第17話 それって爆死?

「いやー。大したものは出ませんでしたね」


私はため息をつく。アレだけ引いて最高で星3とは。


レナード様は冷たい笑顔を作っている。

「いやぁ、人のお金でここまで武器召喚を回す人を見たことないよ」


アレン様も疲れた顔をしている。

「い、良いんだレナード卿。無理なお願いをしているのはこちらなのでこのくらいの事はさせて欲しい」


そう言いながら幾分か痩せた顔を青くする。


「しかし、大きな武器こそ出なかったが装備品としてはなかなか良いと思えるな」


レナード様は召喚によって現出した装備を掘り返す。殆どが交換所で交換に使える魔石と呼ばれる石だ。


加工師のところに持っていけばエンチャントシェルにも加工してもらえる。もっともこのくらいの量では大したシェルにはならないとは思うが。


その魔石の山から拾い上げたのは茶色のローファーだ。左右に掌ほどの大きな翼の飾りがついている。


「"そよ風の靴"だな。わずかだが風のエンチャントの効果がある。"疾風のブーツ"の下位互換だ」


レナード様は丁寧に説明してくれる。

「これがあれば体が軽くなるから、ある程度は疲れを軽減できるし高く飛んだりアクロバティックな動きもできるだろう」


アレンもその説明にうなずく。

「軽やかな動きはあなたの剣とも相性が良いでしょうね」


私は靴を受け取る。ローファーは普通に可愛い外見。メイド服との見た目的な相性も悪くなさそうに見える。


「あ、ありがとうございます!掘り出し物ですね」


私は新品の靴をギュッと抱きしめる。アレン様も屈んで魔石の山から小ぶりのナイフを2本取り出した。


ナイフというより掌の半分ほどしかない全長が殆ど"刃そのもの"といった風態。持ち手部分がほとんどない。中央には蒼魔石が大きく縦に走っており刃2本を魔石でつなぎとめたというような見た目。


「これはショックナイフですね。ヴェリルのもつ星5のウルティマ(究極級武装)"ライトニング"の下位互換です」


ま、また下位互換という言葉が出てきた!


私の様子を見てレナード様が笑う。

「あはは、そういう顔をするなミーシャ。あの槍はカッシーニ少佐の"鷹の目"があって初めて狙撃が叶ったと言えるだろうよ。キミにはこれで十分だ」


アレンも深くうなずく。

「ライトニングのようにこれも手元に帰ってきますから、2本出たのはローテーションで使えてかなり良いかも知れませんね」


私は自分でも魔石の山をまさぐってみる。2人を見ていると急に宝の山に思えてきた。


「なんですかコレ?」


私は小さなクルミ大ほどのカプセルを拾い上げる。

「うーむ。グレネードだな。使い捨ての爆弾だ。他にもいくつか出ていたようだがな」

「少し、使いにくさがありますね。私なんかは稀に自爆なんかに使いますけど」


アレンの発言に流石に私とレナード様は顔を見合わせる。


「で、ではこれはアレンさんに差し上げると言うことで!」

「いや、いや。何かに使えるかも知れませんよ」


私はアレンに半ば押しつけられるようにその物騒な爆弾を握らせられる。


「あとは大量の魔石か。何かに使えるかな?」


レナード様はアレンを見る。アレンも顎に手を当て試案する。


「見た目からは風の魔石が多いように見えますね。素早さに微補正を与えるペンダントやピアスへの加工が流行っていますが」


アレンの提案にレナード様が言葉を挟む。

「ふむ。それに使うくらいだったら私に少し考えがある。少し預けてくれないかな。あとは腕のいい加工師を紹介してくれるとありがたい」

「ああ、それなら」


アレンは店の奥を見る。店長がニヤリと笑って自分を指差す。


「なぁに、任せてくださいよ」


初老のその男は自信ありげに笑みを浮かべた。

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