつかない男じゃねぇ。


「つまり導き出される答えは」


ルカは建前では捕獲すると言いながら、剣もろとも破壊するつもりだ。きっとあわよくばミーシャもろとも。


そしてこの戦いはこの巨大ゴーレムの試運転を兼ねている。という事だ。


「ならご自慢のその泥人形、役に立たないと教えてやるよ!」


ライトニングを振りかぶる。体重を乗せて渾身の一撃を放つ。


「貫け!」


青い紫電を引きながら狙い過たず電光が足を直撃する。巨大な穴が穿たれるが、わずかに足を貫通し切れない。崩れきれずに即座に再生を開始する。


「チッ!」

思わず舌打ち。


しかし次の瞬間、閃光と爆音。奴の足がちぎれて吹き飛ぶ。見るとメイド長が左手を奴に向かって伸ばしている。続けて左手から射出される小さな弾丸。いや、あれはグレネード!


「なんて物騒なもん飛ばしてんだあのメイド長は」


ミーシャは体勢を崩し膝をついた巨人の体を駆け上っていく。


「とやぁぁぁ!」


高速の袈裟斬りがゴーレムの胸にえぐりこむ。土人形はたちまち泥となって朽ちていく。その手際に思わず俺も口が開いていた。


「私、この敵今までで1番得意かも、です!」


ミーシャが意気揚々と笑顔を見せる。それはそうだろう。つまりそれは単に“手加減をしなくていい"という事。


前にあった時より身のこなしはだいぶ良くなっている。きっとアレンが仕込んだんだろう。見ればわかる。


「まったく。なんてもの育ててんだあのバカ騎士は。意味わかってんのか?こいつはいつか手に負えなくなっちまうぞ」


俺は1人でぼやく。

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