第6話 まったく休めない日

 俺は今日も元気にリビングの整頓をする。

 というより、これしかやることがないのだ。後はスマホをいじって布団でゴロゴロするくらいか。


 ふと思ったことなのだが、俺がリビングの整頓係になってから、宿主たちがリビングをとにかく汚しまくるようになった気がするのだ。

 何故だろうか。


 俺がこの家に住み始めた頃、この家の共用部屋にはあまり立ち入らなかったが、キレイに整頓されていた記憶がある。

 キレイ好きな4人が暮らしている、生活感の薄いリビングをしていたのだ。モデルハウスみたいな感じだ。


 しかし、今は生活感が有り余っている。

 ゴミ屋敷ほどではないが、整頓下手4人が一緒に暮らしたらこうなるだろうなと思う程度には、生活感が漂っている。


 せっかく俺が整頓した本棚はいつの間にかぐちゃぐちゃになっている。ジャンルや番号順に並べるの大変だったというのに。

 そこら中に脱ぎっぱなしの衣類が転がっている。特に下着類が多い。気を使ってトングで拾う俺の身にもなってほしい。

 いつの間にか誰かの自室から持ち込まれた変な置物がTVの付近に並べられている。こけしが怖い。ずっとこっちを見ている気がする。


 毎朝、仕事に行くれいを見送り、他の3人もしっかり見送り、リビングの整頓を始めるのだが、終わる頃にはいつの間にか4人とも帰ってきているのだ。


 時間がかかる原因は、主に本棚で時間を取られるせいだ。

 古い有名作品がジャンルを問わず置かれている魔境の本棚である。


「自閉症の子って大変なんだな。先生も結婚して異動になるし、これからどうなる……ん?」


( 廿-廿)


 なんだろう。あのこけしから視線を感じるが、さすがに気のせいか。

 さてさて、掃除に戻りますよ。


(廿-廿 )


 気のせいじゃない!

 あのこけし絶対こっちに視線向けてくる!

 さては俺がサボってないか監視してるのか。

 くそ、サボれない!

 こうなったら風呂掃除だ。風呂で本の続きを読むとしよう。


( 廿-廿 )


 なんで風呂にもこけしがあるんだよ!?


 トイレだ。トイレならさすがに。

 ない!

 よし!

 ここで休憩を……ん?


( 廿-廿 )


 なんで天井にこけしが貼り付いてるんだぁ!?


 その日、俺は少しの休憩も挟むことなく、リビングの整頓を終わらせたのだ。


 ***


「ただいまです……っ!?」


「すー……すー……」


 この家の主の1人、雛守水琴ひなもりみことが仕事から帰ってくると、リビングのソファで1人の男が倒れるように眠っていた。

 最近、親友の桐嶋嶺きりしまれいが連れてきたヒモ男の古寺風流こでらふうりゅうである。


「ヒモ男だというのに……勝手にリビングで寝るなんて……これでしっかり録画しておきましょうか」


( 廿-廿 )


 水琴は家中に配置しておいた監視カメラ付きこけしを全て回収し、部屋へと持ち帰った。

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