第15話 他人のお金でガチャが回したい!
「しかしこれで逆に、その剣がユグドラである可能性は高まりましたね。特別な術式がわざわざ組んであったのですから」
アレンは感慨深くうなずき、そして続ける。
「こうなったら、やはりどうか協力していただきたいメイド長殿。何としても事が起こる前に神樹の伐採を成し遂げなければ!」
私ははじめてアレン様の意図を理解した。アレン様はおそらく私にそれをさせるために、星6農具の話を王都に吹聴したのだ。本業の歴史学者か宗教学者がそれに気がついて、私の剣に目をつけるように。
「しかし、ユグドラ伝承は果たして実現するのだろうか?赤い芽というのは観測されているのかな?」
レナード様はここまで来て最後の一押しは慎重だ。
「いえ、それはまだ。しかし最近活動が活発化しているのは事実です」
アレン様は食い下がる。レナード様も難しい立場に置かれてしまった。王都での私の安全を確保するのならアレン様の屋敷に身を寄せるのが正解だろう。レナード様も安心できる。
しかしこの願いを断るならそれも叶わなくなるだろう。私は意を決して割り込んだ。
「わ、わかりました!私やります!た、ただしレナード様の事情聴取が終わって結果が出てからです!」
レナード様は驚いた顔をする。対するアレン様は喜びの顔だ。その表情からはやはり騎士としての使命を果たしたいという気持ちの強さは本物と見えた。
とりあえず父のこと。レナード様のこと。神樹のこと。一つ一つ片付けていこう。
しかしまずはその前に。
「あの!私の胸が光ってるの止められないんですが?!何とかなりませんか?!」
私は慌てふためいて二人に問いかけた。2人は揃って笑い出す。
「下の句を詠唱すれば止まるよ。それにそれは詠唱のスタック。君が最初に召喚するはずだった武具を呼び出せるはずだ」
私は一気にテンションが上がる。
「おおー!という事は見た目は星1召喚でも中身は星3以上確定召喚っ!!これはやらねば!」
アレンも苦笑する。
「メイド長殿。突然無理ばかり言って申し訳なかった。ここはお詫び代わりに私が持つので好きなだけ回して欲しい」
「今好きなだけって言った?!」
レナード様が頭を抱えるのが視界の端に映ったが見えないフリをして私は大きな声で歓喜する。アレン様はあまりの勢いにビクリと肩を震わせる。
「お、おおう!今の財布であるだけなら!」
男に二言はないとばかりに胸を叩く。
私は店主を見ると、店主もウィンクしながら右手の親指を突き出した。
さぁ、楽しい召喚の時間の始まりだ!
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